第一幕:かの魂は七人の小人へ
【第一幕】
やあ、君。
今回の物語は、ファウストが天に召された後の話だ。
彼の壊れた魂は、
次の誰かに受け継がれた。
もしかして、君の時代にも彼の魂を持つ者がいるかもしれない。
ボクが誰かって?
語り部ファウストさ。
ヨハン・ゲオルク・ファウスト。
君と共に物語を見つめる者であり、
君の友だ。
今度のファウストの魂を引き継ぐ者がわかった。15世紀。1470年代の神聖ローマ帝国。そこの黒い森の中に、彼はいた。
夜の森の中で、ランタンを片手に他の仲間たちを見回す。
彼らは『七人』いた。
誰もが、灰色の短めな頭髪。ボサボサの頭に適当なハサミで短めにしただけ。手入れをしない髭。顔を何度もこすって赤くなった鼻をしていた。
擦り切れた茶色のチュニック、泥だらけの不恰好な不揃いの革ブーツ。
まるで、小さなお爺さんたちだった。
そのうちと一人が、彼だ。
名はグリッズル。彼がボクらのファウストなんだ。
彼の顔はランタンの黄色い光に照らされ、表情は絶望感にあふれていた。
彼は突然、唸り、鼻を腕でこすった。
「グリッズル、お前、まだ不満なのかよーー」と赤い帽子を被った他の小人がいった。リーダーのクワークルだ。
彼は知的だが、根拠のないことを信じてしまう小人だ。ボクら人の子が、たびたび陥ってしまうようにね。
グリッズルは不機嫌が極まったように、鼻をピクピクとひくつかせた。
「不満に感じないわけないだろ、クワークル。ボクたちは終わりだ。みんな死ぬ」と不吉な予言を彼はした。
どこか、厳かな雰囲気が漂う。巫女に神託を告げるようにさえ聴こえる。
「新しい鉱山は衛兵どもに見張られ、古い鉱山は何も出ない。得られたのは、クズ石ばかり」と仲間たちの顔をランタンで照らしていった。
その後ろには、クズ石と呼ばれた石の塊が荷車に乗っていた。そこから小石が地面に向かってころがった。
「クワークル。
君は頭がいいが、希望を持ちすぎだ。
ーー待っていても、
事態は良くならない」
「不幸なグリッズル!ボクの女の子の話でも聞かせたげようか。彼女ってば、いつも楽しいことを話してくれる。昨日なんか――」と弾むような声が話を遮った。
グリッズルは、ため息をついて手にしたランタンを声のする方へと向けた。
ランタンの光ががニヤけ顔の小人に移った。
「ジュビロ。
いもしない女の話をするな。
ボクたちに女はいない。
どこにも、だ」と言われ、ジュビロの顔が暗くなっていった。闇の中で輝いていた顔からは光が失われていった。
グリッズルは、それを見届けた。そして彼は満足した。彼らには希望の光は必要がなかった。他にも、そんな光を持っても現実から目を逸らすだけだ。
グリッズルは仲間を一人一人見回した。
「ドロウセル。
いずれ、ボクたちは眠らなきゃいけない。いま、眠くなるなんて早すぎる」と彼はドロウセルの鼻をつまんだ。
「ブラスキン!
お前、なんとか言ったらどうだ!
ボクらは滅びの危機にある」そして、彼はブラスキンの頬をぶった。
「スニッフル。
具合が悪ければ、
アジトに残れ。
お荷物だ」と彼は皆のアジトを指さした。スニッフルは鼻をすすった。
彼は風邪をひいてた。
「ワンプル!言われた通りにやる小人!君は、ボクのお願いを聞いてくれ」と彼はワンプルを抱きしめた。
ワンプルは誇らしそうに、彼に抱き返した。
彼は皆を見回した。
「ボクらは力を合わせなきゃ!
ーー破滅なんだ。
食べ物も今朝のスープしかない。
ーーさあ、アジトに戻ろう。
売れるものをかき集めなきゃ」
彼らは鉱山からの帰りだった。
ツルハシを肩にのせ、
収穫したクズ石を荷車で引きずり、
彼らは暗い森の奥へと帰っていた。
そうして、彼らは運命に遭うことになった。
彼らのアジトに人間の美しい女が彼らの寝台の上で横たわっている。
ボクらは彼女の名を知っているよ。
ーー白雪姫だ。
(こうして、第一幕は白雪姫により幕を閉じる。)




