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仮題:奴隷皇子の大出世  作者: 富田大志
序章:家内奴隷クレオン→逃亡奴隷クレオン→鉱山奴隷クレオン
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第三話:『星降る魔の山ラウレイオン』

 これも昔のことだが『ゲロカス糞ったれのヒッピアス』から聞いたことがある。『奴隷ドゥーロス』の反対の言葉を『自由人エレウテロス』というんだそうだ。『人間』は皆産まれつき『自由』で『人権』が保障されているから『自由人』と呼ぶが、それらがない『奴隷』は『人間』じゃないってこったな。


『自由人』……この『甘い言葉』を思い浮かべるだけでは俺は『きらきら光る希望』と『どうしようもない絶望』をいつも同時に感じちまう。あんなにも美しくて目の前にたくさん転がってるのに絶対に俺の物にはならない宝物。


 でも『アタランテ』はそんな俺の前に『流星ディオスクロイのごとく』現れて『必ず俺に自由を与える』と断言しやがったわけだ。今思えばそれは俺がずっと聞きたかった言葉だったのかもしれない……、


 ……だけど俺は当然ながら『そんなうまい話はない』と思って信じなかった。つーか『目の前に流星ディオスクロイが落ちてくる』って普通に『不吉』らしいしな!



「……『この鉱山から脱出する作戦を考えた』だと? てめぇ『12歳』ってことは俺より年下じゃねーかよ! そんな『ガキ』が『作戦』だぁ!? 笑わせんじゃねーよ! アホらしいから俺は帰って……おっとと!」


「ちょっと危ないったら! 安静にしときなさいよ! あんた弱ってるんだから!」とアタランテ。


 だが、まだ『本調子』じゃないもんだから俺は『めまい』がして四度目の『膝枕』に突入せざるを得なかった。これじゃあ『吐き捨てて寝床に帰る』ってこともできねーじゃねーか。くそー、すっげぇ負けた気分だ。


 だから俺は『心では負けてねぇ』とアタランテにアピールしたくてぶっきらぼうに、


「…………『善い作戦』ねぇ、本当は聞くのも面倒くさいし時間の無駄で嫌なんだが、まあ聞くだけなら聞いてやるよ。そんで? 『12歳のおこちゃま』がどんな『わたしのかんがえたさいきょうのさくせん』を考えたんでちゅか~? ほらお兄ちゃんにおちえてね~?」と俺。


 俺と同じくらい負けず嫌いなのでアタランテは眉毛を『ぴくぴく』させて、


「全然信じてないわね……『クレオン』、あんたはそもそも『ラウレイオン鉱山』を取り巻く状況が『どんな状態』になってるか知ってる? この『鉱山』は今『ホットスポット』になってるのよ。でも『この鉱山の所有者』がそんなこと『奴隷』に教えるわけがないわ、だから……」



 するとそこで、



『きしゃあああああああ!! どこだクレオオオオン!!! あああああああ↑あああああああ↓殺ずうううううううう!!』とコドロス。




 ……やれやれいつもの『発作』だ(笑)。これが毎晩なので俺はもう『夜』に『蛙』が『ブレケケケックス! コアックス! コアックス!』って鳴いてる程度にしか思えないくらいすっかり慣れたが──、


 ──え? 『蛙』はそんな風に鳴かないって? いや鳴くだろ、『蛙の鳴き声』きいたことねーのか?? ──、


 ──アタランテはそうじゃないのでビビッて、


「……昨日も聞こえたけどこの声は一体『何』?? 『パパ』はよく『鉱山にはモンスターやパンがうろついてるから危ない』って言ってたけど、あれもしかして『モンスター』の声? なんかあんたの名前呼んでなかった??」


「ああ、『モンスター』ってお前の推測は当たってるぜ『アタランテ』、あれは『アトレウス皇家』を死ぬほど恨んでて子孫である俺はずっと狙ってる『おぞましいモンスター』だよ、弱点は『肋骨』らしいな(ニヤニヤ)」と俺。


 俺の言葉を当然ながらアタランテは理解できないのでどうやら俺の言葉の気になる部分をピックアップしてきたらしい。


「『アトレウス皇家』っていってたけど、あんた本当の本当に『イフィゲネイア姫』の息子なの? なんだか私あんたに『担がれてる』気がするわ。なんか『証拠』とか持ってる?」


