ラクロの悪戯
短いです。
「そうですか、錬金術士になる事に決めたのですね」
「はい。ギルド依頼の品の納品と、知り合った冒険者さん達相手に細々と取引して日々暮らしていきます! なので、まずは錬金術士の体験に行かせて下さい!」
仕事を終えたラクロさんが来てくれてすぐ、私はそれまでに考えた内容を話した。
たぷたぷになったお腹を片手でゆっくりと擦りながら。
「わかりました。では……そうですね、貴女に馴染みのある人物の元へ生徒に紛れて学びに行きましょうか?」
「え? 私に馴染みのある人物……ですか?」
何の事だろう?
日本で生きてた私に、錬金術に馴染みのある人物の知り合いなどいない筈だ。
不思議に思って首を傾げると、ラクロさんは目を細め、悪戯っぽく笑った。
「日本の、フィクションの世界にゲーム転生なるものがあったでしょう? せっかくですから、ちょっぴり体験してみるのも良いでしょう? 華原さん?」
「え」
「それでは、行ってらっしゃいませ」
ラクロさんが放ったゲーム転生という台詞に目を見開き硬直した私に構わず、ラクロさんはにっこり笑って見送りの言葉を口にした。
その直後、私の体を浮遊感が包む。
「え、えっ! あ、あああのラクロさん!? ゲーム転生って、錬金術に馴染みって、い、一体どの世界にぃ~~!?」
真っ白になっていく視界の中、私は姿の消え行くラクロさんに向かってそう叫んだ。




