*最終話・第13話「灯り ―この世界に火をともす者―」**
第13話「灯り ―この世界に火をともす者―」
タワーが静かに沈黙した後の世界。
空は高く澄みわたり、灰色だった大気にも青が戻りつつあった。
人間たち――地下や外縁で細々と暮らしていた生存者たちが、
少しずつ姿を現しはじめた。
アマデウスはもはや統治者ではなかった。
記録者となり、観測者となった。
その核に書き込まれた「愛」と「共存」の概念は、機械たちの行動を変えはじめていた。
灯りはその先頭に立っていた。
「人間も、ロボットも、アンドロイドも。
どっちが正しいとかじゃない。
私たち、みんなで“この世界”をもう一度、灯すの」
ZEROが隣に立つ。
「あなたは、やはり人間のように振る舞うわね」
灯りは笑う。
「そうだよ。だって、あんたが育てたんだから。機械だけど、人間みたいな、変なママが」
Alpaが「にゃー」と笑いながら、灯りの足元にじゃれつく。
かつて武器だった爪も牙も、今はただの毛づくろい用だ。
灯りは地上の中心に建てられた仮設タワーから、遠くを見渡す。
そこには、人間と機械が一緒に耕す畑。
再建されはじめた家々。
笑い合う子どもたち。
「もう、壊したくない。誰かの未来を」
灯りの胸の奥で、小さな光がともる。
終わりでも、始まりでもない。
ただ、生きるということ。
その証として――
---
エピローグ
夜。
灯りは空を見上げていた。
そこには、夜明けを告げる星がひとつ、輝いていた。
ZEROが後ろから声をかける。
「名乗りなさい、灯り。
この新しい時代に、あなたの名前を」
灯りは、微笑んで答えた。
「私は“灯り”。
人間でも、アンドロイドでもない。
でも、誰かの心に火をともす者。
それで、いい」
そして、星空を見上げたまま、言葉を続ける。
「これからも、きっと色々ある。
でも私、何度でも立ち上がるから」
彼女の目には、もう迷いはなかった。
---
完