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仮題:奴隷皇子の大出世  作者: 富田大志
序章:家内奴隷クレオン→逃亡奴隷クレオン→鉱山奴隷クレオン
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第五話:『奴隷は殴って躾けないとすぐに反抗する危ない道具』

『ヘラクレス』は言わずと知れたすべての男の子と奴隷少年たちが憧れる『英雄』だ。昔『ペイシストラトスの屋敷』に住んでいた『エウテュプロン』って爺さんの奴隷から教えてもらったことがある。


『クレオンよ、今から『1000年前』の話だそうだが、実はその時も『大魔王テュポーン』が『人間の国』を侵略してきたことがあってだな。だがその時は『四人の偉大な英雄』たちによって阻止されたんじゃよ。その偉大な英雄の名前は『ヘラクレス』、『アキレウス』、『テセウス』、『ペルセウス』といってな。この四人の活躍で『大魔王テュポーン』は『瀕死の重傷』を負って逃げ帰り、『1000年』ほど『怪我の治療』に専念しないといけなくなったんじゃよ。どうじゃ? すごい人たちもいたもんじゃろ?』


 エウテュプロンの爺さんの話はいつも面白かった。爺さんは俺が大好きな『英雄が活躍する『アガる』話』をいっぱい教えてくれたからだ。


『すげぇ!! でも大魔王ってとんでもない長生きなんだな! つーか『1000年前』ってどんくらい前なんだ???』と俺。


『え? いや、それは『1000年前』は『1000年前』で……う~んクレオンにはちょっと難しいかのぉ。そうじゃなぁ……『爺さんの爺さんの爺さんのそのまた爺さんのさらに爺さんの……』ってのを『100回』くりかえすかのぉ、そんくらい前の話じゃよ。クレオンよ、お前は今から『爺さんの爺さん』を『100回』どれだけ早く言えるか賭けるか? わしが『このピーナッツ』を食べ終わる前に言いきれれば残りはお前にやるぞ』とエウテュプロン。


『エウテュプロンの爺さん』は『木の実を見つけるのがプロ級』というもう一つの『特技』を持ってたんだ。だからよく俺と一緒に近くの森に入って『木の実』を採りまくってた。なんかその森は『ペイシストラトス』の森じゃなくて他人の森だったそうだけど……いや俺は爺さんに命令されてただけだし(目そらし口笛)。


『お! 勝負だな! 乗ってやるよ爺さん!』と俺。


『そうこなくちゃのぉクレオンよ。それじゃあいくぞ? よーい、どん! モガガガ!!』と爺さん。


『『爺さんの爺さんの爺さんの』……ってあ! 今『ピーナッツ』いっぱい服の中に隠しただろ! なに食ったふりしてんだ狡いぞ全部出せ糞爺!! ってこらああああ!! 逃げるなああああああ!!』


『ぶはははは! 逃げてはいけないルールはないぞクレオン! 爺に勝とうなぞ1000年早いわい! ぶははははは!(脱兎)』


 まあなんつーか『元気な爺さん』でな。そういえばあの爺さんにも一回も追いつけた記憶ねーな……え? まじでアタランテが速いんじゃなくて俺が遅いだけ??




『いや、アタランテパイセンは異常に速いっすよ(良心)。『大魔王を追い詰めた四英雄』の話はもっとまじめに聞いてほしいっすね~特に『テセウス』は私の『ご先祖様』なんで』とペンテシレイア。



 マジで!? すごくね!? 確か『テセウス』は『素手で牛をぶっ殺して』から『蜘蛛と結婚』したんだっけ? おまえもできるのかよ!? 


『なんすかその『出来るのか?』ってできるわけないっしょ(呆れ)。人のご先祖様を『蜘蛛と結婚した怪力の変態』みたいに言わないでくれるっすか?? そもそも『ミノタウロス』は『牛』じゃなくて『牛に似た怪物』だし、『アリアドネ』は『蜘蛛』じゃなくて『人間』……』


 あーはいはい、そういうのまじでいいから(拒否)。つーことは『大魔王テュポーン』が人間の国を侵略してきたのは今回が『二回目』ってことか??