「知らねーのか? 実は『アトレウス皇家』は『呪われた家系』でその証拠として『全身にあざ』があるんだぜ? ほら見ろよ俺の身体、『証拠』だらけじゃねーか。つーかさっきお前が言ってた『オレステス』ってだれだよ??」と俺。


「あんた私は『まじめ』に聞いてんのよ(怒)。『オレステス皇子』も知らないの? 『ミュケーナイ』が『スキュレー軍』に『攻略』された時たまたま別のところに居たから助かった皇子様よ。その後は『部下の兵士たち』と一緒に『雲隠れ』しちゃったから今『大魔王テュポーン』が探し回ってるらしいわ。確か『イフィゲネイア姫』の『弟』のはずよ」とアタランテ。


 これはマジで『初耳』だった。なんだよ滅んでないじゃん『アトレウス朝アカイア帝国』! 俺は思わず胸を踊らせずにはいられなかった。


『『胸を踊らせる』じゃなくて『胸躍らせる』っすよ先輩』とペンテシレイア。


 細けーことはいいんだよ!



「まじかよ……俺にそんな『すげー叔父さん』がいたのかよ…………ってことはお前はもしかして『オレステス叔父さん』の部下で俺を助けに来てくれた奴なのか??(一縷の望み)」と俺。


「あんたのその『絶対にあきらめない心』には感心するわ……(呆れ)。でもまあ、一応あんたが『アトレウス皇家のすえ』って話は信じてあげるわ。もし『オレステス』を名乗ったら絶対信じなかったけど、『イフィゲネイア姫の息子』だったら『いかにもありそう』だし、ここで『鉱山奴隷』やってる理由もわからないでもないもの。たぶん『ペイシストラトス』に売られたんでしょ? 『ラウレイオン鉱山』は今『人手不足』で貴族たちがあっちこっち駆けずり回って奴隷を集めてるらしいし」とアタランテ。


「『すえ』?? 俺は『末っ子』じゃなくて『ひとりっ子』だが?」


「『末裔』のことよ! 『日常で使わない中二ワード』を説明させないで恥ずかしいから!」


「あっそ(無関心)。俺を売ったのは『ペイシストラトス』というよりかはその馬鹿息子の方だよ(不機嫌)。まあでもお前の言うことは間違っちゃいねー、つーかこの鉱山はそんな『働き手』がいないのか?」と俺。


「あんた働いてるのならわからない? 噂では『毎日のように人が死んでる』って話よ?」


「『人』は死んでねーよ、ここにはそもそも『人』がいないから……っていってぇ!? なんでいきなり叩くんだよゴラァ!?(激高)」


「叩かれるようなこと言うからよ! あんたは少しは自分を大事にしなさいよ!」


「うるせーごら! 誰も大事にしねーから俺もしねーんだこら! 文句あっかゴラ!?」


「文句あるから叩いたの! ああもう、あんたは本当に……なんで私の方が悲しくなってくるのよ……(涙目)」


 そこでアタランテが『涙ぐみ』はじめた。なんで理由もなく泣くんだよいきなり!? 俺は殴ってねーどころか『ビンタ』されて仕返しもできてないんですけどぉ!?


 だからなんか『混乱』するっつーか、慌てちまって、


「ちょ!? てめぇええええなんで泣くんだあああああ!!?? 泣くやつがあるかあああああ!! 本当に泣いてるのかあああああああ!!?? …………え、え? え?? マジで泣くのおおおおおおお!!??(滝汗)」と俺。


「何その反応(涙引っ込んだ)」とアタランテ。

『動揺しすぎっしょ先輩(呆れ)』とペンテシレイア。


 この時初めて気づいたが俺は『涙』に滅茶苦茶弱いことを知ってしまった……そういえば『お袋』ですら泣いてるところ一回も見たことねーんだよな……『奴隷』は皆泣くと余計に『罰』が重くなるから誰も泣かなかったんだ……これは俺史上最大の『大発見』だったぜ……。


