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16:アマノハラをぷらぷら①

ゴーン ゴーン ゴーン


鐘の音とともに私は目を覚ました。

アマノハラには時計台があり、1日に数回、定刻になると鐘を鳴らす。


寝癖を治してから自分の部屋からでると、ちょうどララも部屋からでてきた。


「ララ、おはよう」

「おはよう、ユッカ」


居間にある冷蔵庫の魔道具の扉を開くと、アイリスさんが作り置きしてくれた朝ごはん、白米と味噌汁とサバの塩焼きがあった。日本っぽくて嬉しいことこの上ない!


美味しい朝ごはんを食べ終えた後に、今日のアマノハラツアーの為に私たちは身支度をした。


「・・・アイリスが起きてこないな」

「そうね。まだ寝てるのかしら」

「起こしに行くか」

「そうしましょう」


アイリスさんは結局、昨晩この家に泊まった。

ララの強い希望により、客室で1人で寝ている。私としても、あの温泉のあとで同じ部屋で寝るのはいけない扉を開いてしまいそうで、ララの案を強く支持した。


私は客室の前に着くとノックして、

「アイリスさーん、おはようございますー」

「・・・反応がないな。しょうがない入るか」

「そうね」


私たちが客室に入ると、肩紐が外れかけて服も脱げかけているアイリスさんが布団でスヤスヤ寝ている。


「これ以上は飲めないよ〜」


前言撤回。すやすやじゃない。なんかロクでもなさそうな寝言を言ってる。


私とララは目を合わせると、同時に手を叩いた。


パンっ!


「えっ、何〜?」


今の音でアイリスさんは目を覚ましたようだけど、明らかに寝ぼけている。


ララが冷めた目で、

「朝だ。起きろ」


「・・・あら?もうそんな時間?ごめんね〜準備するわ」


先ほどよりは目が覚めた様子のアイリスさんをおいて、私とララは居間に戻った。


「アイリスさんって、料理もできるし掃除もできるし、色々な手続きもすんなり済ませるし、戦闘もすごいのに、朝はあんな感じなのね」

「そうだな。アイダホの時は朝もしっかりしてたけど、この里に着いて気が抜けたんじゃないか。まぁたまにはそういう時もあるだろう」

「それもそうね」


私とララがお茶を飲みながら待っていると支度を済ませたアイリスさんがやってきた。

ちなみに、私は料理の腕は全く成長しないけど、お茶は淹れられる。


「ごめんね、2人とも」

「いえいえ、構いませんよ」

「そうだな。そこまで気にしてない」

「ありがとう〜!」


私とララが席を立つと、アイリスさんが張り切って、

「それでは、アマノハラツアー後半に出発しましょう!」



私たちは、田んぼや畑、酪農を行っている草原、山林の中にあった筋トレコースなどをひととおり見て、お昼には見晴らしの良い場所でピクニックをしてから、修練場に向かった。


「じゃーん!ここがこの里の修練場よ!」

両手を広げたアイリスさんの後ろには、広い広場が2つある。


「それぞれの広場は、主に魔法の修行、主に戦闘の修行で使うわ!」


そういって、アイリスさんは魔法を発動して、魔法の修行用の広場の方に放った。


「こんな感じで、この修練場は自動で修復するの!」


アイリスさんの魔法が当たって、抉れた?・・・いや消滅した?地面が、徐々に元に戻ってきている。


「えっ!すごいですね!」

「そうでしょう!」


「ちなみに、今のアイリスさんの魔法ってなんですか?地面を抉ったというよりも消滅したように感じたんですけど、光ってたし光魔法ですか?」

「さすが魔王様!今のは光魔法の上位互換の聖魔法です!」


「聖魔法!?ほんとに使えたんだな・・・」

「ララちゃん疑ってたの?今の聖魔法は対象を消滅させるものね。光魔法じゃできないわよ。もうっ!ぷんぷん!」

「そういうのいいから・・・。けど、確かに、光魔法で消滅させるのは聞かないな」


「アイリスさん、消滅って防げるんですか?聖魔法ってそんなに高威力なんですか?」


もっとこう、聖女っぽくサポートとか治癒とかそっち系だと思ってたわ。


「かなり丈夫な保護魔法をかけた防具や堅牢な結界なら防げるわ。聖魔法の威力はモノによるわね。結界張ったり、サポートしたり、欠損部位の再生や、場合によっては蘇生もできるわね」