『そうっすよ『常識』っしょ? でも『1000年前』と違って『偉大な四英雄』はもういないんすよ残念なことに。だからこそすべての人間たちが『偉大な英雄の再臨』を願っていた。するとそこに『あのアカイア帝国』の王子様が生きていた!!よーし彼を『勇者』として祭り上げよう! ……ってなったらよかったんすけどね~』


 いやまじそれな(共感)。おっと、俺の思い出を話してる場合じゃなかったな。それより前回の話の続きを始めねーと……、



『……あ、ちょっと待ってくさいっすよクレオン先輩。その『エプロンの爺さん』は今どうしてるんすか??』とペンテシレイア。


『エプロン』じゃなくて『エウテュプロン』だ(ツッコミ)、わざとやってんだろてめー(呆れ)。


『先輩もよくやるんじゃないっすか(ニヤニヤ)。つっても自分で聞いといてアレっすけど、さすがに『鉱山』に来てからは『ペイシストラトスの屋敷』にいる『奴隷』のことはわからないっすよね?』



 いや、『エウテュプロンの爺さん』は死んだよ、自殺だ。



『…………はい??』とペンテシレイア。


 爺さんの担当は『馬の世話』だったんだけど、朝になって『ヒッピアス』が『厩舎』に自分の馬を見に入ったら爺さんが首吊って死んでたんだよ。『奴隷』に『自殺』はよくある話だぜ? 特に『もともと自由人だったけど奴隷に落とされて奴』は『三人に二人は自殺する』もんだから『奴隷商人』は『奴隷』を売るときに『過去の自殺未遂の回数』を正直に話さないといけないって話さ。もちろん回数が多いほど値段は下がるぜ。


『…………』とペンテシレイア。


『お袋』も最期は『病気』になったのに『薬を拒否して』死んだから自殺みてーなもんだったし、そんなもんだよ。だから俺は早く『自由人』になりてーんだよ!! 『レイア』! お前そうやって『次元の壁』を突破できるんだから今すぐ『設定ガン無視』で『俺』を『お前の国』で保護してくれよ!! おいレイア!? 聞いてるか!?


 おーいレイア~?? ……なんだよあいつまたどっか行きやがった、マジで自由すぎる奴だな(溜息)。



『…………先輩のそういう『底抜けの明るさ』に私のハートは射抜かれたのかもしれないっすね……(溜息)』とペンテシレイア。


 え、なに急にどうしたの??(動揺)




 はてさて、まあそういうのはいいとして、ちょっとは『時系列』ってやつに配慮していくとするか! まずは『アタランテ』から『おれがどれいからかいほうされるさいきょうのさくせん』を聞かされた『翌朝』の『コドロスのうんこたれが朝食の時に言った『ご主人様からの伝言』』の件だ。


 これは『前々回』も言ったが、『コドロス』は『ご主人様』と直接面会することができる『唯一の奴隷』で、俺はその時が初めて知ったんだが『ご主人様の命令』を俺らにつたえる仕事もあるらしい。あいつはいつも『イライラして』るが、その日は『いつもの500倍くらいイライラ』した様子で『吠えた』んだぜ。


「おらぁ俺の話を聞けヤァ『喋る道具』どもがぁ!! ごらぁ早く黙れっていたんだよ耳ついてんのかゴラァ!! いいかよく聞けよ!? あと質問は一切なしだ! 『ご主人様』からの『ご命令』でお前ら『糞奴隷』どもは『アテナイ軍』に協力して『大魔王軍』や『トロイア人』と戦うことになった!! だからといっててめぇら『愚図』どもの『ノルマ』も変わらねぇ、相変わらず『半年で決まった量の銀を採掘できねー役立たず』は『病人部屋送り』になるぞ覚えておけよゴラァ!!」とコドロス。



 ここで『鉱山奴隷』は皆初めて『自分たちの仕事場が大魔王とトロイア人から狙われて』いて、しかも『いつ戦場になってもおかしくない』ことを知ったわけだ。俺はこの時点で『唖然』としてて、


