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仁礼一拍手  作者: 空蜂
17/18

第十六話

地下研究室。


静かな機械音の中、解析が完了する。


モニターに表示されたのは、

比較結果の数値だった。


サミュエルが、ゆっくりと読み上げる。


「対象検体……エリナ」


一拍。


「クラーク家保存配列との一致率――」


仁禮の喉が鳴る。


数値が確定する。


100.00%


空気が止まった。


仁禮が画面を見つめる。


「……誤差じゃないのか」


サミュエルは首を振る。


「再計算します」


再解析。


同じ結果。


100%。


トーマス・エルリック・クラーク。


クラーク家の保存DNAと――


完全一致。


仁禮は、ゆっくりと顔を上げた。


「……クラーク家?」


静かな問い。


サミュエルは視線をモニターから外さない。


「あなたは知らなかったのですね」


「名前は資料で見た。でも――」


仁禮は言葉を探す。


「“家”ってなんだ。

ただの一族じゃないのか?」


サミュエルは端末を操作し、

古いデータベースを呼び出す。


画面に、封印済みの印がついたファイル群。


「クラーク家は、血統です」


穏やかな声。


「トーマス・エルリック・クラークを起点とする、

管理指定血統」


仁禮の眉がわずかに寄る。


「管理?」


「ええ」


サミュエルは続ける。


「表向きは歴史上の“進化事例”。

ですが実際には――」


一瞬、言葉を選ぶ。


「国家が保存してきた血です」


地下室の空気が重くなる。


「保存?」


「トーマスのDNAは特別でした。

その直系子孫は、監視対象であり、同時に研究対象でもある」


仁禮の視線が、ゆっくりとエリナへ向く。


エリナは、足をぶらぶらと揺らしている。


まるで、自分の話ではないかのように。


「つまり」


仁禮の声が低くなる。


「エリナは、その“保存血統”の一人だと?」


サミュエルは頷いた。


「直系です」


再び、モニターの数字を見る。


100%。


誤差なし。


「……そんな家系が、今も?」


「公には存在しません」


静かな答え。


「だが記録は消えていない」


仁禮は一歩後ろに下がる。


「じゃあ彼女は、生まれたときから――」


「把握されています」


その言葉に、空気が止まる。


エリナが、ふと顔を上げる。


「……く、らーく?」


ゆっくりと、その言葉を口にする。


「それ、しってる」


仁禮が息を止める。


「知ってる?」


エリナは、しばらく考える。


だが、それ以上は言わない。


「……べつに」


目を逸らす。


読者だけが気づく。


彼女は知っている。


クラーク家が何かを。


そして。


自分がその血であることを。


地下研究室の灯りが、

数字を白く照らしていた。



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