地下牢の紅
寒い…
助けて…
気付けば、私は冷たく暗い牢屋にいた。
市原 紅葉は、日本の中学3年生。受験に恋にと忙しい平凡な生活を送っていた。
平凡と言うが、彼女には一つだけ変わった点がある。
それは、黒髪に似合わないサファイアの様な赤い瞳。両親は病気かと疑ったが、視力には全く問題が無い。
結局は突然変異かと落ち着き、紅葉は隠すように眼鏡をする事になった。
この日は、紅葉の15才の誕生日。一緒にケーキでも食べようと、友人とファミレスで落ち合う予定だった。
「…あ。」
ぽつ…
頭を打つ冷たい滴。
気づいた時には、粒が大きくなり全身を濡らす。
慌てて走り、ファミレスの前に着き一息吐くと、扉を開けた。
筈であった。
え?
「………お城?………え?え?」
慌てて周りを見渡せば、豪華な城に美しい庭。
どうして?
混乱する頭を抱えているち、にわかに聞こえた喧騒。
「……こっちだ!!侵入者め!」
兵士らしき男は恐ろしい形相で紅葉に槍を向ける。
「……あ?」
恐怖に震える紅葉と目が合うと、兵士はその幼さの残る顔に驚きを浮かべた。
「……その瞳、もしや紅の神子様ですか?!」
目を見開き叫んだ兵士は、慌てて槍をしまい膝を着く。
「…この二千年、世界は神子様を待っておりました。よくぞお戻り下さいました!」
向日葵の様な眩しい笑顔に少し心が落ち着き、紅葉はやっと疑問をぶつけようとした。
「…あの「侵入者ですって?!」…私」
紅葉の疑問は甲高い声にかき消される。
甲高い声に、兵士は嬉しそうに笑みを向けた。
「…はい、メイド長!侵入者と思ったら、紅の神子様でした!」
兵士の声に、そのメイド長は何故か一瞬顔を強張らせる。
「……ま、あ。確かにその瞳…紅の神子様ですわね。」
紅葉は何故かその笑顔に違和感を感じた。
なんだろう…笑ってるのに、笑っていない?
「…兵士様、私『十神衆』三の方様へ神子様をお連れしますわ。」
にこにこと笑うメイド長に、兵士はおお、と大きく頷く。
「ぜひともお願いいたします。三の方もこの日を待ち遠しくされていました。」
それでは、と頭を下げて紅葉を促すメイド長。
どうしよう…。
何もかも理解出来ない紅葉にとって、何故かメイド長は本能的に信用できない。
それでも、兵士は明るく見送り、早足のメイド長に着いていくしかなさそうだ。
嫌だな…
神子って言ってたよね?アカのミコってなんだろう?
ジュッシンシュウって?
着いてきたけど、私が人違いだったって分かったらこ、殺されたりしないよね?
うう、怖いよ~。
思い足取りに、考え事に没頭する紅葉には辺りが暗くなった事に気づけなかった。
「…?あの…。」
気づいた時には、薄暗い牢の前にいた。
「メイド長さん?一体…………きゃあ?!」
一言も言葉を発しない相手に不思議に思い問い掛けると、そのまま牢屋に突き飛ばされた。
かチャリと錠の掛かる音が響く。
「…っどういう…事?」
震える声を絞り出す紅葉に、相手の表情はまるで氷の様である。
「…ああ、その瞳忌々しい事。でも、髪は黒いから半端に転生したのかしら?やっと、やっと二千年神子を封じてきたのに…何故出られたのかしら?」
ふふ、とメイド長は笑う。
「…まあ良いわ。貴女は此処で朽ち果てなさい。貴女の世界も、十神衆も私が大事に頂いてあげる。」
その言葉と同時に、メイド長の髪と瞳は真っ赤に染まっていく。
「では、さようなら。今日から私が紅の神子よ。」
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