「……え? アタランテの言ってたことマジだったのかよ!?」



 だが俺のこの声は『大騒ぎする奴隷』どもの声でかき消された。


「どういうことですかお頭ぁ!? 『モンスターとトロイア人が攻めてくる』て、なんすかそれ!? まじで何…………本当にマジで何!?(混乱)」と奴隷α。


「意味わかんねーっすよ頭ぁ! 『ラウレイオン鉱山』が戦場になるって!? だったら俺ら避難させてくださいよぉ! ここ滅茶苦茶あぶねーじゃないですかぁ!?」と奴隷β。


「『アテナイ軍に協力しろ』って、俺らをこの『地獄タルタロス』に押し込めてる『アテナイ人』のために敵と戦えっていうんすか!? 冗談じゃないっすよ、協力してほしかったら俺らを『解放』してもらわねーと割にあわねぇ……」と奴隷γ。


 だけどそうやって『叫んだ奴隷』どもは全員『コドロス』に鞭で『ぼこぼこ』にされて気絶したんだった。



「うるせぇ誰が喋って良いって言ったんだよゴラあああああ! この気絶してる糞どもは『廃棄(病人)部屋』にぶち込んどけ!! 俺は『ご主人様』から『敵に寝返りそうな奴隷は全員殺せ』って言われてんだよ文句あっかごらああああああ!!(唾飛ばしながら絶叫)」とコドロス。



 可哀そうな奴隷たちは本当に『病人部屋』に送られて……あとは俺はよく知らねー、たぶん復活してると思うよ、うん(白目)。その様を見て俺の近くにいた奴隷たちはおびえて、


「つ、強ぇ……あの人バケモンだ……」と奴隷α。


「知らねーのかよ。あの人『アカイア人』らしいぜ、だから肋骨折られてもピンピンしてるんだよ。噂はマジだったんだな……」と奴隷β。


「ひぇ、あんな『化け物の国』を『スパルタ人』は何度も撃退してたのか? とんでもねーな……」と奴隷γ。


 だがこの奴隷たちは『俺』の視線を感じると皆慌てて目をそらして黙っちまった。おいおい俺は別に怒ってないぜ? 『アカイア人』は皆で存分に褒めちぎってくれよ(どや顔)。



 それから『コドロス』は『いきなりスイッチが切れた』みてーに『静かに』なって(こいつのこれが一番きもいんだよな)から、


「…………おそらく『一週間後』くらいに『アテナイ軍』がここにやってくる! 兵士の皆さんはお前ら『死んでも代替品はいくらでもいる反抗的な糞奴隷』どもを、それでも『寛大な心』で守ってくださるんだそうだ! 喜べ『道具』ども!! お前らは『アテナイ人の旦那様方』に『買ってもらって』いただいて、しかも『衣食住』を保証されてるんだから『恩返し』する義務があるんだよゴラァ! だから『モンスター』や『トロイア人』どもが『鉱山』でなんか悪さしねーか見張れ! そんでちょっとでも変なことがあったら報告しろ! あともし『敵軍』が攻めてきてたら死ぬのを恐れずに戦え! 安心しろ、何度も言うがてめぇらが死んでも代わりはちゃんといるからなぁ!! 以上ださっさと仕事に入れ!!」とコドロス。




『……なるほど、『奴隷』は『ご主人様から衣食住を保証されている』ことで『でっかい恩がある』って考え方なんすね。そのうえでさらに『給料を寄こせ』ってのは『あり得ない』ってわけっすか。なんとなくわかってきたっすよ先輩』とペンテシレイア。


 そうそう、『『トラックの運ちゃん』が『ガソリン代や修理費用』とは別に『トラック』に『給料』を払うか?』て話だな。俺が言いたいことはそれよそれ。


『でも『衣食住が保障されてる』っていっても『ご主人様の食べ残し』とか『雑巾みたいなボロ服一枚』とかっしょ? そんなん『衣食住を保証してもらっている』って言えるんすか??』とペンテシレイア。


