24:アマノハラで報告会
アマノハラに帰ってきて、お互いの出張報告を行うためにアイリスさんが私とララの家に来ている。
今は台所でつまみの準備をしていた。
「2人とも、キュウリがつけあがったわよ〜」
「キュウリがつけあがる?」
「あれ?キュウリの漬物ができあがったわよ」
「あっなるほど!つけあがるって調子に乗るってたぐいの意味だからちょっとびっくりしちゃいました」
「そうだったの。気をつけるわ」
私とアイリスさんはたまにさっきみたいな会話をすることがある。
予言は正確に伝わっているみたいだけど、こういうところはちょくちょく変な感じに伝わっていて、ちょっと面白い。
「さて、お茶も用意したし、情報共有しましょうか」
「はい」
「先に私とララちゃんの方なんだけど、とりあえず竜人族は見つけたわ」
「そうなんですか!すごいですね!」
「けど・・・」
「けど、あたしたちの協力の申し出は断れた。なんでも『誇り高き我ら竜人は人と獣の助けなぞ必要としておらん』とか言ってたぞ。神器も取り返せないくせに口先だけの傲慢なやつらだ」
ちょっとララが不貞腐れている。
言葉以上に色々あったような気がする。
「まぁまぁ、ララちゃん落ち着いて。立派なのは住居だけで、実力は模擬戦で”わからせてあげた”からいいじゃない?」
うわぁ、アイリスさんの笑顔が怖い。深くきくのはやめよう。
それにしても向こうでも模擬戦やってたのね。
・・・たぶんこちらから仕掛けたんだと思うけど。
・・・私も同じようなものかしら。
「そ、そうだったんですね。火の精霊や神器はどうですか?」
「神器はクイーン王国にあるようだけど、火の精霊は情報なしね」
「ああ、あの竜人たちも口だけで何も知らなかった」
その後、食べ物とか世界最高峰の山々とか、温泉の話になった。
西大陸ムスベルには、世界最高峰の山脈があり、火山もある。温泉も色々とあったようだ。
ララも温泉にハマってるようで、微笑ましい。
「それで、ユッカの方はどうだった?魔王領の東大陸に行ってたんだろ?」
「まず、かーくんには会えなかったわ。色々と聞きたいことがあったのに残念ね。飛行魔法で探索してたら、廃城を見つけたわ。目ぼしいものはなかったけど、かつての魔王城だったのかしら?」
「そうか。闇の精霊と神器はどうだった?」
「そっちは収穫なしね。それにしても闇の神器ってあるのかしら?ウンディーネ曰く、私たちが神器と呼んでいる道具は、建国時のハースト帝国が精霊を封印した道具である可能性が高いのよね?魔王領は結局占領されてないから、闇の精霊はどうなったんだろう・・・」
「それに関してはおいおい調べていきましょう。ユカちゃん、他には何かあった?」
私はちょっとドキッとした。
他にもありました。あの集落とか、あの集落とか。
なんて言うの?集落のトップを倒して、ボスになって帰ってきましたって?
力で従わせるって魔王みたいじゃない?
・・・いや私は魔王か。いいのか。
・・・いいの?
「アイリスさん、ええと、魔族の集落がありました」
「そうなんだ!魔王様として振る舞ったの?」
「ええと、魔王とは名乗ったんですけど、信じてもらえませんでした。それで、その、力試しになって勝ったら、現地の魔族の皆さんと仲良くなりました!」
仲良くなったのは事実です!ほんとに!
「魔族を配下にして軍勢とか作らなかったのか?ユッカの故郷の魔王ってそういうものなんだろう?」
「ララ、私の故郷の魔王はあくまで創作よ。私は軍勢は作ってないけど・・・」
「けど?」
これは、言うしかない・・・?
「集落のボスになって、右腕ができました」
「「ボス」」
「違うの!私からそう呼んで、って言ったわけじゃないの!流れで仕方なく!勝手に!」
「ユカちゃん、魔族の集落の話をちょっと聞きたいわ」
からかわれるのかな?と思ってたけど、あの集落でのことを話すと、ララとアイリスさんは興味深そうに聞いてくれた。
魔族とは交流がなかったらしいから、目新しかったのかな?
「私も行ってみたいわ」
「あたしも!」
「いいですよ。今度行きましょう」
その後は、ご飯を食べたり、のんびりしたりしていると夜になったので、温泉に行くことにした。
魔族の集落はシャワーはあったけど温泉はなかったから、数日ぶりにゆったりできる。本格的に魔王として活動する時がきたら、温泉文化は普及させたい。
私が温泉からあがると、アイリスさんが火と風の複合魔法で温風を生み出してララの髪を乾かしていた。ドライヤーみたいね。
アイリスさんってパワータイプだけど、ああいう繊細なコントロールが求められる魔法も使えるのよね。
ララも気持ちよさそうにしてて、毛繕いされてる犬みたいだった。
2人も打ち解けたものよねぇと思っていると、しれっとアイリスさんの手が動いた。
そして、ララのしっぽの付け根あたりを触った。
「ひゃん!」
ララは飛び上がってアイリスさんに距離をとって、
「ぐるるるる」
唸って狼になっていた。
「アイリスさん、何してるんですか・・・」
「あっ、ユカちゃん。フカフカしてるし、ちょっと触ってみたかったのよ。いけると思ったんだけど・・・」
「逆になんでいけると思ったんですか・・・」
「お肉あげたら機嫌治るかしら?」
「たぶんそれで大丈夫だと思いますけど・・・」
(大丈夫だとは思うけど、犬みたいね・・・)
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その日の夜、ポカポカ温まった体で布団でぬくぬくしていたら寝てしまったようだ。
「ユカ」
「何よぉ」
「おい、ユカ」
「何よ・・・ってかーくん?それにここは?」
なんか霧が漂っている。
あれ、私アマノハラにいたわよね・・・?
