26:ナイト王国と制服騎士団員女子学生殺人事件
ユカ、ララ、アイリスが各大陸を周り、諸々の調査などをし始めてから1年ほど経過していた。
しかし、南大陸スリュムにいるはずのドワーフの行方が掴めていなかった。
そのため、神聖公国アイギスのシスターとしてのアイリスの立場を使い、南大陸スリュムのナイト王国の国立学園に文献調査に行くことになった。
その出発の前日、ユカはいつもよりものんびりとアマノハラの温泉で過ごしていた。
「こっちの世界にきてから2年くらい経つけど、地球にいた時よりも私の体成長してない?」
地球では150センチあるかないかくらいだったけど、今すでに160センチくらいあると思う。地球の基準で正確に測れないからなんとなくだけど。
それに、
「それに、育ってるの身長だけじゃないわよね・・・?成長期だからかしら?アイリスさんの栄養満点の料理のおかげ?」
私は目線を落として自分の胸を見た。
たぶん、おそらく推測だけど、地球換算だとDくらいはあると思う。警察学校時代の同期の皆様を参考にすると。私の記憶が正しければ!
思わず触ったタイミングで、ふと視線を感じた。
視線の先には、ララがいた。目があってしまった。
「あっ、ごめん。ユッカ、あたしはあとでいいや。その、ごめん」
「ララ!違うの!」
「大丈夫だ!理解している!ユッカは元の世界だと大人だったんだろ?そういうこう、えーとその、せ、性的なことがなつかしいとか理解している!」
「待ってララ!話せばわかるわ!」
誤解だ!
彼氏いない歴=イコール年齢の私に、そういうのはない!
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「2人とも準備はいい?」
「はい」
「ああ」
昨日あのあと、私の必死の説明を聞いたララの誤解はとけた。と思う。
少なくとも、表面上はいつも通りだ。問題ない。
私とララとアイリスさんは、南大陸スリュムのナイト王国に転移した。
「アイリスさん、王都キョウドウの王立キタサワ学園でしたっけ?」
「そうよユカちゃん。また転移するわね」
「はい」
念の為、アマノハラから直接転移するのではなくて、一旦ナイト王国内の無難な場所に転移してから、キタサワ学園に転移した。
「到着したわね」
「ここに手掛かりがあればいいな、アイリス」
「そうね、ララちゃん」
私たちは王立キタサワ学園の受付にきた。
「こんにちは。神聖公国アイギスのアヤメです。事前に申請していたとおり、本日は学園内に入る許可をください」
アヤメとはアイリスさんのアイギスでの名前だった。
私も最近知ったんだけど、アイリスさんのこの世界での対外的で正式な戸籍は神聖公国アイギスのシスターなので、戸籍上の名前はアヤメになるらしい。
けれど、アイリスさん的には逆で、アイリスが本名、アヤメが偽名の感覚らしい。
「へー、神聖公国アイギスのシスターさんかい。負け犬さんが何の用だい?」
受付のおばさん態度悪いわね!
教会のシスターに比べて、神聖公国アイギスのシスターは立場が低いとは聞いていたけど、負け犬って!
「少々調べ物を」
「そうかい。まぁその弱い頭でもせいぜい頑張って使いなさい」
受付のおばさん態度悪いわね!!!
受付を通過して少し歩いたところで、
「アイリスさん、その大丈夫ですか?」
「うん?ユカちゃんが心配してくれたから元気になったわ〜」
「・・・抱きつこうとしないでください」
「ララちゃんみたいなこと言わないで・・・?」
「大丈夫そうでよかったです」
「実際大丈夫よ。あの受付の人は教会と協力関係にあるナイト王国の権力に縋っているだけでしょ。虎の威を借る狐の鳴き声はまともに相手するつもりになれないわ」
私たちが図書館に向かっていると、近くからガラスが割れるような大きい音が聞こえた。
パリン!
私とララとアイリスさんは目を合わせて、音がした方向に走って向かった。
すると、資料庫アズマと書かれた標識がかけられた部屋の前で、女性司書らしき人と、騎士のかっこうをした人が話していた。
「学生が死んでいる、通報してください」
「は、はい。わかりました!」
騎士が女性司書にそう命令を出している。
そこにアイリスさんが、
「すいません通してください。私は神聖公国アイギスのシスターです。回復魔法も使えますし、その女子生徒を診せてください」
アイリスさんが、倒れている女子生徒の診察をしはじめた。
けど、すぐにアイリスさんが私の方を見た。
あれ診察は?
アイリスさんは何か訴えかけているようだった。
えーと、騎士?
女性司書?
意識を逸らして欲しいってこと?
「騎士様、司書様。何が起こったのですか」
「えっと、その、ガラスの割れる音が聞こえたので、様子を見に来たら、資料庫アズマで倒れている女子生徒と、こちらの騎士様がいました」
司書さんはちょっと動揺しながらも答えてくれた。
司書さんの言葉をうけて、私は騎士の方を向いた。
「ということは、騎士様が第一発見者ですか?どういう経緯ですか?」
「そういうことになりますね。私は騎士を務めているマーツヤマと申します。巡回中に、こちらの部屋で女子生徒が倒れているのが見えたので、急いで駆けつけました。まさか殺されていたとは」
殺されていた?さっきは死んでいる、って言ってたけど・・・?
