シンプルな場所で 1
頬に微かな風を感じて、目を開けた。
視界に飛び込んできたのは、一面の青。
よく晴れた日の空のような青色が、どこまでも広がっている。
視線を横に向ければ、そこにはふわふわと風になびいて形を変える、白い何かがあった。
どうやら私はその上に、仰向けに寝転がっているらしい。
体を起こして立ち上がり、ぐるりと周囲を見回してみる。
目に入るのは、たった二色。
果てしなく続いている頭上の青色と、足元の白色。
「……どこだろう、ここ……」
私はその場に呆然と立ち尽くし、ポツリと呟いた。
頭上に広がっている青色は空だったとしても、足元の白いふわふわが地面だとは考えられない、というか、そんな地面は普通にない。
煙が充満している、というなら考えられるかもしれないけど、全くといって煙くない。
寝転がっている時に触れた感触は、わたあめのようにふかふかしていた。
そんな煙はないだろう。
と、なると。
「……夢、かな。やっぱり」
爽やかな青色と、ふわふわした白い何かが広がるこの場所は、時折優しく吹き抜けていく風も相まって、どこか心地がいい。
最近疲れていたから、無意識に癒しを求めてこんな夢を見ているのかもしれない。
そう思うと、呆然としていた表情は和らぎ、ふふっと小さな笑みが浮かんだ。
「これで、可愛い動物がいたり、綺麗な花が咲いてたり、緑が眩しい森があったりしたら尚癒されるんだけど……ないかな? ちょっと歩いて、探してみようかな」
改めてこの場所を見渡して、思った事を素直に口に出す。
これが私の夢なら、どこかにそんな光景もあるかもしれない。
なら、目が覚めるまで、この夢の中をゆったり散歩するのもいいだろう。
そう思って、一歩を踏み出す。
すると、次の瞬間。
「遅くなりましてすみません! お待たせ致しました~!」
頭上から、そんな男性の明るい声が、耳に入ってきた。
それは初めて聞く声だったけれど、私は自然に、そちらへと視線を向けていた。