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4:狼少女との出会い

翌朝、ユカは身支度を整え、ヨーロッパ風の街中を抜け冒険者ギルドに向かった。


「ここが冒険者ギルドね」


私の目の前には、やたらと存在感があり立派な建物が立っている。

ドアを開けて中に入り、受付のお姉さんに話しかけた。


「あのー、すいません。冒険者登録できますか?」

「あら、可愛らしい子ね。冒険者には危険もあるけど大丈夫?」

「戦闘訓練は積んでいるので大丈夫です」


受付のお姉さんはちらっと私の腰に刺した剣を確認した。新品ではなく使用感があることも認識してくれたみたいで、

「それならよかった。冒険者登録の方法は、登録料を支払って登録する場合と、登録料を免除する代わりに試験をうける場合の2パターンがあるけど、どっちにする?」


「試験を受けます!」

お金で解決なんて、自ら実力がないって言っているようなものじゃない!


「わかったわ。試験の前にこの申請書に必要事項を記入してくれる?」


私は思わず固まった。試験の前に難関が待ち受けていたなんて!会話もできるし、文字も読めるけど、文字が書けない・・・。


「お姉さん・・・すいません、私文字が書けなくて・・・」

「そうなの?気にしなくてもいいわよ、そういう人のために代筆もやっているわ」


受付のお姉さんは、ユカの振る舞いが教育をうけた子女に見えていたので、文字が書けないと言われ意外に感じた。しかし、貴族のお忍びなどでは文字が書けないていにする場合もあるため、深くは聞かずに代筆を申し出たようだ。


「よかった!それではお願いします」


私はお姉さんに代筆を頼んで、事務手続きも終わった。


「それじゃ、これから試験を受けてもらえる?試験の中身は薬草の採取ね。これが地図よ。ギルドの職員も同伴するけど、いないものとして扱ってね。道中の魔物の対処や薬草探しは自分で全部対応して。ギルド職員は本当に危ない時に助けるくらいしかしないわ」

「わかりました!」

(地図が読めるかどうかや、危機管理も試されているのかな?)


私はギルドの試験官の男性と挨拶をし、そして試験が始まった。


街の門から出てところで視線を感じたけど、人通りが多いから気のせいかな?

気を取り直して、地図を確認して薬草の採取地点に向かった。


ーーーーーーーーーー

薬草の採取はすんなりすすみ、半日ほどでギルドに戻ってきた。


「ただいま帰りましたー」

「あっユカちゃんおかえり。早かったわね」

受付のお姉さんは私に労いの言葉をかけてから、その後試験管の方を向いた。


「どうでした?」

「問題ないと思うぞ。試験は合格だ」

(よかった!)


「わかりました。ユカちゃん、冒険者の説明をするから椅子に座ってくれる?」

「はい!」


私が椅子に座ったのを確認してから受付のお姉さんが説明を始めた。


「冒険者にはランクがあります。上から、S、A、B、C、D、E、Fです。目安としては、大陸に数名の英雄レベル、実質のトップレベル冒険者、とても有能な冒険者、上位冒険者、一般的な冒険者、慣れてきた冒険者、駆け出し、というイメージです。ユカちゃんは、Fランクからのスタートです」

「ランクをあげるにはどうすればいいですか?」

「依頼を受けた実績をもとに年に一度の査定で昇級するか、一定の基準を満たしたら昇級試験を受ける方法もあります。後者の方が任意のタイミングで昇級試験を受けられるから早いし便利です」

「わかりました!」

「それで、依頼は、自分のランクと一個上のランクまでは受けられます。実力不足で自滅する冒険者を減らすための措置だと思ってください」

(それは当然ね。どこの世界にも自分の力を過信する人はいるのね)


「冒険者ギルドは情報を共有しているから、登録地がモウグリだとしても他の街のギルドでも同様に依頼は受けられます。また、冒険者カードは身分証としても使えます」


私は、わかった、とうなづいた。


「ざっとそんな感じなんだけど、何か質問はある?」

「特にないです!」

「わかったわ。これがユカちゃんの冒険者カードよ。ようこそ、冒険者へ!」


受付のお姉さんは、笑顔で冒険者カードを手渡してくれた。

これでついに私も冒険者デビュー!