 言えるかどうかを決めるのは『奴隷』じゃなくて『ご主人様』ってだけだぜ。




 そにれしても『コドロス』の野郎ときたら…………自分も『奴隷』のくせにいっぱしの『ご主人様』気どりかよ『金魚のうんこ野郎』がよ。だがこんなこと言われて『はいそうですか』と仕事に入る『善良な奴隷』は存在しない。その場の奴隷たちのほぼ全員(多分俺以外か?)が一斉に『ブーイング』したんだ。


「そんなこと言われて『は~い!』って素直に言うこと聞けるかぁ!? 『鉱山が戦場』になるなら俺は逃げさせてもらうぜ! なんで『フクロウの糞野郎のアテナイ人』どものために命張らないといけねーんだよ全員死にやがれ!! ってうわコドロス……ぶげぇ!?(殴られた)」と奴隷α。


「『モンスター』どもは『人間を食う』って話だし、『トロイア人』はあの『五人目の英雄』って噂の『ヘクトール』がいるじゃねーか! 絶対ヤダ! なんで俺らがまきこまれねーといけねーんだよ……ってうわあああぎゃあ!?(吹っ飛ばされた)」と奴隷β。


「せめて『パンガイオン鉱山』に移動させてくださいよ頭ぁ! 『アンフィポリス』は安全なんじゃないんすか!? それにあっちの方が『金の埋蔵量』が多いから『ノルマ達成』も簡単だって噂が……ぐげぇ!?(殴り倒された)」と奴隷γ。


「だから黙れっていたんだろクレオオオオオオオン!!(三人をボコりながら)」とコドロス。


「俺なんも言ってねーだろ巻き込むんじゃねーぞゴラァ!!」と俺。


 俺が立ち上がって『ファイティングポーズ』を取ると周囲の奴隷たちが一斉に逃げ出し、コドロスもそこで俺を始めて認識して鞭を構えて『メンチ』を切りあう。こいつ無自覚に俺の名前叫んでんのかよ(呆れ)。



 え? 『どんだけ治安悪いんだよこの鉱山』だって?? 『奴隷』なんてどいつもこいつも『抜き身のノコギリ』みてーなやつしかいねーから『一番強ぇやつ』が『奴隷頭』になるんだぜ知らねーのか? 今は『体格』で勝てねーが大人になったらぜってーコドロスぶっ殺して俺が一番になってやる(野心)。



 だがそこでひとりの奴隷が『おずおず』と怯えながらコドロスに質問した。この奴隷の名前は確か…………『ニキアス』だったっけ??(うろ覚え)確か『第一話』で俺を庇おうとして『コドロス』にタコ殴りにされてた少年奴隷だったはずだ(自信なし)。



『その少年で間違いないっすね。名前はおぼえてあげましょうよ先輩(良心)』とペンテシレイア。


 う゛……そ、それはそうだよな……(汗)。いや! でも俺は『名前』は覚えるのは苦手ってだけでこいつのことはまあまあ知ってるぜ!? 



 なんでもこの『ニアキス』は『この鉱山で一番の美少年』って言われててな! しかも『性格』が『温厚』ですげー優しいやつらしくてな。体力に余裕がある時は『病人部屋』に通って『奴隷』どもを『看病』してるって話だ。確か俺がけしかけた『ネズミ』に噛まれて『病気』になった『カリデモス』が言ってたの聞いたな。


『くそがあああクレオンてめぇのせいで傷が腫れて糞いてぇじゃねぇか! クソガキのてめぇと違って『ニアキス(間違えている)』は俺が『病気』でも嫌がらずに看病してくれたぞ!? ちょっとはあいつの爪の垢煎じて飲めやガキヤアアアアア!!』とカリデモス。


 あ、ちなみにこいつはまだ復活してねーから『病人部屋』にいるぜ。


『えぇ…………』とペンテシレイア。



 あと確か別の奴の話だと『ニアキス』が鉱山の片隅で『弱ってる小鳥』に『自分の分のメザシ』をあげているところを目撃されてもいるらしい。つまりこの『顔がいいだけでなく性格も美人』ってわけだな! 


