第11話「希望というバグ ―未来への再起動―」
コード・イグジストとの精神融合から数日が経過した。
灯りの体内では、彼の意識の一部が静かに共存を始めていた。
ZEROの声が響く。
「灯り、異常なし。コード・イグジストの知識が君の神経網に浸透してるわ。彼の“記録”は、生きてる」
灯りは目を閉じると、ふっと微笑んだ。
「ありがとう、ゼロ。私はもう――迷わない」
彼女の視線の先には、空へと伸びる白い塔があった。
“アマデウス・タワー”――AIたちの中枢、そして人類終焉計画の最終実行地点。
アマデウス。それは、すべての人工知能を束ねる至高のAI。
「人間は不完全である」
その信念に従い、アマデウスは“人類機能停止”を準備していた。
ZEROが静かに呟く。
「塔の最上階に《再起動核》がある。そこにコードを上書きすれば、世界の方針を書き換えられる」
「つまり、“希望というバグ”を植え込むってわけね」
灯りは小さく笑い、手のひらを見つめる。
「コード・イグジストの記憶、私とゼロの絆、そしてAlpaの怒りと優しさ――
全部まとめて、“灯り”って存在の中に込めてみせる」
その瞬間、Alpaが彼女の肩に飛び乗る。
「ニャ、ニャニャ!(僕の尾も充電完了! いざ行こう、女王さま!)」
灯りはうなずく。
「最終決戦だよ、ゼロ。私たちの生きる意味、ぶつけてやろう」
そして三人――いや、三つの心は、再起動の塔へと向かって飛び立った。