4 イニシエの物語
ゴールデンウィーク中に簡潔させるぐらい短い話にしたいと考えています。
とりあえず、リハビリです。
姫は思い出していた。
それは神話の世界の物語
御伽噺でしか語り継がれていない物語である。
歴史として記録されているわけではない。
故に語り手により細かな設定は変わる。年によって新説が現れ論争に発展することもある物語である。
イニシエの帝国があった。帝は自国の国民を養うため他国を侵略していた。
自国を栄えさせることが正義であり、その他がどうなろうと興味などなかった。
繰りかえされる出兵に領地の増加、富の増加に民は喜び繁栄を享受していた。
だが、内情を知るものからすれば醜く肥大化する身体に自由にならず喘ぐ怪物が虫の息になりながらも、侵略と虐殺を楽しんでいるようにしか見えないだろう。
帝国を討つ英雄を待ち望んでいた。
それは簡単なようで難しい問題だった。
一人の青年がいた。男は商人の出でありながら運命に導かれるように最古の魔法使いに弟子入りすることになる。
理由や経緯は諸説ある。
男は聡明な頭脳と才能で魔法使いの『技』を盗み彼を殺した。
そして、地方の小国の国王に面会を求めるといった。
「悪しき怪物を討つ刻がきた。我についてこい。」
王はすぐに頭を垂れたとも反目したとも言われている。
だが、のちに『魔法王』と呼ばれる男を先頭に反撃の狼煙は上がった。
共に戦う仲間は増えたり減ったりするが、二人の人物は語り部が違えど登場した。
『参謀の軍神』と『最愛の乙女』である。
軍神は共に戦場に立ち『魔法王』の背中を守った。『最愛の乙女』は後方で勝ち戦と見るや参戦をする小国が増え衝突するのを類い希なる政治手腕でねじ伏せた。
軍人がいなければ、『魔法王』といえど、戦場で倒れていただろう。『最愛の乙女』がいなければ烏合の衆であった連合軍は内部から崩壊していただろう。
三人の活躍は帝国の帝を討つまで続いた。
ドラマチックな活躍で帝を討った『魔法王』は建国を宣言した。
彼の力は戦場で洗練され強大になり、その力を使った国づくりはどの国よりも富を生み、栄えることになる。
『参謀の軍神』は宰相となり、『最愛の乙女』は王妃となった。
誰もが約束された明るい未来を夢想した。
それが崩れ去る日は刻一刻と近づいていた。
ここから先の話は語り部が誰を悪役に仕立てるかで大きく変わってゆく。
軍神の簒奪を訴える者もいる。
乙女の謀略だとする者もいる。
立場を奪われた小国の陰謀だと語る者もいる。
魔法王が隠居するための猿芝居だと断じる者もいる。
故に簡潔に起きたことだけを語ろう。
建国記念の祭典で『最愛の乙女』は夫である『魔法王』を刺し殺した。混乱した国を『参謀の軍神』が代理として王に就任、そのまま簒奪することになった。
『魔法王』は死亡
『最愛の乙女』は消息不明
『参謀の軍神』は新しく王となり、その子孫が現在の帝国を率いていた。
そう、私の国に攻め込んでいる帝国は『魔法王』が建国し、簒奪された国なのである。




