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5:人攫いに鉄槌を

ユカとララは人攫い捕縛の打ち合わせを終え、翌日の早朝に街を出発した。


「ユッカ、そのかっこ似合うぞ。香水もいい感じに合っている」

「そう?ありがとう」


昨日、あのあと私たちはすぐに服屋に向かった。

そして、少し育ちの良さそうなお嬢様が背伸びをして家から抜け出したかのような服装を選んだ。店員さんがなぜか嬉々として提案してくれたので、ララと相談して今着ている服にした。


「あの店員のテンションがあがってたのもわかるな。ユッカは素材がいい」

「お世辞を言ってもなにも出ないわよ?」

「本心なんだけどな。それより、剣はあたしが預かっておくけど本当に大丈夫か?」

「多少護身術も使えるから大丈夫よ」


警察学校で習っていたのが活かせるわね!まさか異世界で実践するかもしれないとは!


「危なくなったら逃げていいぞ」

「被害者を見つけるまでは頑張るわ」

「巻き込んで悪い」

「自分の意思よ。ララは気にしないで」


しばらく歩くと、おととい旅人とすれ違った地点まで近づいてきた。


「あいつらがいる。間に合ったか」


ララの言葉を受けて、目に魔力を流して視力を強化した。

「ほんとね。じゃここからは私一人で行くわ」

「気をつけろ」



私はあからさまに地図を広げて、おどおどした様子で不安げに当たりを見渡しながら道を進んだ。すると、おととい会ったリーダーらしき人がそれは優しげに声をかけてきた。


「お嬢ちゃん、道に迷ったのかい?」

「はい・・・そうみたいです・・・どうしましょう・・・」

「そうかそうか。それは不安だよね。大丈夫だよ。俺たちが道を教えてあげよう。お嬢ちゃんがもっている地図を見てもいいかい?」

(変装ってすごいのね。私だと全く気づかれてないわ)


リーダーらしき人がそばにやってきた。

「これが地図です」

「どこに行きたいんだい?」

「この当たりです。わたくしの知り合いが待っているのですけれど・・・」

お嬢様っぽくわたくしって言ってみた!


「そうか。けど残念だけど、そこにはつけないな」


リーダーらしき人が目配せをしたあとに、慣れた手つきで私の手を後ろに捻り上げた。


「きゃぁぁぁあ!」


叫ぶ私の口を別のメンバーが布で塞ぎ、さらに別のメンバーが私の体を縄でしばった。


「悪いね。俺たちときてもらう」

リーダーらしき人は、邪悪な笑みを浮かべて私を見下ろしてきた。


(おとといはいい人だと思ったのに!)


おっと、今はそれっぽく抵抗しないと。私は体をジタバタさせながら、


「んんんっ!」


「お頭。こいつは上物ですぜ。ちょっとくらい楽しんでも」

「ダメだ。今回はやっかいな獣人がいない。かぎつかれるまえに早く連れて行くぞ」


私は馬車の荷台に隠してあった大きな箱に入れられた。藁が敷いてあってフカフカだったのは助かったわね。商品だからかな?

そこで、馬車が動き出したのを感じた。


(頼むわよ。ララ)


ーーーーーーーーーーーー


正確な時間がわからないけどおそらく1〜3時間ほどして一度馬車が止まり、数分後再び進み始めた。


しばらくすると、完全に馬車が止まった。


(目的地に着いたのかしら?外の様子がわからないのは痛いわね)


そして私は箱ごと運ばれた。


「今回はやけに静かだな?」

「寝てしまったのではないですか?」

(しまった!普通の人は叫ぶのか!・・・まぁいまさら遅いか、いっか)


私が開き直ったところで、箱の蓋も開かれて、男の人に声をかけられた。


「おい!起きろ!」

「んんん!」


箱から出されたので周りを見ると、牢屋のようなところに閉じ込められた人が10人ちょっといた。男性もいるけど、子供や女性が多い。みんな諦めの混じった様子でぐったりしている。人攫いの被害者かな?


「いいか。縄は解くが、反抗したらこのムチでたっぷり調教してやるからな」


男性が脅すような口調でムチで地面を叩きながら言ってきた。

その様子を見て、ビクッと怯えた人が何人かいる。

ムチで虐待なんて、外道ね。


私が怖がりながらうなづくと、満足げな表情を浮かべた男性が私の縄と口にまかれていた布を外した。


「お前はそこに入れ」


私はうなづき、指定された牢屋に入ると、ちょうどこの部屋の扉が開いてなんか偉そうな男の人と執事っぽい人が入ってきた。


「ほう。聞いていた以上に今回は上玉だな。売れば高値がつきそうだが、」


そう言いながら、私の頬を指でなぞって顎をクイってやってきた。


「ひっ」


全身に寒気が走り、思わず本気で後ずさってしまった。


「反応もいいな。これは楽しみがいありそうだ。よし、俺の世話係にしよう」


ニタァっと笑った顔はそれはそれは気持ち悪かった。世話係とは言ってるけど・・・真っ当じゃないやつな気がする。


「ヒサノリ様。承知しました。ただいま服を用意させます」

(ヒサノリ!?領主と同じ名前ね。確かに偉そうではあるけど、顔をしらないから判断がつかないし、それにここがどこかもわからないから、たまたま名前が一緒である可能性もあるわよね)


「頼むぞ、サイ。あっちのタイプを頼む」


ヒサノリは、私の体を上から下まで見てきた。あっちのタイプって絶対碌でもなさそう・・・。

(ララー!早くきてー!!!)