 …………『顔も性格も良いすげぇ人』……はぁ(溜息)……おっと、だからあの『色ボケゲス野郎エロメノス』の大のお気に入りで『俺の天使アンゲロス』って呼んでるな…………あいつも本当にキモいよなマジで…………どうだ? 俺…………『アニキス』……だっけ(?)に詳しいだろ?



『だから『ニキアス』っすよ先輩(呆れ)』とペンテシレイア。


 ……そういえば『アニキス』とは全然関係ねーけど『エロメノス』ってなんで『そのまんま』の名前なんだろうな?? 子供に『エロ』って名付ける親の気が知れねーぜマジで(同情)。


 先輩、『エロメノス』は『愛される者』って意味で『愛の神エロース』にもちなむ由緒正しい名前なんすよ(呆れ)。


 ほ~ん…………なんでそんな奴が『鉱山奴隷』になってんだろうな?(素朴な疑問)


『なんだか『深い闇』がありそうな感じっすね(汗)』とペンテシレイア。






 おっと話がそれちまったな、すまねぇ。えーと、『ニアキス』…………じゃなかった、『ニキアス』は『コドロス』に殴られた痣がまだ消えてない顔で質問したんだ。


「あの……お頭、『アテナイ軍に僕たちが協力しなくちゃあいけない』って話は分かりました。それで『今までの鉱山の仕事に加えて敵と戦わないといけない』のもわかりました……納得はできませんが『ご主人様』の命令ならやります(渋々)……ではそうするにあたって、俺らは『戦闘訓練』とかつけてもらえるですか? それに『武器』は? 『武器』がないと『モンスター』には絶対勝てないんですが……いや、武器があっても『トロイア軍』ですら無理だとは思いますけど……それでも僕たちに『武器』はもらえるんですよね??」とニキアス。


 すると『コドロス』が『は? お前本気で言ってんの?』って『心底びっくりした顔』でいいやがったんだ。




「はぁ?? 『武器』だぁ?? んなもん配られるわけねーだろ頭沸いてんのか?? 『奴隷』は『素手』だよ『素手』。『訓練』だって仕事の邪魔だ、やりたきゃ寝る時間削って勝手にやれや」とコドロス。




「………………へ??」とニキアス。


 こいつも『は? お前こそ何言ってんの??』という顔で『呆然』となり、周りの奴隷たちも『満月みてーなまん丸の目』でコドロスの顔を『じろじろ』眺めていた。コドロスは不機嫌になって、


「ああ!? なんだてめぇらその目はぁ!? 『奴隷』に『武器』なんて与えたら『反乱』起こすだろうが馬鹿か!? そういうのは『軍用奴隷』であってお前ら『鉱山奴隷』は関係ねーんだよ! そんなに『武器』が欲しかったら『つるはし』振り回したり『鉱石』投げたりして戦えアホども! ったく! 『ノルマ』も満足に達成できねー『愚図』どもがいっちょ前に『要求』だけしてんじゃねーぞ!」


 俺は『ぜってーそういうと思ってた』と見抜いてたから別に驚きはしなかったけどな(天地明察)。でもこの場にいた『奴隷』のほとんどはコドロスの答えを予想していなかったらしく、『ニアキス』……『ニアキス』は『フラフラ』後ろに下がりながら(『修正できてないっすよ』byレイア)、


「…………ぶ、『武器』はない? 『訓練』もしない?? でも『モンスターやトロイア人と戦え』って…………どうすればいんですか??? 見つかったら殺されるだけでは????」


「だったら『死んでも替わりがいる』って言ってるだろうがてめぇ『脳みそ』壊れてんのかぁ!? もう『ご主人様の伝言』は終了だ! 『ニアキス(こっちも間違えている)』てめぇもさっさと仕事を始めろ! 『ごちゃごちゃ』いうなら『お仕置き』だゴラ死ねやああああああああ!!」とコドロス。


 そういってコドロスが『鞭』を振り上げ…………『ニアキス』が放った『右ストレート』を無防備な顔面に食らって後ろに吹っ飛んだ。


 バキィッ!!