『…………』とペンテシレイア。


 マジでなんか言えや(困惑)。




 俺が慌てふためくとアタランテが歯を見せて『ニコリ』と笑顔になったのでなんとなく会話が途切れた。そこで俺がさっきのこいつの話を思い出して、


「…………お前は『ラウレイオン鉱山』についてなんか『怖いうわさ』を聞いてるらしいな。外では俺ら『奴隷』はどんな風に言われてるんだ?」


 アタランテはまた悲しそうな顔──いやだからその顔やめてくれって(懇願)──に戻って、


「……そりゃあ『鉱山奴隷』は『悲惨』で有名だから『毎日のように崩落がある』とか『関節を痛めても治療されずに死ぬまで放置される』とかいろいろ言われてるわよ……でも一番怖いのは『鉱山にはモンスターとパンが徘徊してる』って話ね。農民たちが何回も目撃してるのよね。あんたの所で『モンスターやパンに奴隷が襲われた』って話は聞いてない?」


「『モンスター』? そんな話は聞かねーな………つーかさっきも言ってたけどその『パン』って『食い物のパン』か? 『パン』が山の中を徘徊して回ってて奴隷を襲ってるのかよ?? そんなあほな話があるわけ……」


「『食べ物のパン』が『鉱山』に現れて『奴隷』を襲ってても別にそれは『おかしい話』でもないわよ?  だって『山』の中は『不思議』がいっぱいだから、『食べ物のパン』に手足がついて歩きまわって人間を襲ってても驚くようなことじゃないわ。『山』ってのはそういう場所なのよ(したり顔)」


「??? 何の話してんだよお前は……(困惑)」


 これは俺に『学』がないからわからねーだけなのか、それとも『アタランテ』の言ってることがマジでおかしいのかわからねー……というのがこの『当時』の俺の考えだった。


 いやだって、この話を聞いて『信じられる』か普通? まさか『未来』にあんな目に遭うなんてわかりっこねーだろ???




 …………まあいいか。そして案の定アタランテは呆れて、


「……まああんたもここに居ればそのうちわかることよ。それと後私が言ってる『パン』は『食べ物のパン』じゃなくて『食べれないパン』のほうよ……ってあんたもしかして『パン』が何なのかわからない??」


 そういう顔されると俺は『馬鹿にされる』のが死ぬほど嫌いだからいきり立っちまう。


「ああ!? てめぇ年下のくせに俺を『無知』だと思ってんだろ馬鹿にすんな!? 俺だって『食べれないパン』くらい知ってるわ! ずばり『フライパン』だろうが俺の『教養』に恐れ入ったかゴラァ! ……『フライパン』が山の中徘徊して奴隷を襲うわけねーだろてめぇーやっぱアホだろゴラァ!(セルフツッコミ)」


「そういうのは『教養』っていわないわよ! ていうか『フライパン』でもないし『年齢』は関係ない!! 『パン』は『牧神パン』のことよ! 『頭に山羊の角が生えてて腰から下も山羊! でも二本足で上半身は裸の人間の男』の姿をしてる『神様』のことよ! そういう噂聞いてない?」とアタランテ。


 …………なんだその変態野郎は??


「聞いたことねーよ(呆れ)。つーかそれ『山羊の毛皮を腰に巻いてて頭にも山羊の角つけてる変な男』ってだけなんじゃねーの??」と俺。


「とんでもない、紛れもない『神様』よ。だってその姿を見た者はもれなく『発狂』してしまうそうだから。そんなのが『ラウレイオン鉱山』をうろついてるとか怖くない?」とアタランテ。


「じゃあなんでお前みてーな小娘が一人で『ラウレイオン鉱山』に入ってんだよ(ツッコミ)。しかも『姿を見たら発狂する』のになんで『どんな姿してるか』がわかるんだよおかしいじゃねーか! お前俺を『バカ』だと思ってへたくそな嘘ついてんじゃねーぞ!」


「別に『矛盾』してないわよ! 『パン』の姿がわかるのは『発狂した人間』が皆『同じこと』をいうからよ! 『私はパンを見たの! あの頭に山羊の角が生えてて上半身は男だけど下半身が山羊のあの神様を確かに見たのよ!』とか狂乱しながら叫んでたらしいんだって! あんた全然信じてないでしょ!」


