第二十四話:『狂気と恐怖の中でも光り輝く『真なる英雄』の証』
さてさて、では今回も引き続き『ヘラクレスの墓を守るマリス王ピロクテテス』と『ケンタウロイの高貴な一族の騎士ネッソス』が『キュクロプス族の国リムノス(レムノス)』で起こした『戦争』についてお話するっす。
っすがこの話はここから『複数の事態が同時進行』するためどうしても『わかりづらく』なると思うっす。一応『作者』は『極力わかりやすくなるように努力します』とはいってるっすが………まあ期待しないでほしいっすね、所詮は『凡才』なので(辛辣)。ああ、『ムーサ』よ、どうか『作者』に『詩人』としての才覚を与えたまえ。
(『自虐』し過ぎると『うざく』なるから気を付けた方がいいぜ、そろそろな)とクレオン。
レイアちゃんもちょっと調子に乗ってたっすね(素直)。さてさて、ではまず『毒矢を受けたピロクテテス』からいきましょうっすね~。
あ、ちなみにっすが『マリス王ピロクテテス』は『ネッソスの毒血』を受けても『即座』に『発狂して部下を虐殺』し始めたわけではないっす。最初『ケンタウロス兵』から『奇襲』を受けて『毒矢』が刺さった後、『毒血』が自分の『胸』に『しみ込む激痛』に『顔をゆがめ』ながらも、それでもなんとか『兵士たち』を『統率』してたそうっすよ。
(…………ここからは『バッコスの信女』たちの語る『演劇』に戻るし、また『時間』がちょっと『戻る』ことになるな)とクレオン。
クレオンが『特等席(舞台の真正面の席)』に座り、その周りには『ウキウキ』顔の『バッカイ』たちがやっぱり座ったり寝そべったりしており、彼女らを前にして『ピロクテテス役の信女』──名前は『エウリュメデューサ(『善良な統治者』の意味)』というらしいっす──が『苦しそう』にしながらも叫んだっす。
『『奇襲』を受けて『慌てふためく』ような奴は『トラキスの男』ではない! 貴様らはそろいもそろって『トラキスの女』どもだ! 『エウホイ・エウホイ』叫びながら『バッコス踊り』を踊っている場合か!? 『弓矢』はこう使うんだ愚か者どもがぁ!(射撃する真似)』と『ピロクテテス(エウリュメデューサ)』
すると『エウリュメデューサ』が『木蔦の杖』を弓に見立てて『見えない矢』を放ち、今度は『ケンタウロス兵』役の『コーラス』たちが騒ぎ始めたっす。
『おお! 我が胸が射抜かれてしまった! なんという冷静さと精密さだ!(絶命)』とケンタウロス兵の一人。
そう叫んで『コーラスのリーダー役』が倒れ、残りのコーラスたちが一斉に空を仰いで、
『激痛に苛まれながらこの腕、正確な射撃が『心の座(心臓)』を打ち抜いているではないか! 空を舞う『ハルピュイア』たちよ伝えておくれ、我らを恐れさせる彼こそまさしく『人間諸国一の弓取り』に違いないと!』と『コーラス』たち。
そこでクレオンが手をあげて一言。
「………なんだその『演技』、わざとらしいうえに説明口調すぎだろ(呆れ)」
「仕方ないでしょ、『本物の弓矢』を使えない以上こうやって『説明』しないと何やってるかわからないんですから(苦笑)」と倒れたままの『コーラス』の信女のリーダー。
『演劇』ってやつは『残酷描写』が『NG』なのでこれが限界っすが、『現実の場面』でも『奇襲』を受けた『マリス王ピロクテテス』は慌てず騒がず、『猛毒』が『鎧』を破壊して『自分の胸の肌』にしみ込んで『真っ赤に熱した金属板を押し当てられているような激痛』を感じながらも、すぐさま冷静に『ヘラクレスの弓』に『矢』をつがえて『構えた』っす。
『(『ネッソスの毒矢』か…………『本日の獲物』は『極上』だな………!)殺す!!』と『狩人ピロクテテス』。
『ヒヒーンッ!!!』と軍馬。
ちなみにこの時『王』は『テッサリア産の軍馬』にまたがっていまして、この『軍馬』が一番『奇襲』にびっくりして『飛びあがって』いたそうっす。
でも『ピロクテテス王』はしっかりと『両足の腿』を『絞めて』馬の『胴体』に自分自身を『固定』し、さすが日ごろから『馬』を乗り回していたので『馬が次どういう風に動くか』を『予測』することができたそうっすね。
「………あ~そういえば『テッサリア人』って『凄い優秀な騎兵』らしいな~、まあ『テッサリア人』っていってもなんか『いろんな民族』に分かれてるらしいけど」とクレオン。
