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魔法学院体験ツアー 3

 翌日から、本格的に学院の授業の体験が始まった。

 午前中は各魔法についての基本的な魔法理論を教わり、午後は生徒さん達に混じり、実際に魔法を習う。

 けれど魔法を使うには魔力がいる為、私の午後はたった一回だけ魔法を使うと、あとは他の人が練習するのを隅でひたすら見物する、という状態になった。

 まあ、仕方がないな、とは思う。

 体験に来ている他の人が恐る恐る呪文を唱えたり、緊張した面持ちで魔法を練習する様子を見ると、心の中で頑張れ!とエールを送りつつ見守れるし、生徒さん達が慣れた様子で魔法を操っている様子を見ると、素直に凄いと感嘆の息を吐いたりして過ごしているから、見物しているしかないこの状況も悪くはない。

 そう、悪くはないんだ。

 ただひとつ……ほら、今も、同じく体験に来ている一部の人達が、魔法を使っては私を見て、馬鹿にしたような嫌味な笑みを浮かべている以外は。

 彼らは初日の魔力検査で、かなり高い魔力を有していると判明した後、他の人に自慢気な表情を向けていた人達だ。

 自分達が高い魔力を持っているのを鼻にかけ、逆に物凄く魔力の少ない私を見下し、馬鹿にしているんだろう。

 私はそんな事で人の価値は測れないだろうと思っているから、彼らの事は相手にせずスルーする事にはしているけれど……いちいちこっちを見てはニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべてくる事にだけは、ちょっとイラッとする。

 あ、ほら、また。

 ……はぁ、貴方達、いい加減にしなさいよ?

 私にそんな笑みを向けるより、一度講師を務める男性のほうを見てご覧なさい。

 貴方達が私を見る数回に一回くらいの割合で、それを見てるあの男性が無表情で、手にしている紙にせっせと何かを書いているんだから。

 あれが何かはわからないけど……ふふふ、体験が終わる日がちょっと楽しみだよね?


★  ☆  ★  ☆  ★


 そんな日々は駆け足で過ぎ去り、ついに体験最終日。

 今日は体験授業はなく、学院を出て、街の散策をしてくるようにと言われた。

 もし来年学院に入るなら、放課後や休日には街に繰り出す事もするだろうから、街の様子も知っておくといいだろう、との学院側の配慮だった。

 私は寮の部屋で同室になった子と一緒に街を回る事にした。

 学院に入ったら利用するであろう、羽ペンやノート、そして可愛い小物やぬいぐるみ等が置かれた雑貨屋。

 通りにまで甘い香りが漂ってくるスイーツのお店。

 リーズナブルな衣服を売ってる服飾店。

 アルバイト先として学院側が認めているらしい、仕事内容に魔法の使用が含まれる、いつかのお店や、ギルド。

 それらを順に見て回った。

 そして、考える。

 もしこの魔法大国に移住したとして、学院に正式に入って、魔法を学んで。

 でも、そのあとは?

 学院を卒業したそのあとは、私は何をするんだろう?

 せっかく魔法学院を卒業したなら、将来就く職業は、魔法が関係するものだろう。

 だけど私、魔法使いになりたいのかな?

 魔法は地球にはなかったもので、使えると楽しい。

 特に召喚魔法には牽かれる。

 こうして街を歩いていても、主婦らしき人が使い魔であろう獣におつかいを頼んでいる姿を見掛けて、その獣が通りを駆けていく様子を見ると便利だなぁと思うし、獣ももふもふしてて可愛いと思う。

 でも、それだけだ。

 生涯の職にしたいとまでは……思った事は、なかった気がする。

 ……私は、何がしたいんだろう?

 移住を決める前に、その事をよく考えておかなければ、駄目、だよね?

 後悔は、したくないし。

 とはいえ、学院での生活はもう終わり。

 次に行くのは……えっと、ネオスティア王国、だっけ?

 そこで、これから自分がどういう生活がしたいのか、よく考えよう。

 あ、ラクロさんに相談するのも、いいかもしれないね。

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