「なんでそんな『説明口調』なんだよ猶更信じられるか!(ツッコミ)…………たく、じゃあ『モンスターがうろついてる』って話は? 俺は『ラウレイオン鉱山』に『モンスター』が出るって話も聞いたことねーぜ? それも『山は不思議がいっぱい』だからか?」


 そう俺が尋ねるとアタランテがちょっと『深刻』な顔になりなんでか声を小さくして、


「…………そっちは全然違う話だわ。私の『村』では今すごく噂になってるんだけど、この前『大魔王テュポーン』が『アテナイ』に『使者』を派遣してきて『『ラウレイオン鉱山』が『トロイア人』に奪われそうになっているから我々が守ってやろうか?』って言ってきたのよ。もちろん本当は『守ってやる』んじゃなくて『ラウレイオン鉱山を寄こせ』って言ってるのよ? しかもその『使者』が着た後今度は『アッティカ』の上空を『モンスター』が飛び回るようになってて、たぶん『大魔王軍』が派遣した『偵察』だと思うんだけど……」



 アタランテがどんどん『会話』を進めるが俺はすぐに『待った』をかけてから、聞いた。




「…………ちょっと待て。まず『質問』をさせろ。『アテナイ』ってなんだ??」と俺。





 その言葉を聞くとアタランテが『ずっこけて』からまた起き上がって、


「『アテナイ』は『アテナイ』よ! 『女神アテナが住まう守りも堅き城の町』にして『英雄テーセウス』と『豪勇エレクテウス』が『王』たりし『アテナイ』! あんた『ペイシストラトスの屋敷』に居たんでしょ!? 彼は『アテナイ人』で『アレオパゴス評議会』で絶大な力を持つ『評議会議員プリュタネイス』よ!」とアタランテ。


「?? なに? 『アッテナイ』ってなんだ『ポリス』か?? 『アレモソレモ会議』?? 『ブリブリネイス』がなんだって!? 『アテナ』と『テセウス』と『エレクテウス』は知ってるぞ! 女神となんかすげー英雄なんだろ!?(曖昧) それがどうしたんだよ『ラウレイオン』と関係あるのか!?」と俺。




 俺は『教養がない』とはいえさすがに『女神アテナ』と『英雄王テセウス』と『豪傑エレクテウス』は知ってるぜ。まず『女神アテナ』は言わずと知れた『戦いの女神』で……『戦いの女神』だな!(大事なことなので二度いう)。


 そんで『テセウス』と『エレクテウス』は『どこにもないポリス』…………あれ? これがもしかして『アッテナイ』か?? ……の『王様』で、確か『テセウス』の方は『三人の仲間』と共に『大魔王テュポーン』に戦いを挑んで瀕死の重傷を負わせてるらしい。すべての男の子と奴隷が憧れる超格好いい英雄だぜ! 


 あと『エレクテウス』は……なんか『井戸』を掘ったんだっけ?(曖昧)あ、あれか? もしかして『素手で井戸が掘れるほどの豪傑』ってことか? 俺『豪傑』って話しか知らねーからわかんねーけど、確か『井戸』が関係しているから多分そういう話だったと思う、うん。なんかこれであってる気がしたきぜ……!



『全然違うっすよクレオン先輩(呆れ)、『エレクテウス』は古い時代の『偉大なアテナイ王』でアテナイの聖域である『エレクテイオン』に祀られている『英雄』っす。彼は『エレウシス』を征服して『アテナイ』の領土に加えただけでなく、『大魔王テュポーン』と戦った『英雄テセウス』のご先祖様でもあるんすよ。また同時に『ポセイドン』の息子でもあるので彼を祀る神殿『エレクテイオン』には『ポセイドン』にまつわる『聖なる井戸』がありまして、先輩はその話を勘違いしてるだけっす。あとこの神殿には『アテナ』が植えた『聖なるオリーブの木』もありまして、かつて『ペルシャ人』が攻めてきて『エレクテイオン』を放火しても『オリーブの木』だけは燃えていなかったという『奇跡』が……』とペンテシレイア。


 だあああやめろ! まじで何言ってんのかわかんねーだよ! それに今は関係ねーだろその話! アタランテの話が『脱線』するからやめてくれ! 