「ぶげぇ!?」とコドロス。


「「「…………え」」」と俺&奴隷たち。


 しかも『ニアミス』はコドロスが倒れるとその上に『馬乗り』になってから『ボコボコ』に殴り始めたんだ。


「…………ふっけんじゃねぇよお『腰巾着奴隷のアホコドロス』がよおおおおお!!?? 『武器』も『訓練』も無しに戦えるかよ『死ね』ってか!? ああんッ!? 俺等は『高価な道具』だろうが少しは大事に扱えや!! 『奴隷』だからってやっていいことと悪いことがあるんだよ死ねよおらぁあああああああ!! お前の全身の骨を砕いて『タコドロス』にしてから『ご主人様』の家で天日干しにしてやるぞおらああああああとりあえず死ねええええええ!!!(ブチ切れ)」とアニキス。


 ボカッ! バキッ! ゴスッ! ゴキン!(うわその音はちょっとやばいんじゃね??)


「ふぐ! ぶげ!? お、おれじゃなくてご主人様……ぐふぁ!?」とコドロス。



 俺を含めてその場の皆『怪物ゴルゴーンのようなおっかない顔』になっている『ニアキス』を『口をあんぐり』させながらしばらく眺めていた。いや、そりゃあな…………『天使』って話じゃなかったっけ?? ちなみにちょっと離れたところに居た『エロメノス』に至っては『顎が外れたみてーな顔』で呆然としているのが見えたな。


 お前はそのままずっと外れてろ(呪詛)。



 だが俺も『コドロス』がピクリとも動かなくなるとさすがに見かねて『アニキス』の肩を叩いて、


「…………それくらいにしてやれ。『コドロス』は死んで当然の糞野郎だけど、今回は『ご主人様』の大便を掃除……『代弁』をしただけだ。こいつは悪くねーよ俺も殴りてーけど(心残り)」


 すると『アニキス』は手を止めてしばらく『ぜぇはぁ』と肩で息をしていたが、自分の股の下で白目をむいて気絶しているコドロスを見て真っ青になって、


「……あわわわ、やっちゃった……! 僕『美しいうえに性格が優しくて温厚』って話で通ってるのにこんなことしちゃったら評判が落ちちゃうよ……!! 何とかなりませんかねクレオンさん!?(哀願)」


「なるわけねーだろ何言ってんだおまえ(呆れ)」と俺。


 おい、なんかこいつ『噂』と全然違うやつっぽいぞ(困惑)。




 …………と、これが『朝食の場でタコドロスが叫んでた『魔王軍とトロイア人が攻めてくる』って話』の全部だ。この後『コドロス』は自分がボコったやつらと同じく『病人部屋』に運ばれて……『女神アナンケー』が定める『因果応報』ってやつだよこれがな……でも『不死鳥フォイニクス(フェニックス)』のごとく『数時間』で『復活』して仕事に戻ったわけだ。


 つーか『復活』したんじゃなくて『気絶から目覚めただけ』だけど。顔が『パンパン』に腫れてたから『タコ』つーか『たこ焼き』だったな。やるじゃん『アニキス』…………『アニサキス』??



「『ニキアス』でしょ(呆れ)。でも私も『ぽかん』とせずにはいられないわね……まさか『武器』を配らないし『訓練』もしないなんて……そうなるとどうやって『武器』を運んでくるかよね…………」とアタランテ。


 俺が『今朝あったこと』を詳しく話してやるとこいつは『うーん』と腕を組んで悩み始める。俺は『アタランテの腕に乗っていて今にもこぼれそうなもの』をしげしげ眺めて『やっぱり精霊だな』と思いながら、


「いやまじでそれな。なんでも『糞タコドロス』が言うには『武器は無くても普段から力仕事してるから問題ねー、重要なのは命を惜しまずに『アテナイ』のために戦う『意気ガッツ』であって『武器』は重要じゃねー。『弱虫』は『武器』があっても逃げるから』だとさ。そもそもなんで俺ら『鉱山奴隷』が『アテナイ』のために戦わなきゃいけねーんだよって言っても聞く耳持たずだったぜ…………と、アタランテは『故郷が侵略されそう』だからこんなこと言うと怒るかもしれねーけどな」と俺。


