第七話:『大魔王テュポーンの『陰謀』で憎み合い殺し合う人間たち』
『ヘロドトス』の話で思い出したんだが、俺だって『神々の女王ヘーラー』のことくらい知ってるぜ! なんたって『女神ヘラ』は『アカイア帝国』の首都『ミュケーナイ』を守る『守護女神』で『アトレウス皇家』の守り神だからな!
『ちなみにっすけど『ヘラ女神』が産まれた場所って『サモス地方』なんすよ、先輩は前回知らない感じじっぽかったすけど』とペンテシレイア。
そ、そうなんだ……それは全然知らなかったぜ……(汗)。
『昔『サモス』を支配してた『ポリュクラテス』って『暴君』が建設した『ヘラ神殿』が有名っすよ。まあその『サモス』は今『アテナイ』の『植民地』っすけどね、へへへ(笑えない)』とペンテシレイア。
へ~、意外なところで『アテナイ人』がかかわるんだな……まあそれはいいとして、だ(善くないが)。
だから『ミュケーナイ』のすぐ近くの『エウボイア山』という山の麓には『ヘライオン』という『神々の女王ヘーラー』を祀る神殿があるそうだ。そんでその『ヘライオン』も『ミュケーナイ』も建設したのはあの『四英雄』の一人『ペルセウス』らしくてな。
そんで、なんで『ミュケーナイ』になったかっていうと『ペルセウス』が『アルゴリス地方』…………あー、『アルゴリス地方』は『ミュケーナイ』がある地方の名前らしいぜ…………にやってきた時に喉が渇いて困っていたら足元に『キノコ』が生えてたらしいんだ。
そんでそんで、なんでか知らんけど『ペルセウス』が『このキノコをむしり取ってやろう』と思って毟ると、キノコの下から『自由の水』っていう水が湧き出してきて、それを『ペルセウス』が飲んで喉の渇きをいやすと『ここに都市を建設しよう! 名前は『ミュケス』にちなんで『ミュケーナイ』だ!』となったそうだぜ。ちなみにこの『自由の水』って『井戸』は『ヘライオン』に仕えてる女神官たちが儀式を行う際に必ず使用する『聖水』らしいな。
『……唐突に『神話』の話が始まったすね(汗)。その神話は私もしってるっすけど、なんで『喉が渇いた→キノコを毟ってやろう→乾きが癒えた→都市建設しよう!』の流れになるのかいまだに謎なんすよね。何かの『暗喩』なんすかねぇ? いや~ん♡ 先輩のエッチ!(キャッキャ)』とペンテシレイア。
なんでだよ(マジレス)。でも『人間世界最大の帝国の首都名』が『キノコの町』ってのもなんか締まらねぇよな……『キ〇コ王国』かよ。
『ふひひひ、それにしても『神々の女王ヘーラー』は『四英雄』全員とかかわりの深い女神でもあるっすよね。『ペルセウス』は今先輩が話した通りっすし、『テセウス』は『ヘラ女神』が支援してた『アルゴナウタイ』に参加してるっすし、『アキレウス』は『トロイア戦争』で『ヘラ女神』が味方ですっし、『ヘラクレス』に至っては『ヘラ女神』の『養子』でっすしねぇ。そもそも『ヘラクレス』って名前が『ヘーラーの栄光』って意味だし』とペンテシレイア。
『アトレウス皇家』は『ヘラクレス家』で『ペルセウス』の子孫でもあるって『お袋』が教えてくれたぜ……俺にも『四英雄』のうち『二人』の血が流れてるとか誇らしいぜ……(感無量)。
『…………『ペイシストラトス』は父方が『アテナイ王テセウス』と『メッセニアの賢者ネストル』の血が流れていて、母方は『テッサリア人』なので『賢者ケイローン』と『アキレウス』の末裔でもあるって話は今は言わない方がいいっすかね(小声)』とペンテシレイア。
ん? なんか言ったか?
