第六話:『臆病な奴隷たちの対アテナイ反乱大作戦』
『武器を与えると奴隷は反乱を起こす』ってのは『アホ糞ゲロカスうんちブリブリ野郎ヒッピアス』もよく言ってたことだ。だから『殴って躾けて』やらないといけないんだとさ。『奴隷』は常に『ご主人様』を恨んでいて隙あれば復讐しようとするからだとよ。
当然だろ便秘野郎が。鏡に糞してろ下痢野郎。
『本当『うんこ』言いすぎっしょ先輩(呆れ)』とペンテシレイア。
でも昔俺が『エウテュプロンの爺さん』から初めて『軍用奴隷』って奴隷がいるらしいことを教えてもらった時、『お袋』に『奴隷って兵士になるのか!?』って聞いたら母ちゃんは確かこう言っていたな。
『それは『特別な奴隷』よクレオン。普通『奴隷』は『臆病ですぐ敵前逃亡する』から『兵士』にはならないわ』と母ちゃん。
『特別な奴隷ってどういうことだ母ちゃん!? 何が『特別』なんだ!? 俺はなれねーのか!?』と俺。
だが結局お袋は俺の質問には『微笑』するだけで答えてはくれなかった。だから『軍用奴隷』がどんなものなのかずっとわかんなかったんだよな。『エウテュプロンの爺さん』やほかの奴隷たちにも聞いてみたけど『お袋』がなんか言ったらしくてみんなも教えてくれなかったし。
あー、前回『エウテュプロンの爺さん』の話をしたときにさらっと『お袋の最期』まで話したから思い出しちまった。そう、『お袋』は一応『病死』だったんだが本当は『自殺』したんだ。
だけどこの『自殺』は皆が考えてるようなもんじゃねーぜ? 言い方は変だけど、『お袋の自殺』は『名誉なもの』だったというのが俺の『持論』で『誇り』だ。
『……クレオン、よく聞きなさい……『母』は薬を飲みません……このまま死にます……』と母ちゃん。
俺のお袋『アカイア帝国最後の皇帝アガメムノンの娘イフィゲネイア』は『奴隷』に堕ちても『身のこなし』は『上品』で……『楚々』っていうんだっけ? ……とにかく『清楚』で、でも『気品』ってやつがあってガキの俺でも『ペイシストラトスの屋敷にいる他の女奴隷』とは全然違うのが分かった。
まあ俺はその『上品さ』を全く受け継がなかったわけだがな、ははは。
そんでいつもは『やわらかい喋り方』をする『お袋』が『命令口調』になるのは『本当に大事で真面目な話』の時だけだ。だから『看病』していた俺はすぐにその場で『正座』して黙ってうなずいたんだ。
『お袋』はそれを見て微笑んでから、
『…………でもクレオン、母は何も『自分の生に絶望して自死を選ぶ』わけではありません。むしろ、息子であるお前を『真に愛している』からこそ死ぬのです……わかりますか?』と『お袋』
なんでかわからんが、俺は物心ついた時から基本的に『ペイシストラトスの屋敷』で『泣いた』記憶がない。いつも『泣く』よりも『切れて手が出る』方が多かった気がするからもともとこういう性格なんだろな。この時も『お袋が死ぬ』と聞いても『涙』はぜんぜんでなかった。
むしろ『いずれこういう話になるだろうな』となんとなく予想していたんだ、不思議だぜ……。
『わかりません母ちゃん(大真面目)』と俺。
『……ふふ、本当にかわいい子……正直にいいなさいクレオン……貴方は本当は今すぐにでもこの『お屋敷』から逃げ出したいのですが、『病気の母』を気遣っていてそれができないでいるのではないですか?』とお袋。
俺は『違います!』と力強く否定したが『お袋』は『違いません』と『ぴしゃり』と却下してから、
『……貴方は優しい子……言わずとも『母』を外に連れ出せなくてじっと我慢していることくらい私にはお見通しですよ……だからこそ、貴方を『母の呪縛』から『自由』にするために私は死ぬのです……いいえ、もともと『死すべき定め』にあるこの身を少しだけ早めに『ハーデスとペルセポネ』に任せるだけなのです……』
『ハーデスとペルセポネ』が『冥界』を治める『神』であることくらい俺だって知ってる。そこで『お袋』は遠い眼をして、
『…………逃げなさいクレオン。おそらく逃げても『奴隷』のままでしょうが、それでもとにかく早くこの『屋敷』から逃げるのです……『息子に希望を与えられなかった母』から逃れるのです……それでお前は『屋敷の外の広い世界』を見るのです……かつてお前の『お爺様』が『支配』されていたこの『世界』を……それをその目で見なさい……』
そこで今度は『お袋』が俺の頬に触れてから、
『……どうか、お前をこんな『地獄』に産み落とさせてしまった『お爺様』のことだけは恨まないであげて……『お父様』は……『皇帝陛下』はあの時『最善の選択』を採って多くの民たちを救ったのだから……』と『お袋』