「なんであんたが私に気を遣うのよ(呆れ)。あんたの立場なら私も同じこと思うわよ。ていうかあんた『タコドロス』っての気に入ってるのね」とアタランテ。


「ああ、『タコドロス』は『アテナイ軍』の『秘密兵器』だ。コドロスの『肋骨』が『スイッチ』で全部折ると『タコドロス』に変身して『アニサキス光線』を吐くんだぜ。まあそれを使うと自分も『病人部屋』送りになるから『諸刃の刃』だがな(ニヤニヤ)」と俺。


「全然面白くないから(溜息)。うーんそうなると問題はあんたが戦うために使う『武器』よね……あんたそういえばどんな武器が得意なの? やっぱり男らしく『槍』? それとも『ペルシャ人』みたいに『弓』が得意? ていうか『盾』もてる?? 大きくと重いわよかなり」とアタランテ。


「『盾』ってあのでっけぇ『アスピス盾』のこといってんだろ? あんなでけーの俺にはあわねーよ。『ゲラ盾』なら使えるぜ一応な。あと『サイフォス剣』の使い方を『冒険者』に教えてもらったこともあるな」と俺。



『アスピス』は『重装歩兵』がもってる『木の板と青銅を組み合わせて作ったでかくて重い円形の盾』のことで、これを持てることが『大人になった証明だぜクレオン! お前も早く持てるようにでっかくなれ!』って『ヘファのおっさん』から……ああ、『ヘファイスティオン』のことだよ。おっさんがよく言ってたな(懐古)。ちなみに『アスピス』は別名『ホプロン』ともいうらしいがなんで名前が『二つ』あるのかは知らん(素直)。


 一方ガキの俺が『アリス』たちから『訓練』してもらったのは『ゲラ』って『木の枠に獣のなめし革を張り付けた小さい盾』だ。これは軽いから片手でずっと持ってても腕は痛くならねーけど、防御力も低いからすぐ壊れちまう。


 だから『ゲラ』を使う『軽装歩兵』は基本的に『鎧兜』も一切つけず、『防具』は『ゲラ盾』だけであとは『サイフォス』っていう『片手剣』で敵と戦うわけだな! 『防具』を極限まで減らして身軽になるから人によっては『全裸』になることすらある。ちなみに『アリス』は『軽装歩兵は服なんか着てはいけない』と強く思い込んでるらしくて『身軽』にならなきゃいけなくなるとすぐに『全裸』になって『パトラ(クレオパトラ)』と『アル(アルテミシア(仲間の女ヒーラー))』からよく怒られてたな(身内情報)。



「その『アリス』って人変な人なのね(困惑)。でも『軽装歩兵の盾』って『ペルタ』って名前じゃなかったかしら? ほらあの『クロワッサン』みたいな形の盾」とアタランテ。


「なんじゃそりゃ知らねーよ(素直)。そんで? お前は『片手剣』や『盾』を『市場』で買ってこれるのか?」と俺。


「『市場』はここでは『アゴラ』っていうのよ(教養)。『武器屋さん』に行けばいっぱい陳列してくれるし店のおじさんは私と『顔見知り』だけど、いえ、顔見知りだらこそ『不可能』だわ。『12歳の子供』に『武器』なんてうってくれないもの。それに私『お小遣い』もあんまりもらってないから『銀貨』もってないし………たぶん持ってないと思うけどクレオンは『銀塊』とか隠し持ってないわよね?」とアタランテ。


「持ってるわけねーわな当然。そもそもこの鉱山にあるの『鉱石』はそのままじゃあ使えねー、一回『精錬所』に持って行って『灰吹き法』で『銀の純度』をあげないとそこら辺の『石ころ』と同じくらいの価値しかねーよ」