「早速だけど、今日採取してくれた薬草は買いとるけどいい?」

「はい!お願いします!」

「ちょっと待っててね。ちなみに報酬は現金手渡しがいい?冒険者カードに記録する方がいい?」

「今日は現金手渡しでお願いします!」


私は報酬を受け取り、冒険者ギルドをあとにした。


「この世界で初めて稼いだお金!何に使おうかな!」


そのまま、市街地のお店がたくさん並んでいる区画に足を運んだ。カラフルな建物が並ぶ様子は、ノルウェーのベルゲンみたい。


散策していると一つの露店が目に留まった。


「このサボテン、育てるのに良さそう。けど、今は宿にとまっているのよね・・・。収納魔法もまだ覚えてないし・・・」


さらに色々と街中を物色していると、アクセサリー類が売っているお店が目に留まった。


「あっ、この紐、髪をまとめるのにちょうどいいかも。値段的にも買えるし、これにしよう!」


私は普段ポニーテールにしている。いきなり異世界に連れてこられて私物がなかったから、今もかーくんから支給された紐を使っている、やっぱり自分で買ったものを使うのもいいわね。


紐を買ってからも少しぶらぶらと街を見学した。あたりが暗くなり始めてきたので、ちょうどよさそうな人気の少ない路地裏に入った。


そして、路地裏の奥に進んでから振り返って、

「そろそろ出てきたらどう?」


私の声に反応してフードを被った小柄な人影が現れた。


「バレてたのか」

「最初は勘違いかなと思ったけどやっぱりいたのね。それで?用件は?」


腰の剣に手を添えながら、小柄な影に問いかけた。


「待って!危害を加える気はない!あんたは昨日この街にきた旅人の少女であってる?」

「・・・ええ」

「よかった!街の外で10人くらいの人間を見たのか?」

(意図がわからない以上、下手に答えない方がいいわね)


「警戒するのもわかるけど、あたしはあいつらを捕まえたいんだ」

「・・・どういうこと?」


そこで、私の目の前の人物はフードをとった。その頭には、大きな耳がついている。動物の耳のようで、とてもモフモフしていて、思わず触りたくなるほどの!


「触っていい?」

「何言ってんだ?」

「何でもないです」

「そうか」


二人のあいだにしばしの沈黙が訪れた。


「ごほん。それで、捕まえたいってどういうこと?」

「あっ、ああ。あたしは獣人のララっていうんだ。この街では狼少女とか呼ばれている・・・」


私は思わず目を見開いた。


「その様子だと知っていたのか。あたしはあいつらが人を攫うところを見ている。何人も被害者がでてる。けど、調査のために派遣されたこの街の領主の警備兵がむかうタイミングでは必ず姿を消す。だから、あいつらを見たっていうあんたに話を聞きたかった」


ララと名乗った獣人は真剣な雰囲気だった。狼少女の噂のように、人攫いのことを上部だけ風潮してつけ上がっている様子もない。


「私が見たのは、荷台つき馬車と10人くらいの人間よ。けど、本当に人攫いなら私も攫われてない?」

「あいつらは戦闘能力が無いやつをターゲットにしている。あんたがあいつらに会った時も今みたいに剣を腰に刺していなかったか?」

「・・・していたわ。そういえば、私の剣に目が止まっていたような気がする・・・」

「そうか!あいつらがどこに向かったかわかるか?」

「うーん、それはわからないわ。道を聞いてすぐに別れてしまったし・・・。けれど、しっかりとテントをはってキャンプをしていたからあまり遠くに移動していない可能性もあるかもしれないわ」

「ほんとか!」

「うん」


走り出しそうになったララを引き留めた。


「ちょっと待って!どうするつもり?」

「今からその場に行って尻尾をつかむ!」


ララがくるっと回った瞬間に、彼女の体の影に隠れていた尻尾もふわっとした。

うわぁとてもいいモフモフ・・・。

じゃなくて、


「まだ場所を教えてないのと、あなたっておそらく顔も覚えられてるわよね?警戒されない?」

「あっ・・・」

「私が囮になろうか?昨日の一瞬しか顔を見られてないし、剣を外していい感じに化粧でもすれば、絶好のカモに見えるんじゃないかな。私、奴隷にすれば高く売れるらしいし」

「・・・危ないぞ?」

「そこはあなたに助けてもらうわ」


ララは目をあけてびっくりしていた。

「あたしは、狼少女だぞ?」

「あくまで噂でしょ。今のあなたの様子は、人攫いのデマをながしてつけあげっているようには見えないわ」

「・・・本当にいいのか?」

「うん。その代わり、尻尾を触ら」

「それは嫌だ」

「・・・ごめん」

「いや、まぁちょっとくらいなら」


被害者がいる以上早めに行動したほうがいいだろう。私は断腸の思いで、尻尾は冗談ということにして、話を進めることにした。


「冗談よ。場所は私が案内できるわ。作戦の中身を詰めましょう。それと私の名前はユカよ、よろしくね」


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