『……わかってるよ母ちゃん。俺は一度だって『爺ちゃん』を恨んだことはないぜ』と俺。
これが『お袋』の遺言だった。俺はこんな『誇り高い死に方』をした母ちゃんを尊敬しているし、『母ちゃんの愛』を疑ったことも、『俺の爺ちゃんアガメムノン帝』は『情けないけど、それでも大魔王に虐殺されるはずだった『アカイア人』たちを『奴隷』にしてでも生かした救世主』だとも確信してる。まあ『情けない』のは『情けない』んだけどな(笑)。だから『スキュレー』を絶対一発殴ってやらないといけなかったんだ。
まあ『復讐』する気満々でいざ『スキュレー本人』にあったら『婿』扱いされるとは思わなかったわけだが……(困惑)……まあそれはいいや(いいのか?)。そういえば結局『ラウレイオン鉱山』では『スキュレー』と会話した記憶ねーな。確かあいつが俺を『認識』したのは『ヘクトールがくたばった時』だったはず……たぶんだけど(うろ覚え)。
『そこは完全に『ネタバレ』になるからそこまでっすよ先輩。それにしても本当に素敵なお義母さまっすよねイフィゲネイア姫は。私も初めて会った時『格好いい~!』っておもいましたっすもん、ふひひ』とペンテシレイア。
お前のそれも『とんでもないネタバレ』じゃねーかやめろやめろ(焦り)。つーことでこの話はここまでな! そんじゃあ『アタランテと俺が初めて『ハルピュイア(ハーピー)』を見た夜の『次の朝』から今回は始めようじゃねーか! 始まり始まり~。
さてさて、アタランテは『さすがにモンスターが飛んでるのはまずいわね』と頭を低くしながら家に帰っていき、俺もそのまま森の中に隠れてその晩は寝たんだ。そんで『朝焼け』が出る前に目覚めて『奴隷小屋』に戻り…………すると『コドロス』が俺のベッド(土の地面に枠を書いただけのもの)』の上で寝てたんだ。
「…………来ちゃった☆」とコドロス。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!(ガチ悲鳴)『ノルマ達成』いいいいあああああああ!!!!(全力攻撃)」と俺。
「ぐえぇ!?(腹蹴られた)……てめぇクレオオオオオオン!? どこ行ったんだよ心配したんぜ死ねえええええええ!!!」
「それは俺のセリフだキモイんだよ良いから死ねコドロスううううううう!!」
俺とコドロスの『朝っぱらからのガチバトル』は『風物詩』なので他の奴隷たちは『うるせぇ!』と文句言いながらノロノロ起き始め、瞬時に『コドロス』に『てめぇクレオンの仲間かぁ!?』と理不尽に殴られて気絶した。周りの奴隷たちが『やべぇぞ俺らも標的だ!』と全員でつかみかかろうとするも『コドロス』はそれを全員同時に相手にして勝つんだからやっぱ強いなこいつ。まあ俺はその『隙』をついて『腹』にもう一発渾身の蹴り入れたけど(わざと同じところを執拗に狙う)。
そのおかげで『クソキモ暴走機関車コドロス』は分が悪くなってすぐに退散していったんだ。あいつ『引き際』見極めるの結構うまいんだよな、なお俺以外のその場の奴隷は全員倒してたりする。
「つ、強すぎる……なんでクレオンだけは元気なんだよ……お前もおかしいだろ……」と『パゴアス』という名の奴隷。
この『パゴアス』は確か『ペルシャ』から来た奴隷だったはずだ。なんでも『奴隷』にされた時に『ち〇こ』を切り落とされちまったらしくてな。だから『男』だけど妙に甲高い声が特徴だ。
「骨折れたくらいで怯まなきゃきゃいいだけの話だぜ。俺もう右手の指折れてるけど構わず殴るからな」と俺。
「お前『ノルマ達成』できたとしても早死にするぞ……(気絶)」とパゴアス。
だがいつも『大量の唾と捨て台詞』だけ残して去っていくはずの『キチ〇イ野郎コドロス』が、この日だけはちょっと様子が違ったんだ。
「ぐぅうう! いでぇええええ!!(腹をおさえながら)……今日のところはこれで勘弁してやるがな! よ~く聞いとけクレオンのクソガキと仲間の奴隷ども! 今日から『食事』は『全員で食う』んじゃなくて『グループごと』に分けて食うことになった! 『Α(アルファ)チーム』から順番に食うからお前ら『『Γ(ガンマ)』チーム』は先に仕事を始めろ! わかったな!?」とコドロス。
そういってから『コドロス』が腹を抑えながら去っていった。どうやら同じことを他の『奴隷小屋』に伝えにいったらしい。『ご主人様の伝言を伝える仕事』があるんだったら俺にいちいちちょっかいだしてくるのやめてもらえる??