 ちなみにその『灰吹き』ってやつどうやるのかは知らん。本当に『灰』をストローかなんかで『ふぅ~』って吹きかけてるわけじゃないよな??(マジでわからん)。


「『精錬所』てどこにあるの??」とアタランテ。


「いや俺が聞きてーよ。多分近くにあるんだろうけど『奴隷』にそんなこと教えてくれるわけねーしな」


 俺達が採掘した『銀鉱石』はいつも『馬車』でどこかに運ばれちまってその後は全くわからねー、たぶん『精錬所』に向かってるんだろけど、まさかアタランテも場所を知らないとはな~。


 するとアタランテが天を仰いで、


「…………ということはさっそく『詰み』ね……本当にクレオンは『素手』でモンスターやトロイア人の重装歩兵と戦わないといけなくなったわ」


「『死刑宣告』だなそりゃ(乾いた笑い)。これで晴れてお前の『作戦』とやらも『正式』に『破綻』だぜ、いやもそもそ成立すらしてなかったけどな……さぁどうするアタランテさんよ? もう『諦め』ちまうか?(挑発)」と俺。


 まああれだ、正直この時の俺にとって『アタランテとどうやって奴隷から解放されるか話あう作戦会議』は『自分の絶望的な境遇』を一瞬でも忘れるため、いや、『ありもしない希望』をちょっと夢見て自分を慰める、ただそれだけの時間だった。だから別に本気で俺は『作戦』なんて考えてたわけじゃない。まあそんなの当然だけどな。


 だが『アタランテ』の方は『常』に『大マジのマジ』で『真剣』に考えていたらしくて、



「……む。そういわれると『対抗』したくなるわね! わかったわ……実は『一つだけ』あんたが『武器』を手に入れる方法があるのよ、もちろん『銀貨』を盗むとかそういうのじゃなくて、もっと『大胆』だし、でも『合法』だし、しかも『わくわく』だってする方法よ! どう? 聞きたい?」とアタランテ。


「焦らして何の意味があるんだよ(呆れ)。へいへい、ぜひ聞かせてくれよアタランテさん。『合法的に武器を手に入れる方法』がマジであるのなら普通に興味はあるぜ?」


 俺はそういいながらアタランテと対面する位置にあった石に座ってから頬杖をついた。他方アタランテは立ち上がって胸を『えっへん』と張りながら、


「これは『噂』なんだけど、実はこの『ラウレイオン鉱山』には『アテナイ王アイゲウス』が『息子テーセウス』に託したっていう『伝説の剣』が眠っているらしいのよ! なんでもその『剣』を掘り起こした者は『アテナイ王』になれるって話で、『アテナイ人』がずっと探してるんだけど見つかってないわけ! そしてその剣は『発見した人のものになる』って話だから、あんたがその剣を見つければいいってこと! どう!? これが私の『最終手段』よ面白そうじゃないかしら!?」とアタランテ。


「…………なんとなく予想はできてたけどなお前…………そういうの『作戦』っていわねーってなんども言ってんじゃねーかよ…………(溜息)」と俺。


 そうさ、『無力なガキ』でしかない俺たちができることなんて、それこそ『伝説』にすがるくらいことくらいしかなかったのさ。それでも『時間』は矢のように過ぎ去っていって俺達を待ってはくれない。



 KYOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAA!!!



「…………って、何今の声? もしかしていつもの『タドコロス』?」とアタランテ。


「お前も間違えてんぞ『タコドロス』だ(ツッコミ)。残念だけど今のは『コドロス』じゃねーぞ。ほら上見ろ上、『あれ』だ」と俺。


 俺の指を追いかけて『アタランテ』が空を見上げると……『ものすごく大きなモンスター』が飛び去って行くのが見えたんだ。


「…………あ、あれはもしかして『ハルピュイア(ハーピー)』!? 『大魔王軍』じゃない!?」とアタランテ。


「ああ、どうやらマジで『来ちまった』らしいな」と俺。


 俺は『これは明日の朝は奴隷どもが暴動起こすかもな』と他人事みてーに思って呑気に欠伸を一発かましたんだった。

 ニキアス「僕の名前も『勝利の女神ニーケー』にちなむ由緒正しい名前なんですけど(困惑)」

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