『いえ、何でもないっす。ぴゅ~♪(口笛)……そういえば『アカイア帝国』といい『サモス』といい『ヘラ女神』にゆかりのある国って今全部『他国の軍隊』に占領されてる状態っすね。なんでなんでしょうね?』とペンテシレイア。
『ヘラ女神』の『神罰』かねぇ……? それよりお前口笛下手だな(呆れ)。それよりも『トロイア戦争』ってなんだ? 『トロイア王国』って昔『英雄アキレウス』と戦ってるんのか??
『いやいや『イーリアス』を知らないとかさすがにないっしょ先輩(呆れ)。『トロイア王国』は何度も『アカイア帝国』と戦ってますし、なんなら『王都イーリオン』はこれまでに『5~6回』くらい陥落して焼き払われてるんすよ? それでも『緋色鳥』のごとく復活して今でも『大国』なんすよ。『1000年前』に『大魔王テュポーン』が攻めてきた時も『トロイア王国』は『焦土』になってまして、その時はトロイア人が『99%』も虐殺されたって伝説が残ってるくらいなんすから』とペンテシレイア。
マジか…………つーか『大魔王テュポーン』って『1000年前』は征服した土地に住んでる人間を『皆殺し』にして替わりに『モンスター』をその土地に住まわせてたそうだけど、なんで今は殺さず『奴隷』にしてるんだろうな?
『…………大魔王の考えなんて私は知らないっすけど、『殺す』より『奴隷にして同じ人間に売る』方が『人間同士を争わせることで楽に侵略できる』ことに気づいたからじゃないっすかね? 割と最近の話っすけど『スパルタ人』なんかは『大魔王軍』に誘拐されて奴隷に堕とされた『ヘレネ王女』を買い取った『トロイア人』を恨んで戦争仕掛けたりしてるっすし』とペンテシレイア。
え、えげつな……(ドン引き)……なるほど『アタランテ』が『あんなふざけたこと』言ったのもわかるってもんだな……(感心)……だが俺はたとえ『大魔王の陰謀』であっても『ペイシストラトスとヒッピアスとコドロス』はぜってーぶっ殺すけどな!!(決意)
『……こうやって私と先輩で『設定』をいろいろ出したっすけど、果たしてこんな話がどれだけ『本編』にかかわってくるんしょうね~?』とペンテシレイア。
そういう話は思ってても口に出さないでくれよ(汗)。
まあこの話はこんくらいにしておくか。いやしかしそれにしても、だ。もし『犯罪奴隷ラケス』が『反乱』を宣言して『鉱山奴隷』全員が参戦することになったとしても、多分あの時『ハルピュイアのゼテス』が現れなかったらこの『反乱』は速攻で『アテナイ軍』に潰されてた気がするぜ。
だって『鎧兜にでかい『アスピス盾』と『長槍』を持ってる完全武装のアテナイ兵』に俺ら『素手の奴隷』が勝てるわけないじゃん普通に考えてさ。
さ~て前回の続きだぜ。『北風のゼテス』の話に『ラケス』が『嬉しさ半分警戒半分』って感じで、
「『スキュレー軍』が俺達の反乱を助けてくれるってか……? そんな『うまい話』があるのかよ? 『モンスター』が俺らを騙してるんじゃないだろうな?」とラケス。
ゼテスは『鳥の翼』を体の奥(?)に片付けてから、
『さっき自分で『大魔王軍に同盟締結を呼びかける』っていってたわよねん?w なに? いざ『チャンス』が転がり込んできたら『怖くなって』しり込みしちゃう『弱虫』の坊やなのかしら~ん?♡』とゼテス。
「誰が『弱虫』だゴラァ!(怒)お前ら『モンスター』どもは『人間同士の殺し合い』を煽りまくってることくらい俺だって知ってんだぞ糞が! 俺の故郷『パフラゴニア』が『リュディア王クロイソス』に侵略された原因だってお前ら『モンスター』どもの差し金だろうが!」とラケス。
どうやら『ラケス』の故郷『パフラゴニア』って国は『リュディア(?)』とか言う国の『クロイヤツ』って王様に侵略されたらしい。そんでなんかそうなったのは実は『大魔王』の『陰謀』で、『ラケス』はそのことをすげー恨んでるみてーだ。もしかしてこいつが『強盗殺人』する羽目になった件とも関係してるのか??