余談っすが『テッサリア』で一番大きな国『ラリサ』を支配する『名門アレウアス家』はかつて『テュポーン』に『精強な騎兵部隊』を提供して『アカイア帝国滅亡』に大いに貢献したなんて『逸話』もあるくらいっすよ~。
「へ~! さすがアキレウスを産んだ土地だ! ……つーことは俺の仇じゃねーかよ!!」とクレオン。
「劇の間は御静かに~」と観客たち。
さて、そして『軍馬』が『ピロクテテス王』を『振り落そうと(早く逃げるため)』して『大きく飛び上がった』、その『瞬間』に、つまり『馬』が『ジャンプ』してできた『一瞬の滞空時間』で『狙い』を定め、『ケンタウロス兵』達を鼓舞するべく『最前線』に出てきていた『ネッソス』を『狙撃』したんすよ(『演劇』では『コーラス』の後ろにいたフィロメデュサに向かってエウリュメデュサが矢を射る演技をしたっす)。
『………死ねモンスターが!!』とピロクテテス(エウリュメデュサ)。
『む!? ぐあ!? 私の左目に矢があああああ!!』とネッソス(フィロメデュサ)。
『ネッソス』が『片目』を射抜かれて倒れ、『トラキス兵』たちも『王』の姿に『励まされ』てすぐに『応戦』したっす。なので逆に『急斜面』を駆け下りてきていた『ケンタウロス兵』達の方が『動揺』してしまったらしいっすね。
『『『うぅおお!?? ネッソス様の毒血が効いてない!? もしや『メディア』や『マカオン』がなにかの『入れ知恵』をしたせいで『毒血』が効かなくなっているのか!?』』』
『人間』も『モンスター』も変わらないっすが、『奇襲』が成功した時点で逆に『敵はろくに抵抗せずにすぐ逃げ出す』と勝手に決めつけてしまい、結果『少しでも抵抗される』と途端に『尻ごみ』してしまんすよね。『兵士の気分』は『どれだけ精強』でも『秋の空』みたいに変わりやすいものでして、これが何気に『奇襲』の『一番難しいこと』だとレイアちゃんは思ってるっす。
っすが『ネッソス』も『目に刺さった矢』を引き抜くとすぐに『高貴な身分』故負けじと叫び返したっす。
『ええい『奇襲』を敢行した側が『尻ごみ』してどうするんだ! くそったれ! こいつらは『メディア』にも『マカオン』にも『アポロニオス』にも力は借りてないし、『ネオプトレモス』からも『ケイローンの秘薬』なんて『都合のいい物』はもらっていない!! ただたんに『毒』が効くまでの『タイムラグ』があるだけだ! 逃げるな戯け者ども! 『神』の一族であることを忘れるな! 『才能なき人間ども』に恐怖するなど恥と思って戦えええええええ!!』とネッソス。
そう叫んで彼は『坂道を下るスピード』が『遠目からみてもわかるくらい遅くなっている』部下の兵士たちに何度も怒鳴り、さらには『兵士一匹一匹』の『耳』を掴んではそのまま『持っていた弓』でを『往復ビンタ』して叱りつけたっす。こうすることで『兵士たちの士気』を『再び盛り上げる』ことはできたんすが、せっかく組んでいた『隊列』が乱れてしまったっす。
なので『ネッソス』はすぐに『ケンタウロス兵全員』に『停止』を命じてからその場で『戦列』を組みなおすように命じたっす。
『いくら『戦意』を取り戻したとしても『戦列』が乱れていれば『兵士』は力を存分に発揮できない! すぐに『長方形の方陣』を組みなおせ! 呼吸を合わせて再度『射撃』しながら『突撃』するのだ!』とネッソス。
ああ、実は『ケンタウロス族』たちは兵士全員で『長方形』の形になり、『短い辺』を『前後』にして『兵士全員』で歩調を合わせながら『突撃(全力疾走ではなく『速足』っす)』しつつ兵士たちが思い思いのタイミングで『射撃』するっす。これは『演劇』では表現できないので再現されてないっすが、一方そうやって『ネッソス隊』が『隊列を組みなおしている(これを『再編成』というっす)』間に徐々に『ピロクテテス』が『正気』を失い始めていたっす。
『うぐぐぐ………ぐおぉおお………! い、痛い………(大量の汗)………く、薬をくれ! 『テッサリアの魔女』たちが使っていた『痛み止め』をすぐに持ってくるんだ!!(顔が真っ赤)』とピロクテテス。
『王よ! 治療より先にまずは『ケンタウロス族』から逃げなければ! 『トラキス兵』達の中で『王』を守るために『しんがり(軍隊が撤退する時に敵の妨害を阻止するために最後まで逃げない役)』を務めたがらない『軟弱者』は一人もおりません! 『王』よ、すぐに誰に『しんがり』の任務を与えるかお決めに………』と副官のメドン。
