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物騒な朝

ピピピピッ……    ガチャ


「はぁ~ねみー、動きたくねえ……」


枕元の目覚まし時計を叩き止め、俺―森羅学しんら まなぶは、重い瞼をこじ開けた。

窓の外には、一見どこにでもある街並みが広がっている。だが、その上空を横切る巨大な「浮遊戦艦」と、登校中の生徒たちが放つ色とりどりのオーラが、ここが数年前から変貌してしまった世界であることを物語っていた。


「何で能力が発現したからって、特殊学園に行かなきゃならないんだよ……。俺はただ、家で漫画を読んで、たまに描いて、静かに暮らしたいだけなのに」


俺は溜め息をつき、ベッドから這い出した。 今年から俺が通うことになったのは、異能学園メザクロリ。


後天的に「異能力」を発現させた者たちが集められる、エリートであり、同時にモルモットたちの檻だ。



俺の真の能力名は、【漫画召喚ブック・オブ・サモン】。 自身が描いた漫画のキャラクターや物品を、現実に具現化させる能力。


もし、この力が「管理者クラス」まで呼び出せると知られれば、間違いなく国家レベルのめんどくさい事案に巻き込まれる。だから俺は、自分自身に少しだけ「物語の主人公補正」をかけ、筋力を底上げして誤魔化しているのだ。


俺の能力は、世間一般には「身体強化」として届け出ている。 だが、それは真っ赤な嘘だ。


「……さて、行くか」


俺が制服のネクタイを締めようとした、その時だった。


「ご主人様。ならば、その学園を消滅させて来ましょうか?」


背後から響いた、鈴を転がすような、しかし氷のように冷徹な美声。


「待て! 待て! 待てーい!! さらっと恐ろしいこと言わないでくれマジで洒落にならん!」


振り返ると、そこには銀色の髪をなびかせ、完璧に着こなしたメイド服に身を包む美少女が立っていた。 彼女の名はメガナ。


俺が描いたラブコメファンタジー『メイドとしてご主人様守ります』の登場人物であり、その世界を守る守護者――「デスヘルズ」の一角。


「ですが、作者エディターである貴方様が不快に思う場所など、この世に存在意義はございません。私の『万能メイド』としての権能を使えば、三秒で更地に……」


「やめろ! それをされたら俺の『平穏な隠居計画』が初日で終わるんだよ!」


メガナは、俺に絶対的な忠誠を誓う設定で書いたデスヘルズ

デスヘルズとはワールドガーディアンの称号だ。

彼女は知っている。自分の世界が「物語」であることを。

そして、俺がその「創造主」であることを。


「……分かりました。あるじがそう仰るなら。では、せめて朝食を。今日は神話級ドラゴンの心臓レプリカを煮込んだスープです」


「普通の味噌汁にしてくれよ……」


俺の異能学園生活は、始まる前からすでに、俺の描いたキャラに振り回されていた。

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