11:怪しいお姉さん再び
「ユッカ、今日はどうする?」
「今日は家にいようかしら」
「まだうろついているかもしれないからな」
怪しいお姉さんに遭遇した昨日は、冒険者ギルドへの魔物討伐の完了報告をララに任せて私は先に家に帰ってきた。あの怪しいお姉さんは、冒険者ギルドの近くで待ち伏せしていたようで、この判断は正解だったと思う。町の人たちも私たちの家の場所を教えなかったようでありがたい。
そういうわけで、今日は特に予定もないので、家にいることにした。
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私とララが家でのんびりしていると、町中に緊急を告げる鐘が鳴り響いた。
カンカンカーン カンカンカーン カンカンカーン
「ユッカ!」
「緊急事態!?」
「このパターンは襲撃だ!」
「わかった!」
私が爆発魔法の講義をしている一方で、ララは戦闘系の取り組みをしていた。この緊急時の対応もその一環だった。
急いで私とララは武器を手にとり、家から飛び出した。
町の入り口の方では、すでに武装集団と自警団が戦っていた。
「押されているな」
「そうみたいね」
「敵の装備が整っている。組織的犯行かもしれない」
「それはまずいわね。どうする?」
「二手にわかれよう。右手側を頼む」
「わかったわ」
私が武装集団との戦闘に加わると、敵から、
「おいおい、こんなチビまで駆り出すのか?寂れた町だけあるな。ここはおままごとじゃないんでちゅよー?理解してまちゅかー?」
「あーら、上部だけの見た目でしか判断出来ないなんて、おじさんもしかして口先だけのタイプ?」
「安い挑発でちゅねー。虚勢をはるだけで精一杯でちゅかーー?」
「なら、試してみなさい」
私は冷静に敵との戦闘を開始した。
「あら?あなたの攻撃、遅いわね」
「くそっ!」
(これくらいなら全日本学生剣道大会の出場者の方が強かったわよ)
「あら?余裕がなくなってきたわね?」
「うるせぇ!チビが!」
「あら?口先だけで虚勢をはるので精一杯なのね。かわいそうに」
そして、私は剣と魔法で、ほとんどの敵を倒し、無力化した。
さっきの口先だけのおじさんが他のメンバーの指示をだす役割を担う偉そうな立場ぽかったので、襲撃の目的を聞き出すことにした。
「口先だけのおじさん。目的は何?」
「ハンッ!いうかよ!」
パチン。
ドンッ!
指をならして爆発魔法を発動し、敵が使っていた武器を破壊してから、地べたに寝転んでいる口先だけのおじさんに声をかけた。
「これであなたの武器はもうないわ。さーて、次はどこを爆発させようかしら?」
「・・・」
パチン。
ボンッ!
「いでっ!」
「今はおじさんの腰のポーチを爆発させたけど、次はどこにしようかしら?」
手心は加えたわよ。爆発に指向性をもたせて体に当たらないようにしたのに、”いたい”だなんてね。
「ひっ!」
パチン。
ドンッ。
口先だけおじさんの周りの地面を爆発させてみた。
「ひえっ!言う!言うから!」
「それはよかった。次は手か足を狙おうとしたの」
意図的に口先だけおじさんの手と足を見ると、さらに怯えた様子をした。
「それで?」
「最近この町で銅がとれるらしいと聞きつけてきたんだ!町を乗っ取って、利益を横取りしようとした!」
パチン。
ドカンッ。
「うわぁぁぁぁぁ!言っただろうが!」
思わず、さらに地面を爆発させてしまったわ。健全に自らの努力で経済活動をしている他の人に不利益を被らせようとしていたってこと?