「お前の夢の中だ」
「えっそうなの?」
かーくんって神の使いだし、こういうこともできるのね。
「アブルヘイムのあの家にきていたようだが相手をできず悪かったな」
「いいわよ。何かと忙しいんでしょ?」
「まぁな。お前に伝えたいことがある」
「何?」
「お前の日本での警察の上司、さすがに無能過ぎて警察クビになるらしいぞ」
「依願退職を求められるのかしら?国家権力と税金を使うのに見合った能力も持ってなかったし」
「詳しい手続きは知らないが、かなりの損害を出していたようだから、客観的にみればクビになって当然だろう。少し気になって調べたが、上部だけの警察ごっこあそびしかできない無様で無能なポンコツだな」
「・・・否定はできないわね」
「そういえば、お前の上司がTPOとかなんとか言われていたが、とってもポンコツおバカちゃんの略か?」
「違うわよ。Time、Place、OccasionでTPO。場面に応じて適切な言動をしましょう、って意味ね。あの人、能力もだったけど警察にそぐわない言動が多かったのよ。それにしても、とってもポンコツおバカちゃん、って微妙にそれっぽいのなんなの?」
「我のセンスがなせる技だ」
「そう」
「ところで、警察と書いてポンコツと読むのか?」
「・・・一部の人達だけよ」
「しかし、あの無能を放置していたんだろ?ポリスのポはポンコツのポなのか?」
「・・・一部の人達だけよ」
「けいさつのつは、ポンコツのツなのか?」
「・・・一部の人達だけよ」
「ほんとか?目が泳いでいるぞ。現場にいたお前の本心はどうなんだ?揉み消しとか不祥事だらけだろう?権力に縋ってるだけの税金泥棒じゃないのか?もはや公害だろう」
「・・・一部の人達だけよ。けど、公害っていう視点は新しいわ。それよりよく税金泥棒なんて言葉知ってるわね。言葉遊びも慣れてるし」
「成長しないカラスはただのカラスだ。成長したところをみせてやろう!!」
こうして、かーくんのかーくんによるかーくんのための茶番が始まった。
「むのえもん〜」
「なんだいむのた君」
(ちょっとかーくん!そういう冗談は!)
「権力を使って、なんか道具出してよ〜」
「他人に頼ってばかりじゃないか」
「でも僕、自分自身だと何もできないよ〜むのえもん〜」
「もう、むのた君はしょうがないな〜」
「むのえもん!」
「はい、全自動矛盾製造機〜!」
「これは?」
「これは税金を入れると自動で矛盾を作りまくる装置だ!」
「すご~い!結局何も生み出してないところがいいね!」
「むのうた君にしては理解してるじゃないか。どうしたんだい?」
「なぜかこれはわかったんだ!」
一人二役をやっていたかーくんはここで、私の方を向いてドヤ顔をしてきた。
「どうだ!お前の警察の女上司に見立てたぞ!成長しないカラスはただのカラスだからな!」
・・・気になるところはあるけれど、とりあえず前にカラス呼びしたら怒ってなかったっけ?
まぁいっか。
「それと、高い税金を無駄にするわ、成果も出せずに権力を見せびらかすだけの恥晒し的な存在だろう?こちらの世界のハースト帝国と似ているからな。自然と気になってしまった。一度解体して権力に依存している無能をクビにした方がいいんじゃないか?我が税金泥棒の本拠地を爆破してこようか?」
「・・・そういうのは一部の人達だけだから、爆破はやめてあげて。とはいえ、権力をかさに吠えることしかできない人もいるし、あの女上司みたいに他の警察官と比べて劣っていることを自覚しても権力にしがみついている人もいるのも事実だし、税金を納めている国民をなめてバカにしてるとは思うけど、ちゃんとしてる人たちはちゃんとしてるわ」
「そうか」
「そうそう」
「未練はあるか?」
「それはないわね。優秀な人はいたけど、今思えば私はお役所仕事向いてなかったかも。お役所仕事でどんぐりの背比べをするよりかは、能力をしっかり活かせる今の方が向いてるかも?」
「お役所仕事向いてないのは、魔王として大丈夫か?国のトップだぞ」
「・・・宰相を置けば私が対応しなくても・・・」
「それもそうか」
「うん。そうだ、私にも魔族の右腕ができてね、」
「じゃ我は行く」
「うん。・・・じゃなくて!私も聞きたことが!!」
そこで私は目が醒めた。
「あのカラス!本当に行った!聞きたいことがあるのに!よく考えればあのポンコツ上司ってどうでもいい情報じゃない!何しにきたの!?」
外を見るとまだ暗かったので、私は布団に戻ってふて寝した。
かーくんがユカの夢の現れたのは、「未練はあるか?」の言葉通り日本からいきなり連れてきたことを多少は気にかけていたという節がある。
それで、比較的インパクトのあるユカ周りの情報は伝えようとしたという親切心からだったが、ユカ本人がそれに気付くことはなかった。




