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005  日本一


 八年、九年と年月は経過しました。無論、ゲームの中での話しですよ。それでもAクラス入りすら果たせない現状に、段々と苛立ちを隠せないでいました。もし、彼女が見ていなければ、ゲーム機本体を粉々にして、桜の木の上から降らしてやろうかと本気で思うぐらいです。それぐらい、このゲームは人をイライラさせる天才と言えます。


「そろそろ、日本一になったかしら?」


 彼女がゲーム機を覗いてきましたが、今はシーズンが終わってドラフト会議に参加しているところです。ドラフトには有望な新人がいても、ほとんどの確率でライバルチームがかっさらっていくのです。だから、僕はハズレの選手を獲得してしまいます。そいつらは決まって、毛ほどの戦力にもならず、自由契約にするというテンプレ的な構造が出来上がってしまいました。しかも、戦力外にした筈の選手は他のチームに拾われて、新天地で地味に活躍しているから、それが腹立たしくて仕方ありません。


「まだです。教官」


「早くしなさいよ。私もずっとゲームを眺めるほど暇じゃないんだから」


「善処します」


 としか言えませんでした。もし、このゲームをやめたいと言い出そうものならば、鉄拳制裁がまっているのです。それも拷問に近い。


「よろしい。早くクリアしたまえよ」


 彼女は他人事のように言っています。このゲームの辛さを知らないのでしょうか。このゲームは日本一がクリア条件のため、日本一になるまで無限にシーズンが続きます。しかも、目立ったイベントは無く、淡々と試合をして、淡々と一年が終わるのです。


「これっていくらぐらいしたのですか?」


 修行中に彼女に話しかけるほど、僕は暇に襲われました。


「ゲーム機は500円。ソフトは50円だ」


「50円……これだけ遊べるのならお得ですね」


 確かにそうでした。1日15分程度遊ぶのなら、このゲームも楽しいでしょう。しかし、何時間もぶっ続けでプレイをするのは、やはり拷問です。それでも、彼女は日本一になるまでやれというので、僕は目を充血させてプレイを続けるのでした。



 ▼



 十時間が経過しました。やっとです。やっとクリア出来ました。


「やるわね。本当に日本一になるとは」


 ほとんど奇跡のような感じで、シーズン三位の状態でクライマックスシリーズを勝ち進んで、日本一の栄光を掴みました。何度も言いますが、本当に奇跡でした。相手チームが大事なところでエラーをしてくれたおかげでの日本一です。


「ああ……辛かったです」


 安堵からか、僕はホッと胸を撫で下ろしました。


「良かったわね。これで忍耐力が多少ついたでしょ?」


「はい、ありがとうございます」


 こうして、悪夢の長時間ゲームは幕を閉じました。この修行で感じた事は、やはりゲームは一時間だということです。精神的にも肉体的にも疲れるという事が分かりました。



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