つっても俺には何のことかさっぱりだ。あとで『アイソーポス』にでも聞いてみっかな。
『『クロイヤツ』じゃなくて『クロイソス』っす先輩(律儀)』とペンテシレイア。
名前が紛らわしいんだよ(文句)。そんで『ゼテス』はそう言われると『開き直った』つーか、別に最初から隠してなかったらしくて、
『あら~ん♡ その通り♡ 『クロイソス王』が『パフラゴニア』を侵略するように仕向けたのも確かに私達『大魔王軍』だわ~ん♡ だって『パフラゴニア人』が『リュディア』で豊富に採れる『砂金』を欲しがってたからよ~ん♡ だから『クロイソス王』が『侵略される前に先に侵略する』ことで自分の国を守ろうとしたのよん♡ 『パイア様』は『クロイソス王』に助言しただけで『侵略』したのは『クロイソス王』自身の『意志』よん勘違いしないで~ん♡』とゼテス。
『大魔王テュポーンの娘パイア』も超有名で『このころの俺』でも一応は知ってたな。なんでも『スキュレーの姉』だが『戦争メカ&人間奴隷化メカ娘』である妹とは違って『知略』を駆使し自分の手を一切汚さずに『人間の国』を次々と『征服』した恐ろしい『策士』なんだとさ。確か『この時』は『バビュロニア』って国にいたそうだが……おおよそ『人間の国同士の戦争』の背後には大抵『知将パイア』が『暗躍』してるってもっぱらの噂だぜ(怖ぇ~)。
『…………ちなみに話の腰を折るようで悪いんすが先輩、『リュディア』が『砂金』が豊富に採れることで有名な国って知ってたっすか?』とペンテシレイア。
知ってるわけねーだろ(予定調和)。そんな有名な国なのかよ??
『そりゃあもう『全世界』に『黄金の国リュディア』として知れ渡ってるっすよ。ちなみに『クロイソス王』の名前『クロイソス』は『お金持ち』って意味でもあるんすよ。『アテナイ』は『世界一お金持ちの国』って言うっすけど、実は『リュディア』も同じく『世界一の富豪の国』なんすよね。『世界一』が『複数』あるんすよ』とペンテシレイア。
子供に『金持ち』って名前を付ける親の気が知れねーな、そんなに『リュディア人』は自慢してーのかよ(呆れ)。でもだからこそ『自分の国の砂金』を外国人に奪われる前に先に『征服』しちまったわけか。『パフラゴニア人』はそんなに『リュディアの砂金』が欲しかったのか?