ちょうどそこで、アイリスさんが会話に入ってきた。
「学生証をみるに、ユーコーさんという方です。首に跡がありますし、おそらく絞殺でしょう。彼女の服装が乱れていることから、いくらか抵抗したようですね。犯人には被害者の血がついているかもしれません」
「シスターさん、そうですか。では、私は急いで一度騎士団に戻ります」
マーツヤマさんは早急にその場から去った。
「私たちは他の人たちを呼んできます。部外者がこの場面に責任者として残るのも気が引けるので、すいませんが少し待っていてくれませんか?」
「は、はい」
アイリスさんが司書さんにそう伝え、司書さんを残して、私たちは他の職員を呼んできた。
そろそろ現場に到着しそうなところで、
「きゃー!!」
さっきの司書さんの声!?
急いで戻ると、
「あ、あ、あ、みなさん。死体が、死体が・・・・!」
「どうしましたか?ゆっくり深呼吸してください」
私が司書さんを落ち着かせていると、アイリスさんは魔力を探っている?
それと、ララに頼んで匂いを探っている?
「すーはーすーはー」
「落ち着きましたか?」
「はい」
「どうしたんですか?」
「私がその、気分が悪くなってお手洗いにいっている間に、その、死体が消えました」
「えっ!?」
改めて資料庫アズマの中をみると、確かに死体がない。
呼んできた職員が、司書さんに。
「タチの悪い悪戯か?いい歳してかまってほしかったのか?」
「ち、違います!騎士団のマーツヤマ様も確かに死亡を確認しました!・・・そうだ!騎士団が迅速に対応して、移動させたのかもしれません!騎士団に問い合わせましょう!」
職員たちがバタバタしはじめところで、アイリスさんが私の手をひいた。
「ユカちゃん、こっちよ」
アイリスさんは魔力を追っているのか迷いなく歩き進み、ララも匂いを追ってるのか迷いなく進んでいる。現状をわかってないのは私だけかもしれない。
学園の敷地内から出て、近くの林にきた。
そして、そこには長身で美人の女の人が立っている。モデルみたいね。
・・・あれ?服装は違うし、赤目だけどさっきの女子生徒だ。
どういうことなんだろう?
「おや、見つかってしまったようじゃな」
「本気で隠れる気だったら、私の魔法のマーキングを振り切ってたと思うけど?気付いてたんでしょ?」
女生徒とアイリスさんが話している。
アイリスさんは死んだふりだと気付いていた?
それで、意識を逸らすように私に訴えてきた?
それにしても、改めて向き合うと、この女子生徒の魔力は何か人というよりも魔族に近いような・・・?
「私の名前はアヤメよ。あなたは?」
「妾はレティシアじゃ」
「見たところ、ヒト族じゃないわよね?」
「おお!そこまでわかるとは驚きよのう。その通り、妾は吸血鬼とセイレーンのハーフじゃ」
「えっ?吸血鬼とセイレーンのハーフ?魔族っぽい魔力だなとは思ったけど」
私は思わず聞いてしまった。
「何を驚いておる。お主もヒト族と魔族のハーフであろう?妾と似たような、混ざったような魔力を感じるぞ」
えっ?ヒト族だけど魔王だから?
「私は普通にヒト族よ?魔族の魔力は使えるかもしれないけど・・・」
「なるほどのう・・・?そういうこともあるのじゃな・・・?」
「それで、あなたは何していたの?」
「あの学園にある貴重な魔法書を読みたかったんじゃ。じゃが、学生じゃないと入れないらしかったからのう。学生服とやらをきて、潜り込んだんじゃ!」
そんな、胸を張って言うことなのかしら・・・?
「それで、さっきは何してたの?」
「それがのう、何回か学園に潜り込むうちにさっきの騎士の小僧が妾の美貌のとりこになってしまったようじゃ。それであの密室で襲われた、ということじゃな」
「えっ!あの騎士が!」
「そうじゃそうじゃ、力づくで乱暴してきおった。魔法で吹き飛ばそうと思ったところじゃった」
「けど、そこであの司書さんがきたから死んだふりに切り替えたってところかしら?」
アイリスさんが会話に入ってきた。診察したから察していたのね。
「そういうところじゃな。して、そなた達は何しにきたのじゃ?」
「さっきの条件覚えてる?」
「覚えているとも。あの場で死んだふりを見逃す代わりにそなたらを手伝えってやつじゃろ?」
そんな話してたの?もしかして、私があの騎士と司書さんと話している間に?
「ええ。間近でみたときにあなたがあなたの魔力が珍しかったのと、ヒト族の意匠じゃない珍しいネックレスをしていたから、もしかしたら知っているかもしれないと思ったのよ」
「何をじゃ?」
「ドワーフの居場所を知らないかしら?」
「おお、知っておるぞ。お主の予想通りこのネックレスはドワーフの作じゃ。じゃが、ハースト帝国やナイト王国の連中に教えてやるつもりはない。そなたらが違うと証明してほしいものよのう」
私とアイリスさんは目を見合わせて。
「私は魔王のユカよ。さっきあなたが私の魔力が混じっていると感じたのは、ヒト族だけど魔王だからだと思うわ」
私は、闇魔法をてのひらの上に集めた。
「そして、私は本物の聖魔法の使い手よ」
アイリスさんは聖魔法を見せていた。
「なんと!!!・・・ふむ、確かにハースト帝国のあの巫女のただの光魔法とは違うのう。わかった、そなたらをドワーフのもとに案内しよう。ついでにそなたらの魔法を妾に研究させてくれまいか?」
「「後者はお断りします」」