『はいはいクレオン先輩! 『ラウレイオン鉱山』の『奴隷』たちの『日常生活』がよくわからないっすよ! 前回『みんなで集まって朝ご飯を食べてる』っていったすっけど、具体的にどんな感じなんすか?』とペンテシレイア。
そうだなぁ……『順を追って』ってやつが苦手なんだが、まあ頑張って説明してみるか。
えーと、まず俺ら『鉱山奴隷』は『今まで』は『夜明け直前』にどこからともなく聞こえてくる『ニワトリ』の鳴き声で起きるんだ。あ、ちなみに『アタランテ』が『たぶんそのニワトリうちの村のだわw』とかいってたからどうも『マロネイア村の鶏』らしいな。
そんで俺ら『奴隷』が寝る『奴隷小屋』ってなんか『20以上』はあるらしくてな……まあ実は俺全部の小屋の位置知らねーんだけど(ガバガバ)。そんでたぶん『全部の小屋の中心(?)』に『食事場』があるんだよ。『食堂』じゃねーぞ、『食事場』だ。
そこはちょうど『キャンプ場』みてーなところでな。『石を積み上げて作った竈』が『屋根の下』に並んでる場所があって、その近くに『井戸』があってそこから水を汲める。あとはその『屋根付き竈』の周囲に『下草が茂ってる野原』があるだけの場所なんだ。
もちろん『奴隷』たちは『飯』になるとぞろぞろそこに集まってきて『グループ』ごとに『竈』を使って飯作って、それを『野原』の上で食うだけだな。『奴隷』によっては『座る用の丸太や石』とか用意する奴もいるが、ほとんどの奴隷が『胡坐かいて足の上にパンおいて『モサモサ』食ってる』だけだな。
ちなみに『用意』されてる『食材』は『メザシ』以外は『大麦』、『干した玉ねぎ』、『油を搾り切った後のカスカスオリーブの実』、『滅茶苦茶塩辛いチーズ』だ。『香辛料』なんて高級品はなくて『塩』と『ワインビネガー』だけあるな。
あ、あと『海水』もあって、これ結構人気で取り合いになるんだよ、ちょうどいい塩辛さで味があるから『いいスープ』になるんだなこれが。『奴隷メシ』最大のごちそう、『ウミガメのスープ』ならぬ『海スープ』だぜ。
『海だ! 海だ! 『海水』って汚くて飲めないのでは?? あとなんか用意されてる食材が『メザシ』だけ異常に浮いてません??』とペンテシレイア。
それな。俺にとって目下最大の『山の不思議』だぜ。つーか『海』がどうしたんだ急に??