『別に『パフラゴニア人』に限らず『砂金がたくさんとれる』と聞いたら『大魔王』だってほしくなると思うっすよ? だから『クロイソス王』は『パフラゴニア』に限らず近くの国によく攻め込んでるんすよ、『どいつもこいつもうちの国の砂金を狙ってる!!』て思い込んでるそうっすね(他人事)。もちろん『クロイソス王』がそんな風な『戦争ばかりの狂った王様』になってしまったのは、『パイア』のせいとも、あるいは彼の『家臣』の中に『大魔王のスパイ』が紛れ込んでいて『色々と吹き込んでいるから』とも、どっちかはわかりませんが『大魔王の差し金』だってもっぱらの噂っすね。『狂王クロイソス』っすね』とペンテシレイア。
とんでもねぇな………そりゃあ『ラケス』が恨むのも納得できるぜ………(汗)。
『ちなみにっすけど、『ラケス』はもともと『パフラゴニア軍の兵士』だったらしいっすけど、『パフラゴニア』が『クロイソス王』に征服された後、それに『抗議』するために何人もの『リュディア人』の兵士の家に押し入って『強盗殺人』をくりかえしていたそうっす。いわば『リュディア支配に抵抗したレジスタンス』っすね。ですが捕まって『リュディア人貴族』に買われて、その主人を殺したから捕まって『鉱山奴隷』として売り飛ばされたらしいっす………『裏設定』っすね』とペンテシレイア。
なんだよ『良いやつ』なんだなラケスって。俺勘違いしてたぜ。
『私も『悪い人』じゃないとは思うっすけどどこに『良いやつ』要素があるんすか??』
すると、そこで今度は『アイソーポス』が『ラケス』と『ゼテス』の間に割って入ってきて『憎悪』に燃えた顔で叫んだんだ。
「『パイア』だぁ!? その名前は俺の『祖国』でも嫌というほど有名だぜ『化け物』がよぉ! その『糞ったれパイア』の糞アマが『リビア人』に力を貸したせいで俺の『美しいアイギュプトス』は『リビア人』に『支配』されちまってるんだぞ!」
アイソーポスはそういってゼテスの『首根っこ』を掴もうとしたが、ゼテスは避けて、
『うふふ♡ そういえば『アイギュプトス』って今『リビア人のファラオ』に支配されてるんだったわね忘れてたわ~ん♡ もしその『ファラオ』がお気に召さないのなら代わりに『マケドニア人のファラオ』はいかがかしらん? それとも『アッシリア人のファラオ』? 『ペルシャ人のファラオ』なんかもいいわねん♡ なんだったら『ヌビア人のファラオ』でもいいわよ~ん♡ お好きな国のファラオを選ばせてあげるわ~ん♡』
「ふっざけるな糞モンスター!! 『アイギュプトス』の『ファラオ』は『アイギュプトス人』がなるべきに決まってんだろ、『アイギュプトス』は『アイギュプトス人の国』だ!! それをなんで『リビア人』に忠誠を誓わねーといけねーんだよ!! 俺の祖国を返せモンスターがあああああ!!(怒髪天)」とアイソーポス。
『『ファラオ』はさすがにわかるっすよね先輩? 『アイギュプトスの王様』のことっすよ』とペンテシレイア。
ああわかるぜ(大嘘)。じゃあ今の『アイギュプトス王』が『リビア人』ってことか??
『そうっす。『リビア人』はもともと『アイギュプトス』の『隣国』に住んでた人達なんすけど、ちょっと前『リビア人の軍隊』が『大魔王軍』の力を借りて『アイギュプトス』を征服したことがあるんすよ。なので今『アイギュプトス』は『リビア人』に支配されてる状態っす。そんで『アイソーポス』は『リビア人のファラオ』が『アイギュプトス人』にかけた『重税』のせいで親に『奴隷』として売られちゃったんす。最初は『カルケドン』、次に『エトルリア』、そんで『サモス』に売り飛ばされて、さらに『転売』されて今は『ラウレイオン鉱山』に連れてこられたんすよ。だから『リビア人』をすごい恨んでるんすよね』とペンテシレイア。
ほ~ん(生返事)。なんで『リビア人』は『アイギュプトス』を侵略しようとしたんだ??
