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私が乙女ゲーヒロインになっちゃった理由

作者: 保野透香

 私の人生、碌でもないことしか起きてない気がするんですが。

 なぜ?


 父母の墓に供えた花の世話を終え、私は溜め息をついた。これから先、どうしろってんでしょう。平凡な一高校生でしかないから、両親が交通事故で亡くなってからは叔父夫婦のもとにご厄介になっているわけですが、あそこで私はほぼ奴隷ですのことよ。墓参りは緊急避難とニアリーイコールになっている今日この頃。

 ひととしてちょっとやばくね? とか思います。一応さ、お墓参りぐらい故人を偲ぶ心を持って行いたいわけよ。しかし実際はやばい死ぬ殺される、私まだお星様にはなりたくない! って思いながら、溜め息ついたりしてるわけで。


 はあ、そろそろ夕飯を作る時間だな。……帰るか。じゃないと、リアルにお空へきらきらりんとライジングする羽目になりそう。


 足に鉛でもついてるかもーと勘違いしたくなるぐらい鈍い足取りで、霊園の出口へと向かう、途中。なぜか後ろからもの凄い勢いでどつかれました。私、吹っ飛ぶ。そしてぶつかる。墓石の角に、頭から!

 文字通り頭がかち割れる痛みに襲われながら、今まさに私ライジングしちゃってるーと思った。


 そんなこんなで、私も死にました。現在、天国(推定)なう。


「ごっめーん、マジごめんねっ」


 語尾にきらっとかつきそうなかっるーいノリで、目の前の背中に羽が生えてる美少女はテヘペロした。おい。


「だってさー、大型連休の中日の真っ昼間から霊園にひとがいると思わないじゃん? みーんな、もっと楽しげなところに行って遊んでるよね? だから、ついスピード出し過ぎてキミにぶつかっちゃったってゆーね。ってことで、キミにも責任あると思うっ」

「あるわけねーだろ! ともかく生き返らせろー!」


 羽をぱたぱたさせながらとんでもないことをのたまう天使(推定)を、どつき倒そうと画策する。しかし、天使(推定)はひょいと身軽に私の拳と蹴りを避けた。きい、むかつく。


「えー? そんなこと言われても、無理だから。死んだひとは死にっぱなし。これ、世界の常識ね」

「私が非常識みたいな反応してんじゃねー! ふざけんな!」

「だって、無理なものは無理だし? 運が悪かったと思って諦めてよー」

「運が悪かっただとお!」


 ちゅどーんって感じで怒り大爆発です。許せないです! なんだそのいい草は! 単なる女子高生だと思いやがって、舐めてんじゃねーぞ!

 天使(推定)は地団太を踏む私を見て、やれやれとでも言いたげに肩を竦めた。くそう、むかつくジェスチャーだなあ!


「じゃあ、しょーがないから乙女ゲームのヒロインに転生させてあげる。アレでしょ、最近そーいうの下界のネット界隈で流行ってんでしょ? 全ネット民アコガレのシチュエーションなんでしょ?」

「いや、そんなこと言われてもよく分かんないんだけど。パソコンに指一本でも触れると餓死の危機に陥るから、ネットなんて年単位でやってないって」


 当然、携帯もスマホも持ってません。ネット、懐かしい響き! って、そーじゃねーよ。


「ともかく、乙ゲーヒロインになって逆ハーしてきてね! それを面白おかしく眺める予定なんだから、ちゃんとイケメン攻略してよ! それがキミの新たなる使命だ!」


 天使(推定)はノリノリでイタいポーズを決めると、右手をぴかっと光らせた。そして、そのまま私の胸を人差し指で三回叩く。異議申し立てする間もなく全身が光で包まれ、次に目覚めたときには三歳児でした。おかしいよね、この展開。


 とりあえずもう生まれ変わっちゃったらしいということで、こそこそ今生の両親に隠れて乙女ゲーム諸々その他について調べたんだけど。その感想、なんじゃこりゃー! でした。ネットと同じくゲームもとんとご無沙汰だった私が、恋愛シミュレーションゲームなんか知るはずもないわけです。

 天使(推定)め、なんつーことをしてくれやがったんだ! あんなののヒロインって! しかも逆ハーって! ありえん!


 さらにこれから時間が経つこと十三年後。高校に入学して出会った他の転生者に、この乙女ゲーの攻略対象にはヤンデレしかいないよとの情報を得まして。

 天使(推定)は絶対、殺る! 何があっても殺ってやる! と息巻いたのでした。


 だってあいつ、言ってたらしいんだよ。


「あの子は私に割り当てられたオモチャだもん! 次のジンセーでもテキトーに楽しませてもらって、飽きたらまたリセットしよっ。で、また面白そうなキョーグウに放り込むんだあ!」


 はっはっはー、絶対に許さん! これから復讐に走ったるわ、覚悟して待ってろよ!

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