『があああああああ!! ヒィッ! ヒィッ! ヒィッ!(呼吸するたびに激痛が走るのでまともに息ができない) 薬! 薬を持ってこいと言って………いぎゃああああああ………!! ッ………!!(痛すぎて声が出せなくなっている)………ッ!!!!!!』
この時点で『ピロクテテス王』は『泡』を吹いてその場に倒れてしまい、顔は『赤』どころか『青』、そして『紫』→『白』へと急速に変化していったっす。しかも白目をむいて『痙攣』してしまい、明らかに部下たちの話が聞こえていなかったらしいっすね。
『王よしっかりしてください!! 我が主君ピロクテテス様しっかり!!! ………だ、だめだ! ええいお前たち『副官命令』だ! 全員が『散り散り』になって逃げるんだ! とにかく『生き残る』のが最優先で方法は何でもいい!! それで『ケンタウロス族』の追跡を躱せたら『○○』に集まるんだ! 聞こえたな!? では解散! さっさと逃げろおおおお!!』と『副官メドン』
彼がそう命じて『兵士』達の大半が『散り散り』に逃げ始めるのとほぼ同時に『ピロクテテス王』が『覚醒』したっす。
でもこの『覚醒』は穏やかなものでは当然なく、『激痛』に耐えかねて強制的に『意識』を『現世』に引き戻されたというだけだったす。なので『王』の眼は完全に焦点が合っておらず、『錯乱』による『幻覚』に惑わされながら文字通り『暴走』し始めたんすよ。
ちなみにこの『狂乱したピロクテテス』を演じていた『バッコスの信女』──『エウリュメデュサ』っすが──は『演技』が『迫真』でして、『全身の筋肉』を『躍動』させて『飛びあがって』みせてクレオン先輩を『ビクッ!』とさせ、さらには『口から泡を飛ばし』ながら叫んだっす。
『………があああああああああああああああああ!!! どこだケンタウロスどもおおおおおお!!! 殺してやるうううううううううううううううううう!!!』と『ピロクテテス(エウリュメデューサ)』
「…………(ぽかん)」とクレオン&観客たち。
………そしてここで『実際に起こった出来事』の方にまた『視点』が移るんすが、『ネッソスの毒血』で『錯乱』した『ピロクテテス王』は上の『俳優』が語ってる通り『狂乱しながら部下を射殺して回り、『矢』がなくなると部下の死体からはぎ取って補充してさらに部下を殺す』ということをくりかえしていたそうっす。そしてあまりの『主君の狂態』に『逃げようとしていたトラキス兵』の大半も戻ってきていしまっていたっすよ。
もちろん彼らが真っ先に『狩人の獲物』になったのは言うまでもないっす。
『王よおおお!! 私です! あなたの兵士です! 『ケンタウロス族』ではありません! 『ケンタウロス族』どもはあそこ(山の上)にいまして、あなたのまわりにいるのは仲間………ぐぎゃあ!(射抜かれて倒れる)』と部下たち。
『ぐおおおおおおおおお!! 殺゛し゛て゛や゛る゛そ゛モ゛ン゛ス゛タ゛ー゛どもおおおおおおお!!』とピロクテテス。
でも『目の焦点が定まっていない』はずなのに『矢』は正確に『部下』達の『急所』に突き刺さって『即死』されていまして、しかも『意識が混濁』しているのに逃げたり隠れて『羽交い締め』にする隙を伺っていた部下たちまで『察知』して殺し、しかも『声』を聞こえていないはずなのに『物音』には的確に反応していたらしいっす(『異常だろ』byクレオン)。
なのでこの時『再編成』を完了させつつ彼らを見守っていた『ケンタウロス族』の兵士たちも皆『唖然』としていて、
『………一体なんだあの『異常な射撃精度』は………(呆然)…………本当に『錯乱』しているのか? なんで一矢も外さないんだ………??』とケンタウロスα。
『もし『正気』だったらあんな『化け物』と我々は戦わされる羽目になっていたのか? 末怖ろしいお男だ『ポイアスの子 (ピロクテテス)』は………』とケンタウロスβ。
『さ、さすがに気絶して静かになるまで待ってたほうがよさそうだな………』とケンタウロスΓ。
『貴様らそんなに俺に殺されたいのか!? しにたくなかったらさっさとあの『狂人』を殺せ! もし『尻ごみ』するならこの俺が殺してやるぞ!!』とネッソス。
『『『は、はひぃ! 『尻ごみ』などしていません!! ご命令があればいつでも突撃でき………』』』と兵士たち。
バギャァッ!!