『それはゼテスに聞いた方が速いっすね』
『アイソーポス』に迫られても『ゼテス』は上機嫌な様子で『ドヤ顔』になっていた。
『『大魔王軍の参謀パイア王女様』が『知略』を巡らせたのよ~んすごいでしょう~ん?♡ でもん♡ 『アイギュプトス』が『リビア人』に侵略されたのはそもそも貴方たち『アイギュプトス人』の『自業自得』よん♡ 『アイギュプトス』は豊かな国だけど『リビア』は砂と沼だらけの貧しい国で、だから『リビア人』が明日の食べ物にも困っていたのに『アイギュプトス人』は一切助けようとしなかったのよん♡ だから『リビア人』に同情した『テュポーン様』が『アイギュプトスの土地』を『与えた』のよん♡ 彼らは『これで豊かな生活ができる』って今でも感謝してるわ~ん♡ あは~ん誇らしいわ~♡』とゼテス。
『…………『ゼテス』はこんな風に言ってるすっけど、じつは『リビア人』は大昔から『アイギュプトス』にもたくさん住んでたそうっすよ。そんで『リビア人』の中には『アイギュプトスの貴族』にまで上り詰めた人たちもいたので『ゼテス』の言ってることは『嘘』っす。今の『ファラオ』は『リビア人とアイギュプトス人のハーフ』らしくって、実態は『アイギュプトスの貴族同士が『ファラオの座』をめぐって内戦して、たまたま勝った方の貴族達のトップに『リビア人』の血が流れていた』だけだそうっすね』とペンテシレイア。
?? じゃあなんで『アイソーポス』は『あんなふうなこと』を言ってるんだ??
『『大魔王』が『アイギュプトス人とリビア人を殺し合わせるため』に流した『嘘の噂』っすよ。『アイソーポス』は『貧しい農民』だったから『内戦』の理由をよく知らなくて信じ込んでしまってるんすよね』とペンテシレイア。
それも『パイア』の『策略』なのか? ふつーにやばくね??
そんで実際『ゼテス』の『挑発』で『アイソーポス』は今まで見たことねーくらい『切れ散らかし』ちまって顔色が『赤』を通り越して『青』になった状態でゼテスに殴りかかろうとしたんだ。
「おかげで『アイギュプトス人』が皆『貧乏』になってんだよくそがあああああああ!! 『大魔王軍』の力が無ければ『貧乏なリビア人』になんか俺らは征服されなかったんだ! 全部おまえらのせいだあああああああああ!!」とアイソーポス。
「やめろアイソーポス!! 『ハルピュイア』に攻撃なんかしたら瞬殺されるぞ!!」とパゴアス。
「そうですよアイソーポスさん!! あの『鎌みたいな爪』をみてください! あんなので引っかかれたら『ミンチ』ですよ!!」とニアキス。
アイソーポスは『泣きながらブチギレ』ていて、それをパゴアスとニアミスが必死になって羽交い絞めにしていた。ゼテスは『自分の右手』を『鎌みてーな爪が生えた鳥の脚』に変化させて『微笑』をうかべていたが、今度はその『鎌みてーな爪』で『ニアミス』を指して、
『…………あら、そういうあなたは『シュラクサイ』出身のようねん♡? その様子だと大方『ディオニシオス王』に『奴隷として売却』されたか、『処刑』されそうになったのを命からがら逃げたら『海賊』にでも捕まって『奴隷』にされた口かしらん? 『ディオニシオス王』は『ラドン王子様』ととっても仲良しだものねん♡ かくいう私も『シケリア』には何度もいったことあるのよん、『ディオニシオス王』には毎回お世話になってるわ~ん♡』
そういわれて『ニアミス』…………『ニキアス』は『真っ青な顔』になってうつむいてまた俺の背中に隠れたんだ(『こういう時だけは正しい名前に戻すんすね』byレイア)。
だから俺は『これ幸い』と直接『ニキアス本人』に質問したんだ。
「お前って『ハクサイ(?)』って国の出身だったのか。そういえばどこから来たかなんて全然知らなかったな(そもそもあんまり興味なかった)」と俺。
「…………『奴隷』にとって『自分の出身地』なんて『無意味』ですよ。どうせ『ご主人様』が帰してくれませんし、帰ったところで『奴隷』のままですしね………(諦観)…………あと『ハクサイ』じゃなくて『シュラクサイ』です(律儀)。『シケリア』という地方で一番大きな国でして、僕の父の名前は『ディオン』、『シュラクサイ』の名門貴族だったんですよ………(遠い眼)」とニキアス。
