9:爆発魔
「ユカさん、このあたりもよろしく!」
「はい!キュプロムさんと皆さんは危ないのでさがっていてください」
パチン
ボン!
ガラガラガラガラ
私は指を鳴らして爆発魔法を発動し、鉱山の坑道の先にあった硬い岩盤を破壊した。
「おおー!いつみてもよい手際だ。冒険者なんて辞めて採掘者にならないか?」
「お気持ちだけ受け取っておきますね」
私とララがアイダホの鉱山で銅を発見してから2週間ほど経過していた。
冒険者ギルドのギルマスに報告すると、鉱山に詳しい本物プロの鉱夫だったキュプロムさんに話がいき、キュプロムさんと鉱夫仲間の皆さんが鉱山の再調査を行った。
その結果、鉱山には銅が眠っていることがわかり、こうして坑道の再開発が行われている。
私はというと、人の手では硬くて掘り進めにくい場所を主な対象に、先ほどのように爆発魔法で掘削係をやっていた。
「それにしても、これだけの銅があるのに採掘していなかったのですか?」
キュプロムさんはプロの鉱夫だけあって、銅もすぐに見分けをつけていた。
それにも関わらず、採掘していなかったことに違和感を感じて、質問してみた。
「恥ずかしい話なんだが、ルーク王国の担当官の指示に逆らえず鉄鋼だけを掘っていたんだ。だから銅を見かけてもスルーしていて、結構な量が眠っていることに気づかなかった」
キュプロムさんはバツが悪そうに、頬を掻きながらこたえた。
「なるほど・・・。ルーク王国は鉄鋼だけを欲していたんですか?」
この世界でも、武器や色々な道具の作成に銅は使われているのよね。銅の需要もあるはず。
「あー。俺も聞いた話なんだが、鉱山ができた頃にルーク王国の当時の担当官がやらかしたらしくてな。なんでも、愚者の黄を本物の金と間違えたらしい。ルーク王国に金床を発掘したと意気揚々と報告したが、実際は愚者の金、つまり黄鉄鉱だったというオチだ。上部だけで判断して赤っ恥をかいた担当官が鉄鋼以外を採掘しなくなり、その後任たちもそれに従ったって背景らしい」
黄鉄鉱は確か、金と似たような光沢と色だったかしら?地球では、間違える人が愚か者と呼ばれるから、愚者の金と呼ばれていたのよね。どの世界でも同じような人はいるのはしょうがないわね。けど、確か違いがあったはず・・・
「叩けば違いがあるのでしたっけ・・・?」
理学部時代に何かの資料で見た覚えがあったような気がしたので、キュプロムさんに聞いてみた。
「へー詳しいな!黄鉄鉱は叩くと火花を散らしたり砕けたりするが、金は火花が出ないで伸びるな。まぁルーク王国の担当官は上辺だけしかみなかっただろう!それでも、ハースト帝国の威光をかざしているから俺らは逆らうことができなかったんだがな」
・・・まるで日本での警察時代の私の上司みたいね。上辺だけで職務に当たるわ、あの人も国家権力をかざすだけの虎の威を借る狐だったわね。彼女の所業を調査すると署長が言っていたけれど、あの上司も今はもう無能っぷりが明らかになったのかしら・・・?
私が地球の狐ちゃん(警察の上司)に思いを馳せていると、明るい雰囲気になったキュプロムさんから声をかけられた。
「ま、今となってはルーク王国は完全にこの鉱山から手を引いている。その隙に、この銅の採掘と販売は俺たちが主導できるようにしたいな。ユカさんが採掘者として残ってくれればいうことがないんだが」
チラチラと私の方を見てきたので、苦笑いしながら答えた。
「お気持ちは嬉しいのですけれど、旅を続けたいです。もし今後機会があれば考えておきます」
「そいつは残念だがしょうがないな。爆発魔法の講義もしてくれているみたいだし、これ以上はおんぶに抱っこせずに、自分たちでなんとかするか!」
「できる限り私もお手伝いしますね。このあとその爆発魔法の講義があるので、そろそろ町に戻りませんか?」
「わかった!」
ーーーーーーーーーーー
私は、鉱山からアイダホの町に戻ってきた。鉱山のことがもう少し落ち着くまで空き家を使わせてもらっているので、家に向かった。
「ユッカ!戻ってきたか!」
「ララ、ただいま〜」
ララは獣人だけあって耳がいい。狭い坑道内で爆発魔法を使うとけっこう響くらしく、普段はあまり採掘の現場にいかない。
「着替えるか?」
「うん、そうするわ」
「わかった」
私は清浄魔法で体と作業服を綺麗にしてから、私服に着替えた。
「爆発魔法の講義に行ってくるわね」
「おう!夕飯は作っておくからな!」
「ありがとー。けどお腹に入れば同じだからなんでもいいわよ」
もう少し食べ物に気を遣え、と言いながら苦笑いするララに見送られ、講義を行う場所に向かう途中に町の人々から声をかけられた。
銅があるとわかって、かつての住民の方や、子供も含めて若い層のご家族の方がちらほら戻ってきているようなのは良かったと思う。思うのだけど・・・
「あら、爆発魔さんじゃない。こんにちわ。今日も講義?」
「あっ爆発魔さんだ!今日は何を爆破するの?」
「爆発魔!俺にもっと威力のある爆発魔法を教えてくれ!『子供だからってまだはやい』、ってのはなしだぜ!」
・・・講義をするうちに、私は爆発魔と呼ばれるようになってしまったのよね。爆発魔法の魔法師、を略しているっぽいのだけど、爆弾魔みたいで嫌なのよね・・・
「ね、ねぇ。みなさん、爆発魔はちょっと・・・ユカって呼んでくれていいんですよ?」
「えー、爆発魔法使ってるからすごいしっくりくるじゃん!コードネームっていうんでしょ?かっこいいじゃん!」
「そうねぇ、あれだけ色々と爆発させているとどうしてもその印象が強くなってしまって・・・」
「それに先生、爆発させている時は生き生きした顔してるよ?」
(コードネームは違うと思うけど。・・・まぁ確かに認めよう!正直楽しかったわ!)
異世界知識の地球の科学技術を安易に伝えるわけにもいかず、爆発に対するイメージを深めてもらえるように、色々と爆発させた。
例えば、乾燥した松ぼっくりを火魔法で爆ぜさせたり!高温に熱した油に水を注いで水蒸気爆発をさせたり!坑道から塵をもってきて粉塵爆発させてみたり!
結界で安全を確保できるから、科学実験やりたい放題で正直楽しかった!
私が自己弁明をしていると、やんちゃそうな男の子が得意げに言ってきた。
「別のコードネームがいいなら、ボムッチはどうだ?」
「ボムッチ?」
「爆弾の魔女!ボムウィッチでボムッチ!おじさんたちと爆弾の試作品も作ってるんでしょ?」
「・・・うん。爆発魔法だけだと、狭い坑道内とか、場合によっては魔法を使う魔法使いが危ないでしょ?そういう時のために、遠隔で操作できる、爆薬を組み合わせた魔道具も作ってるわ」
それにしても、私に対して爆発、爆弾のイメージが定着しすぎているわね・・・。
「へー!ボムッチ、かっけぇジャン!」
・・・もう好きに呼んでもらおう。