まあいいや(思考放棄)。そもそも『用意されてる食材』が少ないから『竈』を使ってできることなんて『大麦粉を練ってフライパンでパンを焼く』とか『チーズとオリーブとメザシの炒め物(言っとくけど奴隷が味なんて求めるんじゃねーぞ?)』とか『メザシのチーズスープ』とか『メザシパン』とか『メザシとチーズのクレープ巻』とかそういうもんばっかだ。もう俺自分で説明してる時点で『食欲』ねーもん、俺らなんか前世で『メザシ』をいじめたりしたのかな??(涙)
『『メザシのタラッタ風料理』とか言ったらなんか『オシャレ』に聞こえないっすかね?』とペンテシレイア。
『確かにオシャレだがやっぱ『メザシ』が邪魔すぎるだろ(白目)』とクレオン。
そんでその『全員集まっての朝飯』の場でたまに『コドロス』が『ご主人様の伝言』を伝えることもあるってこったな。そんで飯が終わったらみんなで『仕事』に入って、それが『夕方』まで続くんだ。『昼飯』って何それおいしいの??(『おいしいっすよ』byレイア)
そして『夕方』になったらまた『食事場』に集まって飯食ってその後は『奴隷小屋』に戻って寝る! それが『365日』休日も祝日も関係なく続くのが俺ら『鉱山奴隷』の生活だな。
そんでやっと『コドロスの改革』の話になるわけだが、どうやら『ご主人様』はその『全員集まって朝飯と夕飯を食う』ってのをやめて、『グループごとに順番に飯を食う』ってやり方に変えたらしい。
いっけね、忘れてた。『グループ』ってのは『鉱山奴隷』全員をグループに分けてるあるんだよ。『アルファ』から『オメガ』まであって、基本的に『同じグループの奴隷』が『同じ奴隷小屋』で寝ることになってる。
でもこの『グループ』は『一か月』で『シャッフル』になるから一定はしていねーな。俺もまだ『五か月』しかここにいねーから全部のグループを経験してるわけじゃねぇ。あーと、そんで……そんなもんかなとりあえず今は。
そんで、俺はその時『ガンマ』のグループに居たから『朝飯前に仕事かよ』と文句を言いながら仕方なく準備をしてたわけだが、すると『ガンマグループ』の俺以外の奴隷どもが小屋の中心に集まって何やら『話し合い』を始めたんだ。
そんでその奴隷たちの中の一人で『グループリーダー』の『アイソーポス』が俺に声をかけてきた。
「おいこらクレオンてめぇも来いや! 大事な話し合いがあるんだよ! 空気よめガキ!」とアイソーポス。
「あ? なんだよ面倒くせぇな……俺は『一匹オオカミ』だから群れるのは好きじゃねーんだよ」と俺。
この『アイソーポス』は確か『アギョポトス』……『アギャパトス』? 確かそんな感じの国から連れてこられた奴隷らしい。以前は『サモス』とかいう地方にいて『港で荷物の積み下ろしをしたり、船の修理を手伝ったりする奴隷』だったらしい。そういう奴隷ってなんていうんだろうな? 『港湾奴隷』か?
まあ奴隷って結構転売されるもんだから普通なんだろうな、俺も似たようなもんだし。
そんでこいつはそうやって『港』を行き来する人たちから色々な『面白い話』ってやつを聞いてて、おかげで『ラウレイオン鉱山』に来てからも他の奴隷たちに『面白い話』をいっぱい話すもんだからなんつーか、『人気がある』つーか、皆から一目置かれてる奴隷だ。確かに『エウテュプロンの爺さん』と似てるな、まあ爺さんよりずっと若いけど。
ちなみにあの『コドロス』も『アガポントス』の話が興味あるらしくて……驚いたか? あいつ俺以外にも興味の対象があるんだぜ? ……『アイソーポス』によく色々な質問してるな、俺はそもそもその国がどこにあるのかも知らねーけど。
「『アイギュプトス』だクソガキ! 人の国の名前で遊ぶのは普通に失礼だぞアホ!」とアイソーポス。
「いや人じゃなくて奴隷だろあんた(ツッコミ)。どこの国だよそれ、聞いたことねーぞ」とクレオン。
「『アイギュプトス』は『アイギュプトス』だ間抜け。『ヘロドトス』が『ナイルの賜物』っていったあの『アイギュプトス』だよ!」
へろ…………ヘロイン??