どうやら俺や『コドロス』だけじゃなくて『ニキアス』も『良い所のお坊っちゃん』だったらしい(そういうやつ多いな)。そんで『ディオニシオス王』ってのは実は『王様』じゃなくてもともとは『シュラクサイの貴族』だったそうだが、『王様になりたい』って『野望』をずっと持ってたらしくてな。それで『テュポーンの息子ラドン』の力を借りて他の貴族たちとの『内戦』に勝利して『シュラクサイ王』になったんだそうだぜ。
「一応聞くけどさ、『シケリア』とか『カルケドン』とかってどこにあるんだ?? 俺名前も聞いたことないんだけど」と俺。
「遠い所にある国です(説明放棄)。ちなみに『ラードーン(ラドン)』は『大魔王テュポーン』の息子で『パイア』の弟、『スキュレー』の兄です。『ディオニシオス』は『シュラクサイ王』になった後『父ディオン』を含めた『シュラクサイの貴族』達を『皆殺し』にしました。『母』もその時『父』と一緒に処刑され、僕のような『未成年の子供』は『奴隷』として『アテナイ人』に売られたんです。ですから僕は『帰る家』もありませんし、『シュラクサイ』は怖ろしい『暴君』がいるので絶対に帰りたくありません………(涙)」とニキアス。
「まじか………お前俺より『ハード』な人生歩んでんじゃねーか??」
「『不幸自慢』も無意味ですけど、クレオンさんの境遇が僕よりひどいってことは絶対にないと思いますよ……」とニキアス。
そういってこいつは『涙』をぬぐってから俺に『微笑み』かけてきた。『美少年』ってこともあいまって俺はすっかり『ニキアス』に『心を許す』きになったわけだな。
なんつーか、今まで『どうせ鉱山奴隷どもは全員『コドロス』の取り巻きで俺の敵だ!』くらいに思ってたけど、ちょっと『壁』を作りすぎてた気がするぜ。俺もそろそろ『友達』を作ってもいいかもしれねーな………!
「……なんか俺はお前のことが『他人』だとは思えねーよ。これから俺たち『友達』になろうぜ、よろしくな『ニアキス』な!」と俺。
「僕はずっと『クレオンさん』を友達だと思ってましたよ………あと僕は『ニアキス』じゃなくて『ニキアス』です(呆れ)」とニアキス。
俺とニアミス(『だからニキアスですって!』byニキアス)が『ちょっといい雰囲気』を出してる横で『パゴアス』が『ゼテス』を指さしながら『ラケス』に叫んでいたんだ。
「………そうだぞ『ラケス』! 今の話を聞いてもっと『慎重』に考えるべき、いや『大魔王』と手を組むのは『やめる』べきだ! だって『パフラゴニア』しかり、『アイギュプトス』しかり、『シュラクサイ』しかり、『人間世界』のあっちこっちで起こってる『人間同士の殺し合い』は全部『大魔王軍』が裏で『糸』をひいているじゃねーか! もちろん俺が産まれた『ペルシャ』だって同じだ! いくら俺らが『奴隷から解放されたい』からといっても『やって良いことと悪いこと』がある! 『トロイア人』と同盟を結ぶことにしよう、『大魔王』とはぜってーだめだ! 確実に俺らは自分から『地獄』にとびこむことになっちまうんだぞ!!」とパゴアス。
そこで俺も『さすがにやばいな』と思って『ラケス』に言ったんだ。
「…………ラケス、俺は『バカ』なうえに『ガキ』で『無教養』だから『世の中』のことは何にもわかんねーけどよ、それでも『大魔王との同盟』だけは『ぜってー選んじゃいけねー』ってことはわかるぜ。悪いことは言わねー、『ゼテス』の提案は断るべきだ! ぜってー『やばい』ことになるぞ!!!」
俺の言葉にその場の『ラケス以外の奴隷』全員がうなずいた。
そりゃそうだ、今の話の流れでどうやったら『大魔王と同盟を組もう!』って流れになるかよ。『大魔王テュポーン』は間違いなく『人類の宿敵』で最優先で倒さないといけない『やばすぎる連中』だ。
もし『大魔王』の『悪魔の誘惑』に乗っちまったら最期、俺たちは『地獄』よりも恐ろしい目に遭うかも知れねーんだぞ!!
