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 僕の人生は失敗の連続だった。


 思い起こせる記憶の中で、最初の失敗は五歳の時だろうか。

 それまでは誰よりも足が早いと思っていたが、幼稚園の徒競走にてそれを覆された。

 井の中の蛙とはこのことだろう。

 五歳児の僕はその悔しさに涙したものだ。


 次の失敗は小学校に入学してすぐのこと。

 あれは運動会のことだったか。

 その時は赤組と白組の点差は拮抗していた。

 そこで迎えた最後の徒競走、走者は僕だった。

 僕は息巻いたものだ。ここで一位を取れば英雄にでもなれる。そんな思いを胸に抱いた。

 僕はそこで盛大にこけてしまった。

 結果はドベ、僕のせいでチームは負けた。


 それからも失敗は連続した。

 勉強もそう。運動もそう。恋愛もそう。

 チームでするスポーツは僕のチームが負け。

 テストは必ず下から数えた方が早い。

 勇気を持って告白したこともある。もちろん結果は惨敗したけれど。


 僕は知っている。

 それは僕の怠惰から来るものだと。

 僕はそれを自覚していた。

 努力をしなかった。だから結果は伴わない。

 当たり前のことだ。


 そして怠惰を自覚していたからこそ絶望した。

 何をしようと思っても無気力に終わるだけなのだ。

 少しの努力程度ではどうにもならない。


 それが僕という人間。

 僕という人生。


 そうして宙ぶらりんのまま生きてきた僕は現在二十歳。

 大人の仲間入りだ。

 しかし中身は大人にすらなり切れない、自立という言葉からかけ離れた存在となっていた。


 大学受験二回目に失敗。

 つまり三浪目突入だ。


「――――――」


 結果は今朝届いた。

 今度こそと思って合格通知になるはずだった封筒を開いたが、とんでもない。

 届いたのは不合格通知でしかなかった。


 なぜ、どうして。

 決まっている。

 僕という失敗の人生を歩んできたからだ。

 それ以上でも、それ以下でもない。


 親は就職しなさいと言う。

 当たり前だ。

 僕は浪人生という肩書きを盾に生きる、無職の社会的価値のないクズ人間なのだから。

 親がそのように言うことも最もだと思う。


 それでも僕は社会に出たくないという願望があった。

 受験という名の逃げ道を使ってでも、僕は外に出たくない。

 どうせまた、失敗するだけなのだから。

 僕の人生は失敗する。

 もはや定められた運命みたいなものさ。


「……来世があったら」


 来世。

 もしも来世があったのだとしたらと過程してみる。

 その来世では、今度は失敗の人生を歩みたくはないものだ。


 来世があったら努力しよう。

 努力して成功の道を行くんだ。

 僕は毎日思うそれを胸に、座っていた椅子を離れてベッドに横になる。


 時間は深夜。

 そろそろ眠くなってきた。

 だから僕は眠る。

 訪れる睡魔の闇に身を委ねる。

 今は何も考えたくなかったから。

 何もしたくはなかったから。

 来世などという妄想の世界だけで生きていきたいものだと。

 そう思った。





 次に目が覚めた時、僕は赤ん坊となっていた。





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