エンディングー道化師のソネットー
このサーカスの素晴らしいところの一つにエンディングがある。
当時から数えて2年前、「飛べ!イカロスの翼」という映画が、さだまさし主演で全国公開された。
作品は、カメラマンとして全国を巡っていた男性が、偶然訪れたサーカスに魅了されるところから始まる。入団を希望し、ピエロとして生き、公演中の事故で亡くなるまでの半生が描かれているのだが、実はわたし、この映画の存在こそは知っていたが、観る機会がなかった。
映画の主人公の栗原徹さんは実在し、映画もノンフィクションらしい。キグレサーカスの後楽園公演を実現させた陰の功労者も、栗原さんだと後々、知らされ驚かされた。
さておき、
さだまさしさんの歌う「道化師のソネット」の緩やかなピアノの演奏が流れると、当時、映画を観た人達の心を揺るがしたのか、感動の歓声が起こる。
「笑ってよ、君のために、笑ってよ僕のために~♫」
煌びやかな衣装に身を包んだ出演者全員が舞台上に現れ、順番に前に出てお辞儀をする。
空中ブランコのメンバーが最前列に出た時などは、一際大きな拍手が起こった。
キグレサーカスの人達と親交のあった、さだまさしさんの見た、サーカスの人々とは、この歌の歌詞に凝縮されているような気がしてならない。
ー道化師のソネットー
僕たちは小さな舟に、悲しみという荷物を積んで、時の流れを下ってゆく舟人たちのようだね
君のその小さな手には、持ちきれない程の悲しみを、せめて笑顔が救うのなら僕はピエロ(道化師)になれるよ
笑ってよ、君のために、笑ってよ僕のために
きっと誰もが、同じ河のほとりを歩いている
僕らは別々の山を、それぞれの高さ、目指して、息もつかずに登ってゆく山びと達のようだね
君のその小さな腕に、支えきれないほどの悲しみを、せめて笑顔が救うのなら僕はピエロになろう
笑ってよ君のために、笑ってよ僕のために
いつか真実に笑いながら、話せる日が来るから
「わたし、このサーカスに入団するわ!」
そう言って立ち上がったのは、友人の方であった。