だけど、この『ゼテス』はとんでもねー『話術』の持ち主だったんだ。
『…………そうね。でも、こんな考え方もできるんじゃないかしら? 『だからこそ『大魔王軍と同盟を結ぶべき』である』ってね。だって私たち『モンスター』が『人間同士の戦争』を『援助』すれば『必ず成功する』ってことが『証明』されているから。そうでしょう? あなたたちは『大魔王軍』がかかわった『人間の国』で『地獄』になっていない国が思い付くかしらん?』とゼテス。
俺がそこで奴隷たちを見ると皆が『うにゃうにゃ』考えたようだが本当に誰も名前をあげることができなかった。なのでゼテスが胸を張って、
『でしょん♡? そのことこそが私たち『大魔王軍』が『最良のパートナー』である何よりの『証拠』よん!♡ 私はこれを説明するだけで『十分』だと思ってるわん♡ これ以上の『説得』は『蛇足』よん♡』
ラケスが悔しそうに、
「…………まあ、確かにそうだ。『人間同士の殺し合いを扇動する』のはお前ら『モンスター』の十八番なのは事実だ…………だがな! それでもお前らが俺ら『鉱山奴隷』を『捨て駒』にしない保証がねーじゃねーか! どうせ最初は俺らを『自由にする』とか約束しながら『アテナイ』を征服したら『裏切る奴隷は要らない』とかいってぶっ殺すきじゃあ………」とラケス。
『うふふん♡ そんなことしないしわよん♡ その証拠も『大魔王軍』の『過去の実績』は挙げれていけばわかることだわ~ん♡ 『大魔王軍』は『アカイア帝国』に攻め込む前に事前に根回しして帝国全土で『大反乱』を起こさせてるけどん、『大反乱』を起こした『人間の国』は『大魔王様の奴隷』になったかしらん?♡ それどころか『テュポーン様』はちゃんと約束を守って『アカイア人』しか奴隷にしてないわよねん? 確か『パフラゴニア』も『アテナイ』ももともとは『アカイア帝国』の『属州』だったでしょ~ん?♡』とゼテス。
「た、たしかにそうだ。だが『奴隷』との約束をお前らが守るかわからねーじゃねーか……(もごもご)」とラケス。
「『スパルタ人』に『奴隷』にされていた『メッセニア人』、『シュラクサイ人』に支配されてた『シケロイ人』、『テッサリア人』に搾取されてた『ぺネスタイ人』と『ペリオイコイ人』、『カルケドン人』の『農奴』に堕とされていた『リビア人』の独立のために手を貸したのも『大魔王軍』よん♡ 有名な話じゃないかしら~ん♡ 彼らも『テュポーン様の奴隷』になってるかしらん? むしろ立派な『自由人』でしょ~ん♡? ねぇんニキアスちゃん♡ あなたの祖国が『隣国』にすんでいた『シケロイ人』たちを『奴隷』にして『ぜいたくな暮らし』をしていたことも私は知ってるけどん、それでも私たちのことを恨むのかしら~ん♡?』とゼテス。
「…………え、『シュラクサイ人』って隣の国攻め込んで『奴隷』にしてたのか? じゃあお前の一族も『奴隷』をいっぱい持ってたのか??」と俺。
俺が質問すると『ニアミス』は『滝汗をかきながらそっぽ向いた』あげく『パゴアス』の背中に逃げやがった。やっぱりこいつと『友達』になるのやめようかな(掌返し)。
そして『ゼテス』は『説得は不要』とか言ったくせに『うじうじしているラケス』を『決断』させるために『あと一押し』を仕掛けてきたんだ。