『『神々の女王ヘーラーに捧げられた者』を意味する高貴な名前っすよ先輩(呆れ)『ヘロドトス』は偉大な歴史家っすよ?』とペンテシレイア。
そ、そうなのか?? いやつーか俺『教養』ねーっていってんだろ勘弁してくれよ。そして『アイソーポス』も俺が首をひねっているさまを見て『うーん』と少し悩んでから、
「…………まあお前はもしかしたら『エジプト』と言った方がわかるかもしれんが……」とアイソーポス。
すると『奴隷小屋』の片隅から『ヒョイッ』と『頭がワニの小人』が現れていった。
『『エジプト』じゃなくて『アイギュプトス』だ、間違えるな』
「「「あ、はい。すみません」」」と俺とアイソーポスと他の奴隷たち。
『ワニの小人』が引っ込んだ。俺は『なるほど~』とおもってたが、すぐに立ち上がって、
「…………おい! 今の『ワニ顔の小人』はなんだ!? つーか普通に『モンスター』だろ!? はやく『ノルマ達成』しねーと!!」
俺がそう叫んでから『ワニ顔の小人』が消えたあたりを探すが姿どころか髪の毛一本も落ちてねー(いや頭がワニだったから髪の毛なかったけど)。だけど『アイソーポス』やほかの奴隷たちは特に驚いた風もなく、
「騒ぐなガキ。あれは『アイギュプトスの妖精』だ。『アイギュプトス』を正しく発音しねーとああやって現れるんだ。だが『言い間違い』を指摘するだけで無害だぜ」とアイソーポス。
「はぁ!? 『妖精』だぁ!? なんだよそれ!? 聞いたことねーぞそんなの! まじで言ってんのかお前ら!?」と俺。
「「「「アイソーポスの言ってることはマジだぞクレオン」」」」とその場の全員。
「…………え? マジなの??」
どうやら本当にさっきの『ワニの小人』は『アイギュプトスの妖精』とかいうやつで、どこで聞き耳を立ててるのか知らねーが誰かが『アイギュプトス』を『エジプト』と言うとどこからともなくあらわれて『訂正』していくらしい。
『だから『アイギュプトス』だ、間違えるなクレオン』と『妖精』
「あ、はいすみません」と俺。
だがこいつは本当に『間違いを訂正する』だけで他には何もしねーんだそうだ。でもなんでか知らんけど俺はこの『妖精』に『間違えるな』って言われるとついつい謝っちまうだよな~。てかなんで俺の名前知ってんだ??
「あの『妖精』に怒られたやつは誰であろうと謝っちまうらしいな。まあ今はどうでもいいんだよそんなこと。それよりクレオン、お前はコドロスが言ってたことどういう意味だと思う?」とアイソーポス
「どうでもいいのか……(困惑)……はぁ? 『朝食は今度からみんなで一緒じゃなくてグループごとに食え』って意味に決まってんだろ俺を馬鹿にしてんのか?」と俺。
「馬鹿にしてんだよ大馬鹿(呆れ)。俺はなんで『コドロス』つーか『ご主人様』が突然そんなことを言い出したかって話をしてんだ。そんなの理由は一つしかねーよな? あの『大魔王』が派遣してきた『ハルピュイア』を見た奴隷どもが『反乱』を起こすことを恐れたからだよ」とアイソーポス。
当たり前だが昨晩俺とアタランテがみた『ハルピュイア(ハーピー)』を『鉱山奴隷』が全員が目撃したらしい。そんで俺は見えなかったが実は『ハルピュイア』は『複数』いたらくして、しばらくあのでけぇ鳴き声をあげながら『ラウレイオン鉱山』の周りをぐるぐる回ってたが、どこからともなく飛んできた『花火』が爆発するとどっかに飛んでいったとか。
「……あの『花火』は多分『魔法攻撃』だろうな。だがあの『ハルピュイア』はどう考えたって『スキュレー軍』が派遣してきた『偵察』に決まってる。俺ら『奴隷』には『大魔王軍』がどこで何をしてるとか今どこまで進軍してきてるとかの情報は絶対に教えてもらえねーが、『偵察』が現れたってことはそう遠い所にはいねーってこったな…………おい『ラケス』、お前はどう思うよ?」と『アイソーポス』
質問されたのはこの場に集まってる奴隷たちの一人で『大男のラケス』だ。なんでもこいつは『パフラゴニア』ってところ出身で、じつはもともとは『奴隷』じゃなかったらしいが、『強盗殺人』を働いた罰で『奴隷』に落とされて『アテナイ』に売られてきたらしい。こういうのを『犯罪奴隷』とか『懲罰奴隷』とかいうらしいが、『死刑』がない国とかだと重い罪を犯した『自由人』を『奴隷』に落とす刑罰があるんだそうだ。
でも『ラケス』は最初買い取られた『ご主人様』の屋敷で働いてたそうだが、なんとその『ご主人様』を『殺して』から逃げたらしくて、それで俺みてーにまた捕まった挙句この『ラウレイオン鉱山』にぶち込まれたらしい。
『先輩自分のすぐ近くに『殺人犯』がいるって怖くないんすか?』とペンテシレイア。
別に『犯罪奴隷』は『ラケス』だけじゃねーし俺を殺そうとしてるわけでもねーし、そもそも『コドロス』に命狙われてるのに今更怖がると思うかよ?
