序章
どうも、このたびは「光翼のアレリア」を連載させていただく 秋野七草 と言う者です。 今回が初めての投稿となりますので、処女作、となるのでしょうか? 初めてということでいろいろと滅茶苦茶なところがあると思いますが、どうか長い目で見てください。おねがいします。
落選通告
貴殿は王立軍士官養成学校高等部への進学選考から落選したことをここに通告する。
なお、貴殿には中等部の卒業資格は与えることが決定しており、この卒業資格は通常の教育機関が発行する資格と同一視することが可能とする。
新しい機関で自らの力をより一層向上させ、我が校の名誉となることを貴殿に期待するものとする。
王立軍士官養成学校校長 レイチェル・L・バスク
「…これは…なんでしょうか…?」
僕は紙と教師の顔を見比べながら問う。
「君は高等部への選考に漏れた。一応中等部の卒業資格は与えるが…。単刀直入に言おう。この学校を辞めてもらいたい」
「なぜ…ですか?」
「言っただろう。君は選考に漏れた。故にこの学校を去ってもらう。決定事項だ、異論は認めない」
無情な宣告。僕は体は鉛のように固まった。
「しかし、それでは君も辛かろう。別の学校を紹介しよう。このリストから選びたまえ」
別の紙が手渡される。
紙には『落選者再入学校一覧』とある。
恐れていたことが起こった。しかし後悔してももう遅い。
落選通告。
僕は落ちこぼれ、ということか。
しかし成績はそこそこ取れていたはず。なぜだ、納得いかない。
「成績は問題ないはずでは?」
「異論は認めないと言ったはずだろう。そうだな、強いて言うなら今後の成長に期待はできない、ということか」
「…で、ですが――――」
「理解できなかったようだな。君は除籍処分だ。猶予期間は三日、それまでに荷物をまとめて寮から去りたまえ。そして明日までにその要項に必要事項を記入し、持って来たまえ」
「……」
「返事をするのだ! ヴォルグ! 命令が聞けんのか!!」
「…はい。わかりました、教官…」
こうして僕は『除外者』と呼ばれるようになった。
○
除外者…首都に位置する王立軍士官養成学校の高等部の進学選考の際、落選してしまった中等部の内部進学希望者及び退学者等を指す。
なお、ここでの落選者とは外部からの受験者で落選した者を指す。
総じて落ちこぼれ
除外者という不名誉な肩書きは首都では絶対的な力を持つ。
大変言いにくいことなのだが…、この肩書きはいわゆる「追放宣告」なのだ。
この肩書きを持つ者は馬鹿にされ、蔑まれ、そして罵倒される。
首都内のほかの学校にも進学できず、就職すらもできない。
故にこの肩書きを持つものは皆首都を発つ。
そしてこの僕も例外ではない。
与えられた三日という猶予期間。その間に都から出ることを薦められた。少ない時間だったがどうにか手続きは完了した。
そして今日はその期日、猶予はもうない。
荷物はまとめた。そして荷物の送り先も指定した。
そして脇に置いてある剣を取り、部屋を出る。
「出発か、アレリア?」
部屋の外には中等部時代の友のエヴァンズが待っていた。
「うん。今まで世話になった」
「そうか……少し、話をしても?」
「構わないよ。何?」
僕はエヴァンズの目をまっすぐ見て答える。
対してエヴァンズは目を逸らしながら、
「ほ、本当に行ってしまうのか?」
か弱い声で言葉をつむいだ。
「もう首都ではやっていけない。君も分かってるんじゃないのかな」
だが僕は抑揚の無い声で言葉を返す。
「し、しかしだな…なぜあの様な辺境の学校を…」
「リストの中で王立と同じようなことをしているのがここだけだったんだ。僕にもまだ未練があるからね、やり直したいと思ったんだよ」
そうだ。こんなところで立ち止まってはいられない。不名誉な称号一つ、手に入れたと思えばいい。やり直すことはできるはずだ。
「そう……なのか……」
エヴァンズの目に涙が溜まってきているな。その目がうるうると陽光を反射し、輝いている。その姿はまるで幼子のようだ。見ていてこっちが辛くなる。
「じゃあね。機会があればまた話そう」
淡々と言葉をつむいでその場を離れる。エヴァンズから逃げるように、だ。
足早に寮の階段を降り、玄関に出る。
良く手入れされた庭を歩き門にさしかかったとき、
「アレリア!」
とエヴァンズの声が響いた。同時に発生し、大きくなっていく足音。
振り向いたときにはすぐそこにエヴァンズ顔があった。
「僕にはもう関わらないほうがいい。君にまで悪いレッテルが貼られてしまう」
「そんなこと―」
「私には関係ない、って言うのはナシね」
「―――っ」
黙った。どうやら中っていたようだ。私には関係ない、か。久しぶりに聞くな。
こうして話をするのも悪くはない、がしかし、出発の時間が刻一刻と迫ってきている。さて、どうしたものか…
「…なぜ…お前なんだ…?」
そうしている間にエヴァンズが口を開く。
「なぜ、とは?」
「なぜ、お前が…除外者になるんだ…なぜ…」
つまり、「なぜ僕が落選して除外者なんかにならなくちゃいけないのか」と言っているんだろう。
「それは分からない。高等部の選考の基準は何かが違うのかもしれないね。落選理由として教官に「今後の成長に期待ができない」って言われたっけ」
理由など知りはしないのだ。明確な答えは導き出せない。
「しかし、アレリア。お前は――」
「ごめん。もう時間なんだ。行かなくちゃ」
「アレリア……」
「ごめん……」
僕は身を翻し、馬車の停留所まで向かおうとする。
僕は時計を見る。午前八時二十五分。乗合馬車の出発まであと五分しかない。
足早にその場を離れようとする。
「アレリア、私は…お前のことが―」
エヴァンズが何か言おうとしている。
きっと重要な事なのだろう。
しかし、反射的に思ってしまった。これ以上は喋らせてはいけないと。
「――――クレア」
だから僕は苗字ではなく名前で彼女に名を呼ぶ。
言っておくが、これまで彼女のことを名前で呼んだことはない。
だからだろうか、エヴァンズことクレアは固まったまま動かなくなってしまった。
驚いたのだろうか? その目は涙が溜まっているが流れることなく見開かれている。
「今……なんて……?」
驚きながらも必死で言葉を紡ぐ姿を見て僕は ふっ と表情を緩めた。
「クレア。こうして君と話せて、なんか胸の中がすっきりしたよ」
クレアの頬に涙が伝う。そしてそれが合図だったかのように、溜まっていた涙が流れ出していく。
「ありがとう」
そう言い残し、僕は歩き出す。
クレアはその場に崩れ、本格的に泣き始めている。
その姿をちらちらと振り返りながら眺めつつ、涙を呑んでその場から離れる。
そして新しい学び舎に向かうべく停留所に歩を進めるのだった。
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