「ごめんなさい。つい。あなた達って、経済活動をしている第三者の足を引っ張るのが生き甲斐なのかと思うと、つい、魔法が発動してしまったわ」
第三者の足を引っ張ることしかできない口先だけおじさんを、軽蔑を込めた目で見下ろした時だった。
「おいおい、これはどういう状況だ?おっさんたち無様に這いつくばっているじゃねぇか。廃れた町ひとつ落とせない無能だったのか?」
私の目線の先には、細マッチョくらいの若めの男性がたっていた。
「あなたは?この口先だけおじさんの仲間?」
「口先だけ、って。的確な表現だな。こいつら威張り散らすだけで実力は大したことはないもんな。俺もこれからその表現使わせてもらおうかな」
「・・・」
「おっと、悪い。質問に答えてなかったな。仲間ではないが、協力関係にはある。口先だけとはいえ、一応人間だから頭数を揃えたい時とか利用方法はあるんだ」
その男性は、剣を抜きながら、続けた。
「そう言うわけだ。お嬢ちゃんには悪いが、使えないとはいえ、駒は駒だ。取り返させてもらう」
ちらっとララの方を見ると、向こうも向こうで敵側の援軍がきたみたいだった。
「あなた、口先だけおじさん達とは違って強そうね」
「あ、わかっちゃう?」
お互いに身体強化をかけて、戦闘を始めた。
(やっぱりこの人強いわね!)
相手の攻撃を躱して、それに合わせて攻撃をしかけるも避けられた。
(本当にあの口先だけの仲間?全日本学生剣道大会でもなかなかお目にかかれない強さ!)
相手の攻撃の合間にカウンターを仕掛けても、見事に避けられる。日本の時もそうだったけど、私は身長が小さく攻撃にパワーがでにくい。だから、カウンターメインで戦うスタイルなんだけど、この人カウンターを仕掛けられるのを込みで攻撃してきている。初見のはずなのになんて機転がきく!
口先だけじゃない相手だし、ちょっと楽しくなってきちゃったけど、町のことがあるからそうもいってられないわね。
そして、魔法も併用しようとした時だった。
「お嬢ちゃんの剣技ってやけに綺麗だな。悪い、あまり長引かせられないんだ」
唐突に、相手が足を振り上げた。
「いたっ!」
目に砂利がはいった。足を振り上げたタイミングで砂利を蹴り上げてきていたなんて!
(それよりもまずいわ!視界が奪われた)
「使えない駒とはいえ、殺さず捕縛にしてくれた礼に、致命傷にならないよう加減はする」
私は攻撃に備えて急いで結界を展開しようとしたところで、
ドンッという地面の振動と共に
「この子から離れなさい!」
と、女の人の声が聞こえた。
「おっ、あぶねー。グーパンしただけで地面が抉れてるじゃん。お姉さん、見た目に似合わずパワータイプか」
「褒めてくれて嬉しいわ」
「いや、褒めてはないが。・・・向こうも雲行きが怪しいか」
「撤退すれば?」
「そうだな。その少女のことを気に掛けながらも俺に対して全く隙がない。普通に戦っても負けそうだ」
「あら、素直ね。逃げるなら追わないわ」
「自分の能力を過信してつけ上がらない主義なんでな。それじゃお言葉に甘えさせてもらう」
男の人の気配が消えたので、私は展開していた結界を消して、水魔法で目を洗い改めて目を開いた。
「大丈夫?怪我してない?」
声の主は、昨日の不審者的なお姉さんだった。
「えっ!?」
助けてくれたのは嬉しいけど、私は思わず距離をとった。
それをみたお姉さんは苦笑いをしている。
「昨日はごめんなさいね。抱きつかないから大丈夫よ。それと、向こうも撃退できたみたいね」
ホッとした様子をしたお姉さんの視線の先を見ると、ララ達も襲撃者を撃退していた。
「私はアイリスよ。神聖公国アイギスのシスターです」
「私はユカです。シスターさんでしたか。これは失礼しました」
(神聖公国アイギスのシスター!?教会ではなくてアイギスを名乗ったのも気になるけど、なんでこんな辺境に?)
「いえ、その、私の方こそ迷惑かけてごめんね。少し話をしたいのだけど、いいかしら?」