「そんなことまで?かなりすごいですね」

「そうでしょう!」


思案顔だったララが真面目な雰囲気でアイリスさんに聞いた。


「アイリス。聖魔法がかなり貴重だとわかった。教会の巫女が聖魔法が使えないとすると、今の世界でこの魔法が使えるのは何人くらいいるんだ?狙われないか?」

「・・・おそらく私1人ね。私が生まれる前とかには、この里にも聖女の力を持った人が何人かいたらしいけど、私が最後の1人だから」


アイリスさんは、一瞬寂しげな雰囲気を醸し出したと思ったけど、すぐにもとの様子に戻った。

ララが何か言おうと口を開く前に、


「そういうわけで、外では光魔法を使っています。あとはこれね!」


アイリスさんは、今度は大きな岩を作って広場に打ち出した。


ズドン!!!


「地面が揺れたぞ!」

「それはそうよ、ララちゃん。それほどの質量にしたもの」


・・・アイリスさんって、身体強化で肉弾戦したり、今のも質量で押し切る系の魔法だったり、結構パワー系よね・・・?


「アイリスさんって、パワー至上主義なんですか?素手で肉弾戦も好んでますし」

「あら?パワーってシンプルでよくない?」

「それは、その、そうですけど」


私は思わず苦笑いをしてしまったけど、アイリスさんって繊細な魔法操作もできるわよね?料理のときの火加減や、家の掃除を風魔法とかでしたときもそうだったし。

世界唯一の聖女ってすごい能力もちなのかもしれない。


「でしょうでしょう!それに素手だけじゃないわ」


アイリスさんがふと自身のスカートを触ったと思ったら、次の瞬間には手にナイフを持っていた。


「いざとなれば隠しナイフもあるのよ」


「アイリスさんって、器用ですよね。魔法も体術の能力も本物で世界トップレベルでしょうし、私もはやくその域に達して、対等に肩を並べたいです」


アイリスさんは、私の発言を聞いて驚いたような嬉しそうな表情をしたと思ったら、すぐにもとに戻って、


「魔王様に遅れをとらないように頑張るわね!まぁ、私の紹介はこれくらいにして、説明に戻りましょう。次はこれ、昨日も話した半自動ゴーレム製造機よ!」


私たちの目の前には、なんか機械っぽいのがある。画面のようなものが付いた箱みたいなやつと、その箱から線で繋がっている魔法陣のようなものがあった。


「この画面で諸々設定できて、魔力を込めるとそこの魔法陣にゴーレムが出来上がるわ。やってみる?」


ララが興味津々の様子で観察している。


「これ、いつからあるんだ?」


「里ができた時かららしいわ。勇者様のアイディアをもとに、ムニン様とフギン様が作ったらしいの。状態保存の魔法もかかっててほとんど壊れず、すごいわよね」


かーくんが作ったのなら、確かにそれくらいすごいことになりそう。けど、勇者のアイディアというのがひっかかる。


「アイリスさん、勇者のアイディアですか?」

「そうらしいわ。なんかロボット?みたいなことを言ってたらしいの」


ロボット・・・。勇者が召喚されたのって、この世界の1000年前よね?


「アイリスさん。確認なんですけど勇者が召喚されたのは、だいたい1000年前ですよね?」

「正確には997年前だけど、どうしたの?」

「あのですね、その頃の地球は、近代化してなくて、ロボットはありません。時間軸が合わないです」

「えっ、そうなの?」

「侘び寂びの時のスプーンのことも引っかかっていたんですけど、スプーンを曲げるのが日本で流行ったのは、私が来た時代からみると過去ではあるんですけど、数十年程度なんです」


今は触れないけど、1000年前の平安時代にはマイクロビキニもグラビアもなかったと思う。たぶん。


私とアイリスさんが考えていると、ララが

「考えても答えが出ないタイプじゃないか?」

「・・・それもそうね。かーくんに会ったら聞いてみるわ」

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