ヒサノリとサイが部屋からでると、代わりにメイドらしきが人が入ってきた。

その手にある服をみて私は驚いた。


(・・・これはあれだ。いわゆるスク水ってやつだ。なんでこの世界にあるの?それより私の見た目は明らかに成人に見えないわよね・・・つまり、あのヒサノリって人は未成年に淫行して楽しむお方・・・?)


いざとなれば脱出できる自信はあるけど、さすがに精神年齢20代でスク水を着るのはきつい。私がうなっていると、メイドが値踏みするような目線をむけてきた。


「ふーん、あなたね?着替える前にその汚い体を洗ってちょうだい。湯浴みにいくわよ」

(湯浴み!?それはまずい!どうする?力技で一度脱出する?幸い魔法も使えそうだし・・・)


私がどうするか考えていると、近くで大きな音が聞こえ、メイドが叫んだ。

「何っ?」


警備兵らしき人が廊下を走って、声をあげている。


「侵入者だ!場所は裏口P!L班とC班は直ちに急行せよ!」


(ララっ!!)


私はすぐに風魔法を発動して、部屋のドアを閉めた。


「なっ!」

メイドが驚いているけど、ここで騒がれるとやっかいね。


私は水の槍を作って、メイドに話しかけた。

「命が惜しかったら騒がないでちょうだい。わかったかしら?」


メイドはコクコクと素直にうなづいたので、私が入るはずだった牢屋に入ってもらった。


牢屋に入れられていた人攫いの被害者たちも私のことを怖がってしまったようだけど、こればかりはしかたがない。

それよりも早く探そう。確か30歳くらいの人間の女性だったかしら?まだここにいればいいけど・・・・部屋を見渡すと隅にそれらしい人がいた。


「あなたがサンノさん?」

「はい」


怖がってはいるけど、芯のある目で私を見つめてきた。しっかりと受け答えができるようで、よかった。


「ララに言われて助けに来たわ」

「ララ!?あの子と知り合いなんですか!?」


この人が、ララが人攫いを追ってた理由だ。ララがこの街に来たばかりの頃、右も左もわからないで困っているとサンノさんに助けてもらっていたらしく、今回助け出したかったようだ。


「そうよ。それよりも今は脱出しましょう。他の皆さんも今がチャンスですよ。どうします?」


被害者仲間だったサンノさんが私と話す様子をみて、他のみなさんも多少警戒をといてくれた。


念の為もう一仕事しておこうかしら。


「さてと。水の槍で貫かれるのと、睡眠薬を飲んでちょっと眠るのとどっちがいいかしら?ちなみにこれは本物の睡眠薬でそれ以外の効果はないわ」


私は、右手で出した水の槍でメイドのほっぺたをツンツンしつつ、左手では毒魔法で睡眠薬を生成して、メイドに問いかけた。化学の知識がここで役に立つなんてね!


メイドは泣きながら、睡眠薬を選んだ。その様子を見ていた人攫いの被害者だった方達にはまた怖がられてしまった。サンノさんの顔も若干引き攣っている。


(えっ?これくらいなら私もかーくんにやられてたけど・・・?その時よりも優しくしたのに・・・?)


気を取り直して、私が先頭になって部屋からでると、部屋の左側の廊下には様子を見にきたらしい人攫いのグループが、部屋の右側の廊下にはララが数人の衛兵も引き連れて走ってきていた。


「ララ!」

「ユッカ!無事か!」

「うん!サンノさんもいたわ!」


ララはサンノさんを見かけるとすぐに抱きついた。

「よかった・・・!無事だったんだ!」

「なんて無茶をしているの・・・・」


サンノさんの様子は、無茶をした様子に呆れつつも嬉しそうなどこか誇らしげな雰囲気だった。


「感動の再会を邪魔させないわよ!」


私は土魔法で石のつぶてを作って、隙をついてこちらに襲い掛かろうとしていた人攫いのグループに放った。


「おい、あぶねぇな。ちっ、魔法師だったか」

「そうとも限らないわよ?」


意味深に不敵に笑ってみた。


「ユッカ!預かっていた剣というかショートソードだ!」


ララから渡された剣をみた人攫いが、

「その剣は!先日道に迷っていた旅人か?俺たちを騙したのか!」

「あなた達に言われたくはないわ。道を案内するふりをして人攫いをしていたのでしょう?奴隷自体は合法とはいえ、拉致して奴隷にするのは違法でしょう?報いを受けてもらうわ」


ララは短剣二刀流で、私は魔法と剣で人攫いに応戦した。人攫いの被害者のみなさんは街の衛兵に守ってもらっている。


相手が息を切らしてきた。隙を見て撤退しようとしているようなので、闇魔法を発動して廊下を塞いだ。


「今度は闇か!剣に火が纏わりついているし、いったい何属性切り替えられるんだ!この化け物め!」

「いたいけな乙女を化け物呼びなんて酷いわね」


化け物と言われしくしく泣くような仕草をしつつも、闇魔法で影を操って縄を作り準備を整えた。


そして、十分な溜めを作って、私は決めポーズと共に!渾身の決め台詞を放った!

「逮捕しちゃうぞ❤️」


・・・キョトンとする人攫い。隣からは冷たい目線。


「ユッカ・・・この緊張感漂う場面で何やっているんだ・・・?」

「・・・忘れてちょうだい」

(えっ?逮捕って通じないの?ほんとに?一度言ってみたかっただけなのにこんなにすべるなんて・・・)


「ごほん。それでは、あなた達を捕縛します」

ちらっと隣をみるとララがうなづいてた。捕縛は通じるのね!


捕縛をし終えた人攫いのリーダーにララが近づいていき、

「この!社会のゴミがっ!」

鉄槌だと言わんばかりに、右ストレートパンチを喰らわせていた。

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