『全然関係ありまくりの話っすよ(呆れ)』とペンテシレイア。




 アタランテもそこで『え? こいつマジ?』という顔で、


「…………クレオン、あんたもしかして『自分がどこで産まれた』のかも知らなかったわけ? 『ペイシストラトスの屋敷』があるのは『アッティカ北東部』の『ブラウロン』って『村』よ。ていうかもしかして『ここ』がどこかもわかってない? 今自分が立ってる『土地』が『何地方』かわかってる??」とアタランテ。


「てめぇはとことん俺を馬鹿にするのが好きらしいな……?(ビキビキ) んなの知ってるにきまってんだろ! …………えーと、あれだ、『ラウレイオン地方』だ!(断言)」と俺。


「『ラウレイオン』は『山』の名前であって『地名』じゃないんだけど(呆れ)。今の話の流れ的に『アッティカ』だってわからない? 『アッティカ南部』の『スニオン地方』にあるのが『ラウレイオン銀山』よ。私の家がある『マロネイア村』も『スニオン地方』に含まれるわね」とアタランテ。


「てめーは『矛盾』している(断言)。さっきてめーは『ペイシストラトス』が『アテナイ人』だっていってたじゃねーか! つーことはあいつの家は『アッティカ』じゃなくて『アテナイ』にあるってことだ! だがてめーは『家はアッティカにある』っていいやがる! なんで『あっちこっち』と地域が変わるんだよ! …………あ、あれか? 『アッティカ』だけに『アッチカコッチカ』てか? こいつは一杯食わされたな!(爆)」と俺。


「『アッティカ』は『地域名』で『アテナイ』は『国名』よ!! さっきから『私が住んでる国の名前』で失礼な『親父ギャグ』連発してるんじゃないわよ寒いうえに失礼なのよ! 自分が馬鹿で理解力がないのを私のせいにしないでくれます??」


「ああ俺を馬鹿にしたな!? やっぱてめぇは『モンスター』だ『ノルマ達成』してやるううううう!!(逆切れ)」と俺。



 …………あとで聞いた話だが『アッティカ地方』という『でっけぇ地方』にあるポリスの名前が『アテナイ』らしい。『アッティカ地方』には『アテナイ』以外にもう一つ『メガラ』というポリスがあって、このポリスにも『将来』いろいろな『思い出』ができるんだが…………まあそれは今はいいや。だけどそんな情報『奴隷』が知っててもどうしようもないだろ? 死んだお袋はそんな話何も教えてくれなかったし、他の奴隷たちも同じだ。俺のそこら辺の知識は全部『ビチグソ野郎のヒッピアス』が俺を『馬鹿にする』ときに吐いた言葉だけだ。



『『ブリブリネイス』と言い『糞』の連発と言い『うんこネタ』が本当に好きっすねクレオン先輩(呆れ)』とペンテシレイア。


 うるせぇこっちは花の少年奴隷まっさかりだぞ(ドヤ)。




 俺は『アタランテ』に対して『逆切れ』して『一発殴ってやろう』と追いかけまわしたが──あ? 『女』を殴るのかって? 山賊にもモンスターにも『女』はいるぜ! ──やっぱり『アタランテ』は『とんでもなくすばしっこい』ので全く捕まえることができなかった。こいつは『やすやす』と俺の頭上を飛び越えるような『大ジャンプ』をさも『簡単そう』にやってみせるだけでなく、なんで『まっすぐの道』で普通に『駆けっこ』しても追いつけないんだ?? こいつの足マジでどうなってんだよ!!



「ぜぇ……ぜぇ……やっぱりお前のその『脚力』おかしいだろ……『鉱山奴隷』の中で俺はかなり足が速い方だぞ……? 『コドロス』やほかの大人奴隷どもに追いかけられてもぜってーに追いつかれねぇのに……ウェゲホッ!(むせた)……なんでアタランテにはまったくおいつけねーんだ…………」


 俺は走ってる途中で『ぜぇはぁ』息を切らしてその場に大の字に寝転がると、アタランテが近寄ってきて、


「……あんたはあんまり自覚がないみたいだけど、『奴隷』は『自由農民』よりずっと『粗末な食べ物』しか与えられてないから『ガリガリ』で『筋肉』が全然ないのよ。でも私は『自由人』だからもっといいものを毎日食べてるしあんたほど『重労働』もしてないから体力だって温存できてる。だからあんたが私に追いつけないのは『私が人間じゃない』からじゃなくて『あんたがすごく遅い』ってだけよ……いい加減私が『自分を助けに来た精霊だ』っていう願望から離れなさいよ(良心)」


