27:ドワーフ族の掟と同盟
「というわけで、ここがドワーフの里じゃ」
「わかりにくいところですね・・・」
レティシアに案内された私たちは、ドワーフの里についた。
そもそも未開の地が多い南大陸スリュムで、さらに人里離れてて、起伏の激しい山間というか渓谷の中にあって、これは見つからないわね・・・。
「今から族長に会いに行くから妾についてくるのじゃ」
レティシアについていくこと数分。
「おーい、オセロ!」
「おお、レティか。俺に会いにきたのか?」
「べ、べつにお主に会いにきたわけじゃないぞ。会えて嬉しいとか思っておらんぞ。ほんとじゃからな」
「はいはい。あいかわらずだな。それにしても久しぶりだな。最近見てなかったから、魔法の実験でおっ死んだと思ってたぞ」
「肩を叩くな、痛いじゃろ。それに妾がそんなヘマするわけなかろう。それより、ほら。お主に客人じゃ」
オセロさんは、ガハッハみたいな感じでレティシアの肩を叩いていた。
あれは確かに痛そう。
「初めまして、ユカです」
「アイリスです」
「ララだ」
アイリスさんは、アヤメじゃなくてアイリスと名乗っている。ここへくる道中、レティシアにも改めて名乗って、それと何やら話し込んでいた。
「おぉん?お前さんらは誰じゃい?ここをドワーフの里と知っての狼藉か!」
えっ待って。レティシアさんへの態度と全然違う。
それに狼藉って?自己紹介しただけよ・・・?
「落ち着いてください、オセロさん」
「あぁん?ユカと言ったか?お前みたいなハースト帝国の手先に殴りかからないだけでも感謝してほしいところだぞ」
「・・・オセロさん。私はハースト帝国とは関係ありません」
「何!?本当か、レティ」
「当たり前じゃろう。お主らが、ハースト帝国とナイト王国を毛嫌いしているのは知っておる。連れてくるわけなかろう」
「そうか!それはすまないな!ガッハッハ!」
オセロさんが、バンバン私の肩を叩いてくる。痛い。
ガッハッハ、じゃない。
ララとアイリスさんからは同情の目線をもらった。
というかオセロさん単純すぎない?それともレティシアとは信頼関係ができてる?
「それで、何の用だ?」
「土の神器と土の精霊についてです。何か知っていますか?」
「ああ、神器なら憎きハースト帝国のき奴らが、ワシらの祖先を騙して奪って国宝にしているな。土の精霊は知らん!ガッハッハ!」
ガッハッハ、と笑ってるけど、土の精霊の情報はなしか。
「神器は奪われたんですか?」
「ああ!当時の族長の妻だったデズデモーナが、ハースト帝国のイアーゴっちゅう悪党に騙されて神器を面会場所に持っていったら奪われちまったらしい。それに怒った当時の族長が大暴れ。ドワーフ族は白い目を向けられ、こんな場所に隠れ住んでるっちゅうわけだ!まぁ、曽祖父と曽祖母なんだけどな!ガッハッハ!」
ガッハッハ、と笑ってるけど、割と醜聞じゃないでしょうか。
それにしても、里がこんなわかりにくい場所にあるのも理解した。それと、ドワーフ族は人より寿命が長めだから、1000年前でも曽祖父の代になるのね。
「魔力の流れがおかしくなってたりしないかしら?魔力災害の兆候はある?」
今度はアイリスさんがオセロさんに質問した。
「おお、こりゃえらいべっぴんさんじゃねぇか。乳もでけぇ」
「ごほん。それで、魔力災害の兆候はあるかしら?」
アイリスさんから圧を感じる。ちょっと怖い。
「そんな怒るなってぇ。冗談じゃねぇか。そうだな、最近地震が多いな。それと、なんとなくだが、大地が動いている?歪んでいる?感じはうけるぞ」
地殻変動とかの可能性がある?
アイリスさんが私の方を向いたので、目を合わせてうなづいた。
「わかったわ。そうしたら、土の神器を取り返しに行くわ。ドワーフ族もくるかしら?」
「ワシらはここから離れちゃいけない掟だからな」
「その掟は変えられないのかしら?いずれにせよ、魔力災害が起きたらここにも住めなくなる可能性が高いわよ?」
「それは本当か!」
オセロさんがアイリスさんの肩に両手をおいて、ゆらゆら揺さぶっている。
うわぁ・・・
「ちょっ、離して。・・・ふう。その掟は変えられないの?」
「うーむ、1000年前の掟だからな・・・」
「どうしても?」
「どうしてもだ」
「いくじなし」
アイリスさんがぼそっと呟いた。
「あぁん?」
「いくじなし!今は世界の危機なのよ!引きこもってないで、表に出なさい!」
おぉ!?アイリスさんが啖呵を切ってる!
あれ?引きこもって、の単語で少し離れたところにいたレティシアさんもなぜかダメージを受けている?
というかレティシアとララはあそこで何してるんだろう?里の観察?
「なんだと!そこまで言われちゃ黙っていられん!いいだろう。掟を変えるルールはあるにはある!やってもらおうじぇねぇか!」
「望むところよ!」
おっと!こっちがヒートアップしてる。
というか、何をするかわからないうちに受けちゃっていいの!?
アイリスさん!?
「威勢だけじゃなければいいがな!それじゃいっちょやろうか!腕相撲大会!」
・・・あれ?アイリスさんがしれっとウィンクしてきた?
もしかして、腕相撲って知ってた・・・?
そういえば、ここにくる前にレティシアとちょっと話してたっけ・・・?
も〜心配させないでよ・・・。
「全員に勝てばいいの?」
「ふんっ、口だけは達者だな。だが、さすがに全員相手は何日もかかる。こういう時のために、里の各グループを代表するやつらが決まっている。そいつらが相手をさせてもらうぜ」
「構わないわよ。かかってきなさい」
全員ではないとはいえ、何人相手にするかわからない。
アイリスさん1人で大丈夫かな?
「あの、アイリスさん。私も参加しましょうか?」
「大丈夫よ、ユカちゃん。女にはね、やらなきゃならない時があるのよ」
この言葉通り、アイリスさんはたった1人で、ドワーフの屈強な代表の皆さんをバッタバッタと倒していった。
身体強化ありとはいえ、それはお互い同じ条件のはず。
アイリスさんのパワーを再認識した瞬間だった。
「ふう。これで全員?残りは?」
最後の1人、オセロさんも見事にアイリスさんに負けていた。
「威勢だけと言って悪かった。ワシらの負けだ。ワシらもお前らと一緒に神器を取り返しにいく。同盟を結ばせてくれ」
「いいわよ。これで丸く収まったわね!」
ニコッとしたアイリスさん、有言実行でかっこいい。
すると、なんか、もじもじした様子のオセロさんが、
「アイリス、それはそれとして、なんじゃ、そう、ワシと」
「おい!オセロ!抜け駆けはずるいぞ!」
「そうだそうだ!これについては族長も何も関係ないぞ!」
その後、アイリスさんは自らが倒したドワーフ族の男性から、求婚されていた。
腕相撲の圧倒的な強さで惚れられたようだった。
一方、里の女性ドワーフからの目線が痛い。
同盟を結んだばかりなのに、大丈夫かな・・・
アイリスさんはというと、
「聖女はみんなのモノなのよね。同じ種族同士で幸せになってね」
っていって、軽くあしらっていた。