と、そこで『ピロクテテス』が放った『矢』が──さすがは『ヘラクレスが愛用していた強弓』だけありまして──『ケンタウロス族』のすぐ近くの『岩』を粉砕したっす。なので『砕かれた岩』の礫をあびた『ケンタウロス兵』が思わず『尻もち』をついてしまたっす。
もちろん『ネッソス』自身も思わずその場で固まってしまいまして、
『………よく考えたら『ピロクテテス』は勝手に『同士討ち』を始めてるんだから、とりあえず『岩陰』にでも隠れて『動かなくなるのを待ってる』だけでいいんじゃないか? あの状態だと奴の部下どももあいつを遠くに運べないだろうしな! よしお前ら! 全員で安全な場所まで撤退するぞ!』とネッソス。
『『『は、はい! 後退するぞ~~!!!』』』とケンタウロイたち。
彼らは『作戦通りまんまとトラキス軍に奇襲を成功させ敵軍を壊滅状態に追い込んでいる』はずなのに、『狂乱しているピロクテテス』に『恐怖』していたっす。なので『ヘラクレスの矢』がぎりぎり届かないけど、それでも『ピロクテテス』の姿を視界に収められる『小高い山の上にある岩陰』に隠れてじっと見守ることにしたんすよ。
っすが、そんな『ケンタウロス兵』の姿を見た『副官メドン』もすぐに兵士たちに命令を出したっす。
『お前ら逃げろ今の内だ! 奴らが『王』に恐怖して撤退した間に逃げて『カベイロイ族』の助けを求めるんだ! 『中立』の彼らが『ネッソス』と手を組んでるはずがないと俺は信じている(根拠なし)! だから彼らなら何らかの支援をしてくれるはずだ!!』とメドン。
『『『!? は!』』』とトラキス兵たち。
そのようにして『マリス(トラキス)兵』の『半数』ほどが脱出したのでそれを見ていた『ネッソス』もすぐに『ケンタウロス兵』に『追跡』を命じたっす。
『『カベイロイ族』に援軍など呼びに行かせるな! 面倒なことになるから奴らを全員殺してこい!』
『は!』
そう命じたのと同時に『副官メドン』が指揮する『マリス(トラキス)兵』の『半分』が『ピロクテテス王』を視界に納めつつも『距離』をとって近くにあった『岩壁』の向こう側に体を隠して『安全』を確保したっす。そして『ネッソス隊』の『半分』が『ネッソス』と共にその場にとどまって『狂乱しているピロクテテスが静かになる』のを待ち、『もう半分』が『カベイロイ族に援軍要請』を伝えにいった『トラキス兵』達を殺しに出向いたっすね。『この場面』はここからしばらく『大きな動き』がなくなるっす。
ちなみにこの時『ネッソス』は『岩陰』に隠れるとすぐにその場でうずくまって『懊悩』ししはじめたらしいっすね。
『………な、なんてことだ………! なぜあれだけ兵士たちに偉そうなことを言っておきながら結局『ビビって』しまってるんだ!? お前は『アカイア人』どもが知らない『新戦法』まで駆使ししてやつらを『壊滅』させてるんだぞネッソスよ!? しかも『俺の血』のせいで『狂乱』して手が出せなくなるとか笑えない冗談すぎる!! これで『ピロクテテス』を始末できなかったら俺は『スキュレー姫』になんて言い訳すればいいんだ!? おしまいだ! 俺はおしまいだ!! もはや『ケンタウロイ』達の『未来』もたたれてしまった!! 俺は親父やお袋になんて言ってわびればいいんだあああああああ!!(悲鳴)』とネッソス。
確かに『自分の毒』の効能を理解していたはずなのに『この体たらく』なので『間抜け』以外の何物でないっすよね(嘲笑)。それでもまわりの『ケンタウロス兵』たちは慰めにかかりまして、
『隊長! これは仕方ないですよ! だってあの『ヘラクレスの弓』がおかしいだけなんですから!』と兵士α。
『そうですよ! 『普通の矢』を使ってるはずなのになんで『岩』を砕けるんですか!? あの『弓』が『事前情報』より『異常に強かった』だけなんです! これは仕方ありません!』と兵士β。