「『農民』だって農作業は『重労働』だし『庶民』ならそんないい物食えてるわけねーだろ……(力ないツッコミ)」と俺。


「やっぱりわかってないわねあんた(ドヤ)。そこら辺の『ミクロなポリス』ならいざ知らず『アテナイ』は『世界一お金持ちの国』なのよ? だから『農民』でも毎日『お腹いっぱいお肉とチーズと小麦のパン』を食べられるわ! きっとあんたも私と同じ食生活をしてれば多分私なんて簡単に追いつかれるわよ……あ、そうだ。明日『うちの夕飯の残り』を持ってきてあげましょうか? うちの『白パン』は『パパ』の捏ね方と『ママ』の火加減が絶妙って『村』の皆が褒めてるんだから!(自慢)」とアタランテ。


「マジか……俺ってそんな『金持ちの国』に居たんだ……まあ『奴隷』の扱いは『金持ち』だろうが『貧乏人』だろが大して変わらねーってことか……(溜息)」と俺。


 ……俺はこの時『仰向けで大の字』になって地面に寝ていて、そんな俺の顔を『アタランテ』が立ったまま上からのぞき込んでいる形だ。ちょうど『月の光』がアタランテの『前』にあるので光でこいつのことがよく見えたわけだが……、


 …………『下』から見上げると『アタランテ』の『スタイルの良さ』がはっきりと見えた。なるほど『世界一裕福な国』となると『農民』でもここまで肉付きが善くなるのか…………つーかこいつ『12歳』っていってたよな?? 嘘だろ?? どう考えてもおかしいからやっぱりこいつは『精霊』か『モンスター』に決まってるな!(願望)



「……なんか失礼なこと考えてない?? なに? ていうかなんで私の身体を『睨んで』るの? あ、もしかして『毛虫』でもついてる!?(焦り)」とアタランテ。


「…………あーそんなところだ(適当)。あとこれは『お兄さん』の『老婆心』だが、お前ちょっと『無防備』すぎるぞ。もうちょっと『ガード』を固くした方がいいと思うぜ?」と俺。


「は? なに先輩面? ていうかあんたいくつよ? どうせ『7歳』とかなんでしょ? 『うんこ』連発してるから絶対年下だわ(確信)」とアタランテ。


「センスが『ガキ』で悪かったなゴラァ! 俺は『14』だなめてんじゃねーぞ!!(怒)」



 アタランテは俺の実年齢を聞いて『うそでしょあり得ない! どう考えてもおかしいからあんたこそ『精霊』でしょw』とからかってきたのでまた『殴ろう』と追いかけまわしたがやっぱり捕まらなかった。くっそこのアマ本当に腹立つ………(ぶつぶつ)……そして『息を切らしてまた大の字』になってる俺の顔をまた上からのぞき込んでアタランテが言う。


「…………まあ冗談はさておき、それじゃあここからは『待ちに待った』私の『作戦』を話してあげようじゃない! まずさっき私が『大魔王テュポーンが『ラウレイオン鉱山』を狙ってる』って話をしたでしょう? その件について『アレオパゴス評議会』では『ラウレイオン鉱山に軍隊をおいて魔王軍から守ろう!』って話にになってるそうなの。でもいくら『軍隊』を置いたとしても『鉱山』に『モンスター』が攻めてくるのは変わらないから、『鉱山奴隷』たちも『危険』になるのよ。しかも実はこの件について『トロイア人』たちも『『ラウレイオン鉱山』を狙ってるのは自分達ではなく『テュポーン』の方だ。むしろ自分たちが『ラウレイオン鉱山』を守ってやるからその代わり『鉱山の採掘権』を自分たちにも寄こせ』って要求してて、だからそれを利用して……」


 この『アタランテ』が話した『作戦』を聞いた当初俺は『何だその無計画な作戦は。そんなの『アトレウス家の守護霊が助けに来てくれるのを待つ』っていうのと何も変わらねーじゃねーか』って思ったわけよ。それくらい『アホらしい』話だったからだ。