『『大魔王軍』が助けた『奴隷』は全員『反乱』を『成功』させて『自由』を勝ち取っていることは皆が知る通りよ~ん♡ あとちょっと『冗長』だけどん♡、さらにはこんな『実績』もあったわねん♡ 『テーバイ人』と『スパルタ人』と『アテナイ人』の戦争を煽って三国とも弱体化させたのももちろん♡ さらには『オドュリュッサイ王国』を三つに分割して『トラキア』をいまだに終わらない戦国時代にしたこともあるわね~ん♡ 『ペルシャ』から『バクトリア』を独立させたり『マッサゲタイ人』と戦争させたこともあったっかしらん?♡ 『アイギュプトス』に『リビア人』が攻めこんで支配したのはさっき話したけどん、そういえば『アッシリア』が周辺国と『バチバチ』になった原因も私達だったわね~ん♡ ……』とゼテス。
以上のようにゼテスが『ぺらぺら』とあげている『いろんな国の名前と事件』に関してはもちろんだが俺は全然全くこれっぽっちも分からん! まあでも名前が挙がってる国が全部『人間の国々』らしいから、まじで『テュポーン』は『世界中』で『人間の国同士の戦争』を煽りまくってるらしいな。それにしても『人間の国』って数多すぎだろ! あと全部に『大魔王』がかかわってるんかい!
マジで『大魔王』なんだな、完全に『意志を持つ大災害』じゃねーか(唖然)。
『…………そうっすよ、私の国もそうっすけど、このままだと早晩に『人間諸国』は全部『大魔王軍』に負けて『奴隷』にされる……いえ、多分すべての人間を奴隷にしたら『1000年前』と同じく『皆殺し』にされるんすよ……』とペンテシレイア。
………ゼテスが長々と喋ってから、
『……ここまで長々と喋る必要もなかったと思うけどん♡、以上のようにわしたちにとって『人間同士の争いの種』を作ることは『朝飯前』だわん♡ だ・か・らこそん♡ 私たちがちゃんとあなたたち『鉱山奴隷たちの反乱』を『支援』するって話も『信用』できるとおもわないかしら~ん♡ 安心して~ん♡ 『アテナイ人』たちを『奴隷』にできるのなら私たち『全力』で貴方たちを『自由』にしてあげるわ~ん☆ ねぇ? 今の私の『セールストーク』で『怖い』って感情が無くなって『同盟』に前向きになれたでしょ~ん?♡』とゼテス。
これだけこいつに『セールストーク』されて、さすがに『ためらっていた』ラケスも、
「…………確かに、マジで確かに、本っっっ当に確かにてめぇら『大魔王軍』は『デルフォイのニンフ達』の言う通り『呪いの女王ヘーラーが生み出した史上最悪の怪物軍団』だな……てめぇらと『同盟』を結ぶことは『悪魔に魂を売り渡すこと』と同じ……いや、その『一兆倍』も『やばい』ことだぜ。だけど、だけどな………このまま『奴隷』として死ぬくらいなら『悪魔』に食われたほうがずっとましな死に方に思えてるぜ!!」
ラケスがそう言ってからゼテスに握手を求めたんだ。
「…………よろしくな『大魔王軍』、『メッセニア人』や『シケロイ人』の次は俺達を『自由』にしてくれ、頼りにしてるぜ?」とラケス。
『あら~んうれしいわ~ん♡! じゃあ早速『スキュレー』様に報告するわね♡ 安心して、絶対にスキュレー様は『同盟』を許可してくださるわよ~ん♡』とゼテス。
後日『ゼテス』の言う通り本当に『鉱山奴隷反乱軍』と『大魔王軍スキュレー隊』の間に『同盟』が成立するんだ。そしてもちろんこのころ『アテナイ人』も『戦争準備』を進めていて、『トロイア人』ももう『アッティカ』の目の前に迫ってたそうだぜ。