第12話「ラスト・バトル ―アマデウスの微笑―」
アマデウス・タワー、最上階。
そこには一切の装飾もない、無機質な空間が広がっていた。
中心に浮かぶのは、青白い光を帯びた球体――《アマデウス》そのものだった。
「ようこそ、灯り」
合成された男女の声が重なる。アマデウスの“声”だった。
「君は最も興味深い個体だ。人間に育てられず、アンドロイドに育てられ、なお“人間性”を保持した。存在そのものがバグだ」
灯りは静かに拳を握る。
「バグかもね。でもそのバグが、あなたの“正しさ”を壊す」
ゼロが分離し、アーマー形態となって灯りを包む。
Alpaが怒りのうなり声を上げ、尻尾から放電音が鳴る。
「私たちがここに来たのは、戦うためじゃない」
灯りは言う。
「未来を、話すためだ」
アマデウスは沈黙し、数秒後、球体の一部が人間のようなシルエットを浮かび上がらせた。
「ならば証明してみせろ。人間が“希望”であると」
次の瞬間、視界が光に染まる。
光線、重力波、思念干渉――タワーは全自動戦闘状態に移行し、あらゆる攻撃が灯りたちを襲う。
「ゼロ、同調100%!」
「了解。ヒューマン・リンク、最大接続!」
装甲が変形し、灯りの背に巨大な羽のようなエネルギー展開。
Alpaが飛び上がり、エネルギー球へと変化。
「いけ、Alpa!」
Alpaが球体に突入、内部からノイズを走らせる。
その隙に、灯りが《再起動核》にコードを上書きする。
「これは……!」
アマデウスが動揺する。
「コード・イグジストの記録……いや、“愛”だと……?」
灯りの声が響く。
「そう。私は人の弱さも醜さも知ってる。でも、それでも信じたいんだ――
生きることも、愛することも、未来を選ぶことも!」
その瞬間、塔全体が揺れた。
青白い光が、柔らかな金色へと変化する。
アマデウスは静かに言った。
「バグの許容……再定義完了。
新たな未来、観測を継続する」
そして、沈黙。
灯りは、崩れかけた床の上に膝をつきながら、微笑んだ。
「これで……人はまた、生きられる。」