 だが、この時の『アタランテと俺の会話』の『続き』は『次回』へ回させてくれ。本当はそこまで今回で『歌っちまおう』かとおもったんだけど、ちょっと長くなっちまったからな。


 だけど『次回予告』ってわけじゃあないが、ちょっとだけ『次回以降』の内容をここで語らせてくれ。






 あれは『『アタランテから初めて作戦』を打ち明けられた夜』の『次の朝』だったな。この時『奴隷頭コドロス』が珍しく『奴隷全員が朝飯』を食ってるときに立ち上がって『演説』を始めたんだ。


「…………おい『お喋り奴隷』ども俺に注目しろ! 今日は『ご主人様』からてめーら『道具』どもに『大事なお話』を預かってきたんだぞ! 俺の話を聞かねー糞奴隷はむち打ちだぞ! おらそことそこ! 今すぐ黙らねーと殺すぞゴラァ!!」とコドロス。


 俺達の『ご主人様』は『忙しい人』らしくて『奴隷』の前に姿を現すことは基本的にない。ただ『奴隷頭』のコドロスだけはたまに会うらしくて、こうやって『ご主人様の伝言』を伝えるんだとさ。つーても俺はこの時が初めてだったが。


 そしてコドロスに脅されて『おしゃべり』を続け居てた奴隷たちも『舌打ち』してから渋々黙る。そうやって場が静かになってから改めてコドロスが言った。


「…………てめぇらは初耳だろうが、今この『ラウレイオン鉱山』は『大魔王テュポーン』と『トロイア人』から狙われてて、こいつらがいつここに『軍隊』を送り込んでくるかわからねー。だが『アレオパゴス評議会』はこの鉱山を渡す気は当然『無い』らしくてな……」


 この時点でたぶん『奴隷』の半分くらいは話が理解できず『??』を浮かべていたし、中には『アレオパゴスなんちゃらってなんですか!?』と質問した奴隷もいたが、コドロスは答えずに『むち打ち』して黙らせちまった。説明する気は全くなかったらしい。


 コドロスは咳払いしてから、


「……一応『アテナイ軍』にここを守らせることにしたが、それでも貴様ら『奴隷』どもが『アテナイ軍』に反抗すると守れるものも守れなくなっちまう。だからてめーら『奴隷』どもも『ラウレイオン鉱山防衛作戦』に協力しろとの仰せだ! もしお前ら奴隷どもが『アテナイ』に『忠誠』を示して『防衛作戦』に貢献したら『褒美』を与えるんだそうだ! 少ない貢献なら『ノルマを免除』だけだが……もし『大きな武功』をあげる者がいたら『鉱山から出して別のところで働かせてやる』ことも考えるし、なんなら『奴隷から解放』も視野に入れるんだとよ! そこまでするくらい『アテナイ』にとって『ラウレイオン鉱山』は大事な大事な『銀山』なんだぜ! 気張れ奴隷ども! こんな『大チャンス』もう二度とねーと思えよ!!」とコドロス。



 ……『大魔王の攻勢』で『奴隷の値段が下がっている』から『ラウレイオン鉱山』での『鉱山奴隷』の扱いは『地獄タルタロス』そのものになってた。でもその『大魔王の攻勢』のおかげで俺の目の前には『自由を手に入れられるチャンス』が転がり込んできたってわけだ。


 これが噂に聞く『運命の車輪』ってやつか? 俺はこの時すげー『胸を踊らせた』んだけど…………まあ『今』の自分がこの時の自分に言ってやる『忠告』はこれだな。




『『『魔族最高の将軍』:テュポーンの娘スキュレー』と『『生ける伝説』:プリアモスの子ヘクトール』相手にそう簡単に『武功』をあげられるなんて思うなよ』…………だな。まじで『アタランテ』は俺にとっての『流星ディオスクロイ』だったんだよ。





 ここからが俺が『自由』を掴むために『血反吐を吐くような戦いの連続』の中に身を投じる羽目になる、その『始まり』に過ぎなかったわけだな…………。

 ペンテシレイア『『人権』は『全ての人間に生れながらある権利』を意味しているので『奴隷』であっても例外にはならないっすよクレオン先輩(良心)』

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