『先輩は本当に『14歳の子供』にはありえない『肝っ玉』で惚れ惚れするっすね~』とペンテシレイア。
へへへ、俺は褒められるのは際限なく大歓迎だぜ(照れ)。
ああ、ちなみにだが『パフラゴニア』って国については俺も多少は知ってるぜ? なんつたって『お袋』の『母親』、つまり俺の『祖母ちゃん』だな。『クリュタイムネストラ』っていうらしいが、その人の実家がもともとそこの出身だったらしいぜ! ……まあそれしか知らねーけど(小声)。
『アイソーポス』に質問されて『ラケス』が答えた。
「どう思うもこう思うもねーよ『アイソーポス』、いつもみてーに『奴隷』達を一か所に集めると『ハルピュイア』が現れた件でみんなで『話し合い』ができちまうからにきまってんだろ。普通に考えたら俺ら『鉱山奴隷』が『アテナイ人』のために命張って戦うなんてありえねー、むしろ『反乱』を起こして『スキュレー』を助けてやろうくらいの心意気だぜ。『糞アテナイ人』どもを邪魔しまくって『大魔王軍』に『ラウレイオン鉱山』を明け渡してやるぜ……!」とラケス。
こいつは『鼻息』荒くそういったが俺はちょっと驚いて、
「おいおい、マジで言ってんのか? 『大魔王テュポーン』はすべての人間たちを奴隷にしようとしてるんだぜ? なんで俺らがその手伝いをするんだよ……」と俺。
「そもそも俺らはすでに奴隷だろクレオン! だったら糞アテナイ人も一緒に奴隷になっちまえばいいし、もしかしたら『大魔王軍』の方が俺らの扱いがもっと『マシ』かもしれねーだろ! 少なくとも俺らは今の『地獄』から解放されるじゃねーか、『大魔王軍』と戦う必要がなくなるんだからな!」とラケス。
こいつの目は『憎しみ』に燃えていて『赤く』光っていた。まあ確かに『自分たちが救われる』ことよりも『自分たちを苦しめてるやつも自分たちと同じかそれ以上に苦しむ』ことの方が『大事』だって思う連中は多いわな。
「いやいや、『大魔王軍』以外にも『トロイア人』がいるし、『モンスター』どもが『人間』より『マシ』って証拠がねーだろうが……」と俺。
「そうだぜラケス。やっぱ『反乱』はそう簡単には決断できねーだろ。確実に俺らは『アテナイ軍』に勝てねーのに」とアイソーポス。
「俺もなかなか決心つかねーよラケス……」とパゴアス。
「根性無しどもがよ……! くそ、だが共鳴してくれる奴がいねーと俺も一人じゃあ無理だしなぁ……(弱気)」とラケス。
ドンドン!
