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「あき」 Written by にゃん椿3号
「あき」
夏が終わったの
ジリジリと肌を焼かれる痛さも
蒸し暑さに押し包まれる苦しさも
そっと流してくれる夜の心地よさは
どんなに寝ても飽きたりしないから
夏の間はとにかくたくさん眠っていたの
明けない夜はないって知っていたけど
暑さを逃がす 静かな暗闇が心地いいから
心をどこまでも空っぽにして眠っていたかったの
でもね そろそろ秋が始まるよって
鈴虫が涼しげな歌で教えてくれたから
まるまった身体を伸ばして
ゆるやかに背伸びをして
漏らしたあくびも一つきりで終わるから
動き出す時間だと 全身が知っているみたいだわ
おはようを輝く星に告げて
つま先を一歩 前に踏み出すのよ
私を誘う月が丸くて
コスモスが風に揺れて
散り落ちる紅葉が舞い踊る
あでやかな色彩に似合うのは
十二単のかぐや姫かもしれないけれど
私は秋色のドレスをまとい
虫の奏でるワルツにのって 軽やかに踊りだすの
永遠を祈りたくなる
にぎやかで透き通った 秋がはじまるの