表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪の味  作者: 空蜂
8/10

第七話

洞窟の奥で、しばらく沈黙が落ちた。


仁禮は目を閉じ、ゆっくり息を整える。


医師としての倫理。

法律。

社会的立場。


そして――家で待つ少女。


目を開けると、老女と視線がぶつかった。


「……条件がある」


洞窟の空気がわずかに張り詰める。


エリアスが身を乗り出す。


「何でも言ってくれ」


仁禮は、淡々と告げた。


「まず、禁止されている肉と魚の安定供給。

量は指定する。品質も、俺が確認する」


ライカの尻尾がぴくりと揺れた。


老女は、目を細める。


「ほう」


「それと、血液検体の提供。

狼族全体のデータが欲しい。年齢別、性別別に」


エリアスが息を呑む。


「一族全体を診る気か?」


「原因が個体の問題でないなら、

集団としての異常を疑うしかない」


仁禮の声は冷静だった。


だが、最後の条件だけ、わずかに間を置いた。


「……俺がここに来たことは、外部に漏らさないこと」


洞窟の奥で風が鳴る。


老女はゆっくり杖を打った。


「肉も魚も、用意しよう。

血も好きに採るといい」


一歩、近づく。


「だが覚えておきな」


その目が鋭く光る。


「肉は対価だ。

だが真実を知ることは――保証しないよ」


仁禮は、視線を逸らさなかった。


「構わない」


それは医師の答えではなかった。


覚悟を決めた人間の声だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