するとそこで『奴隷小屋』に『客人』がやってきた。誰かが『小声』で『ちょっといますか~?』と声をかけてきたのを『ラケス』が気づいて小屋の入り口の粗末な木の扉を開けると、そこには『ニアミス』があたりを『キョロキョロ』見まわしながら立っていた。
「あ、『ニアキス』じゃん、お前別のグループだろ何しに来たんだ?」と俺。
「『ニキアス』です(呆れ)。皆さんの所にも『コドロスさん』きましたか?」とニアミス。
「もうばっちり来たぜ。他のところにも来てんだろ?」とラケス。
『アニキス』が中に入ってきて扉が閉められる。一応『ラケス』が周囲を見回したが目撃者はいなかったみてーだ。
「……はい。来てました。僕の『グループ』にも『コドロスさん』がきたんですが、ちょうど僕たちはその時『朝ごはん』を作ってる真っ最中だったんですよ……そしたら突然『コドロスさん』が現れまして……」とニアキス。
こいつのグループは『アルファ』なので一番最初に『調理場』を使ってみんなで朝飯を作ってたそうなんだが、すると『コドロス』が『何やら大きな荷物』を持って現れたんだそうだ。
いや、正確には『コドロス』が大荷物をもってたわけじゃなくて、『手下の奴隷』どもがもってたらしい。『コドロス』には『ポレマルコス』、『バシレウス』、『エポニューモス』という三人の『腰巾着奴隷』がいてな。そいつらを引き連れて颯爽と現れたコドロスが『アルファグループ』に開口一番にこんなことを言ったらしい。
「……俺がみたところお前ら『アルファグループ』は『ご主人様』への『忠誠度』が他のアホどもと比べて多少は『高い』! だからお前らに『ご主人様』から『特別なご褒美』を与えてやる! これを受け取れや!」とコドロス。
「はぁ? なんすかお頭、藪から棒に……って!? これもしかして『卵』っすか!?」と奴隷たち。
コドロスの命令で『腰巾着奴隷』どもがその場に置いたのは『鶏の卵』だった。俺らは毎朝『鶏』に起こされるのに普段の『食事』にはぜってー出てこない『高級食材』だ。思わず『アルファグループ』の奴隷たちが集まってきて目を輝かせたらしい。
そこでコドロスは『どや顔』で、
「どうだいっぱいあるだろ? これ全部お前らが食っていいと『ご主人様』の仰せだ! だがもちろん『条件』があって…………ってごらぁ! 俺の話聞けや全部割るぞボケどもぉ!」とコドロス。
こいつの話を無視して『生卵』を殻ごと『丸のみ』にしようとした奴隷どもが『コドロス』にしばかれた。殻は『サルモネラ菌』が怖いから丸のみやめようね!(『それ以前の問題な気がするっすよ』byレイア)
「いいか糞ども!? これは『ご主人様』からの『前払いのご褒美』でもあるんだ! お前らは今後も『ご主人様』への『忠誠』を忘れず、他の『反抗的な奴隷ども』を監視しろ! そんで『反乱』を起こそうとしてる奴隷がいたらすぐに俺に報告するんだ! そしてもちろん俺に『卵』を貰った件は他のグループにはいうなよ!? 洩らしたらお前ら全員『病人部屋』送りだからな! …………」
と、そこまで言ってから『コドロス』は『割れて滅茶苦茶になってる卵を地面にはいつくばってすすってる奴隷たち』を一瞥してから背中を向けて、
「…………だがお前らが『監視』を続ければまた明日も『卵』をくれてやる。さっさと飯を食ってから綺麗に掃除しとけよ!」とコドロス。
そう捨て台詞を残して立ち去ったそうだ。『ニアキス』がそこまで語ってから、
「…………実はここに来る前にこの話をほかのグループにも話したんです。ですが皆『そんな話は知らない』ってことでして……つまり『お頭』は僕たちの『アルファグループ』だけを『卵』で『買収』して味方につけて、それでほかのグループを『監視』させる気みたいですね……」と『ニアミス』
俺等は黙ってその話を聞いてたわけだが、そこで『ラケス』がつぶやいた。
「…………なるほどな。『ハルピュイア』が現れたことで早速『奴隷反乱』を警戒して対策をうってきたわけか…………それにしても『舐め腐り』やがって、俺ら『奴隷』達が『卵』ごときで『飼い馴らせる』と本気で思ってるみてーだな…………!!」
ラケスの額に『ビキビキ』と青筋が浮き上がり、すぐに立ち上がって怒鳴ったんだ。
