003 詩
さっそくですが、僕は今道場にいます。三回目の修行が始まったのです。
「今回の修行は」
彼女は口を開いています。
「ごくり……」
僕は緊張から生唾を飲み込んでしまいました。
「小説を書く修行だ」
彼女は言いました。
「小説を……書く?」
「そうだ。人生何が有るか分からない、お前は小説家としての才能があるかもしれない。それを今回の修行で引き出すのだ」
「はあ」
「では、やってみるがいい」
すると、椅子に座らせられて作文用紙を渡されました。これに何かしらの文章を書けという事なのでしょうか。
「え、何をかけばいいんですか?」
「詩でいい」
彼女は詩でも大丈夫だと言うのです。
「詩ですか」
「そうだ。小説と詩は限りなく近いジャンルだ。肩慣らしには丁度いいだろう」
鬼教官はそういうのです。
「やってます」
僕は今の現状を詩として書くことにしました。エクソシストになるための修行を今まで二回してきたことと、今回が三回目であることを。
「こらああ!」
するとです。彼女は急に怒り始めて顔を近づけてきました。僕の顔と彼女の顔はものの数センチしかありません。
「な、なんでしょう」
彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそうになりながら、僕は尋ねました。
「最初の行は一マスあけなさい」
「え?」
彼女は一マス開けろというのです。
「文章を書く時もルールがあるの」
「そうなんですか」
「まあ、仕方ないわ。大目に見てあげる」
と、言うのです。彼女も素人のくせに上から目線ですが、そんな彼女が僕は好きでした。
「最初の行は一マス開けるのですね」
僕は彼女に言われた通り、一マス開けて書き始めました。すると、
「そうだ。やれば出来るじゃないか」
お褒めの言葉を頂きました。彼女は褒める時には褒めて、叱るときには叱る。理想の鬼教官です。
「ありがとうございます。他に小説を書く時のルールはありますか?」
「絶対にオチをつけろよ。オチが無い小説は最悪だぞ」
そう、彼女は言ったのでした。こうして、僕は小説の書き方を一通り学んで、用紙いっぱいに詩を書いたのです。詩を書くうちに色々な発見が出来て、楽しかったです。