「…………今の『ニアミス』の話で俺は決心した! この『ラウレイオン鉱山』を経営する『糞アテナイ人』は俺らにとっての『敵』だ! 俺達は『敵』と戦うために『反乱』を起こし、『スキュレー』に『同盟』の締結も呼び掛けるぞ! 『大魔王』か、『トロイア人』でもいいから『ラウレイオン鉱山』を『引き渡し』、必ず『全てのアテナイ人』を『奴隷』に落としてやるぜ! 俺は一人でだってやってやるぞ! だがついてくる奴がいれば歓迎だ! どうだお前らも乗るか!?」とラケス。
すると今度ばかりは皆が──ちゃっかり『アニキス』も参加してたな──応えたわけだな。
「「「アッラララーイ!!」」」と奴隷たち。
「アッラララーイ! よっしゃ! じゃあ早速作戦会議だ!」とラケス。
そうやって『俺以外の奴隷たち』が『具体的な話』を始めようとすると、また俺たちの小屋に『客人』がやってきたんだ。
だがそいつは『扉』を叩かずに勝手に開け、しかも明らかに『鉱山奴隷』じゃなかった。なぜなら『やたら露出度の高いきわどい格好をしたスタイル抜群の美女』だったからだ。
『…………うふ~ん♡ たまたま通りかかったら『素敵なお話』が聞こえちゃったわ~ん♡ ちょっとお姉さんも混ぜてくれないかしら坊やたち♡』
この『美女』を見た瞬間『ニアミス』は顔を真っ赤にして俺の背後に隠れた(なんで?)。一方『アイソーポス』は『美女』を睨みつけて、
「…………こんなところにあんたみたいに『別嬪さん』がいるわけねぇ……もしや『モンスター』か? 正体を現わせや!」と『アイソーポス』
すると『美女』は背中から『鳥の翼』を出して見せ、
『ご明察♡ 私は『スキュレー姫』様配下の『ハルピュイア部隊』の隊員『北風のゼテス』よ~ん♡ あなたたち『ラウレイオン鉱山の奴隷』達が『反乱』を起こすと聞けば『スキュレー様』はお喜びなられるはずだわ~ん♡ どうかしら~ん♡? まだ『スキュレー様』には報告してないけどん♡ ぜひ私たち『大魔王軍』とあなたたちの間で『同盟』を結ばないかしら~ん?♡』
こうやって『ラウレイオン鉱山の奴隷』たちは『反乱』に動き出したわけだな。
『いや~、それにしてもやっと『美女』が増えましたっすね~(安堵)、この作品『ハーレム物』とか銘打っておきながら『ムサくてけんかっ早い男奴隷』ばっかりでてきて心配してたんすよ私は。だって完全に詐欺っすもん(ニヤニヤ)』とペンテシレイア。
メタいメタい(ツッコミ)。まあ『美女』つっても『ハルピュイアが化けてる』だけだけどな(白目)。でも『ゼテス』を抜かすと今のところ『美女』は『アタランテ』と『レイア』だけか。確かに少ねぇなマジで。つーか『レイア』も本当はまだ本編には登場してねーんだけどな! このフリーダム女王がよ。
『…………』とペンテシレイア。
……お前そうやって脈絡なく黙るのやめてくれ、どうしたんだよ一体???(汗)
まあいいや(鷹揚)。つーことはあれだな? 今の『戦況』は『大魔王軍』と『トロイア軍』が両方とも『アテナイ』に攻め込もうとしてる『三つ巴』で、そんでもって『ラウレイオン鉱山の奴隷』たちはその『アテナイ』に対して『反乱』を起こそうとしてるけど、『大魔王』とも『トロイア人』とも別に同盟を結んだりはしてなくて、今から『ゼテス』を通じて『大魔王』と『同盟結びませんか~』って話し合いになるのか?? え、そもそも『奴隷』って誰かと『同盟』結べるのか??
あ、だめだ。俺こういう『フクザツ』な話無理なんだよ。レイア、俺の代わりに『地の文』頼むぜやっぱ(思考放棄)。
『……だから『主人公一人称視点』の責任を放棄しないでくださいって(呆れ)』とレイア。
ちなみにだが後になって『アタランテ』にこのことを報告すると、
「…………ふ~ん、そうなの、ねぇねぇそれより『アイゲウス王の剣』の在処がかかれてる『宝の地図』を本屋さんで買ったのよ! 早速探しに行くわよ!(わくわく)」とアタランテ。
「いやお前少しは驚けよ(呆れ)。あと『本屋さんで売ってた宝の地図』を信用するんじゃねーよ!」と俺。
アタランテもマジで『肝っ玉』だよな。なんで自分の村のすぐ近くで『反乱』が起こりそうになってても動揺しねーんだよ。
そんな感じで事態は『風雲急を告げる』ってやつになったわけさ。