『今まで『ピロクテテス』はほとんど『大魔王軍』と戦っていなかったので『ヘラクレスの弓』に関する『情報』が不足してたので仕方ないです! だって『1000年前の弓』が『普通に問題なく使える』ってふつう思わないじゃないですか! 『キュクロプス族の仕事』が『神憑り』だって話で聞いていても実際に見てみないとわからないものですよ!』と兵士γ。
『うぅ………そんな『言い訳』すれば俺の『失態』が赦されるはずないだろ………一体俺はどうしたらいいんだ!? どうか『黄泉の国』より降臨して俺に『知恵』をさずけてくだされ『ケイローン』よ!!』とネッソス。
彼らの言う通り『ピロクテテス』が放っている『矢』自体は『まっすぐの木の枝』に『鷲の羽根』で作った『ごく一般的な矢』っす。それがなぜか『ヘラクレスの弓』によって放たれると『岩』すら砕ける威力になるわけでして……もちろんっすけど『ヘラクレスの弓』は『強弓』すぎて『特別な訓練を積んでいる王侯』でないと引けないっすけどね。
そして『副官メドン』と『トラキス兵』たちもまた『ピロクテテスを回収できるチャンス』が巡ってくるのを待つことになったっす。なのでしばらくこの場には『動き』がなくなるので、ここで視点を移動して『キュクロプス族に援軍要請をしにいったトラキス兵たち』の方に移るっす。
これらの『マリス(トラキス)兵』たちは『ケンタウロス兵』が『追撃』をかけてくるのを理解してたので、あらかじめ兵士たちは『出来る限り固まらずバラバラにに逃げる』ことを選んだっす。
『不安でも仲間同士で固まるな! そして『森』とか『沼』とか『馬』が入りにくい場所に逃げろ! もちろん乗っていた『馬』は捨てるんだ! 背に腹は代えられん! 『ケンタウロス』も基本は『馬』だということを忘れるな!』とマリス兵たち。
この兵士の言う通り『ケンタウロス』たちは敵が『森とか沼』とかに逃げられると『走れなくなる』ため『追跡』が難しかったっす。といっても『走らなければいい』というだけなので『慎重に森を掻きわけたり沼地を迂回したり』しながら執念ぶかく追い掛けたっすね
『『沼地』には『マラリア』があるから兵士どももあまり近づきたないはずだ! 『森』は確かに俺たちの十八番の『弓矢』が使えなくなるが、それは『テッサリア人』どもも同じはず! そして『近接戦闘』ならむしろ我らの方が有利だぞ! 我らは『ひと蹴り』するだけで『革製の鎧』くらい簡単に破壊できるからな!』とケンタウロス兵たち。
『ケンタウロスどもは『怪力』だから絶対に『待ち伏せ』とかするな! 戦いを避けて全力で逃げろ! 『キュクロプスの洞窟』に逃げ込めれば俺たちの勝ちだぞ!!』とトラキス兵たち。
そして、その『トラキス兵』のある一人が『ケンタウロス族』の追跡を何とか振り切って『レムノス』の中の『ヘパイスティア(ヘパイストスの土地)』という地域を歩いていた時っす。この地域は『人間』からみると『ただの山林』なんすが、実はその森はすべて『ヘパイスティア山』の上にある『ヘパイストス神殿』の『鎮守の森』とみなされてるっす。なので本来は『カベイロイ族の許可なく入るとその場で死刑になる禁足地』なんすよね。でも知らないからしょうがないっす。
そして、その『兵士』が『ケンタウロス族』を警戒して『びくびく』しながら歩いていると、いきなり目の前に『一人の男』が現れたんすよ。
『うわぁ!? いったい誰だ貴様!? ケンタウロス………じゃないな。どこの人間だ??』とマリス兵。
その男──『知将オデュッセウス』は『愛想のよい笑顔』を浮かべて、
『私は『ラエルテスの子オデュッセウス』と申す。そなたの主君の『仇敵』ではあるが、今はその『憎しみの矛』をとりあえずは納めてくれないだろうか? 私は知っての通り『トラキス人』と殺し合う気なんてないのだからな』とオデュッセウス。
っすがこの『トラキス兵』は『真っ青』になって『弓矢』を構えまして、
『オデュッセウスだと!? 『ケンタウロス族』相手に『潰走』した兵士を『一人ずつ』殺しに来たのか!? 俺はこれでも『ヘラクレスの墓を守る国の民』だ! 簡単には殺されんぞ!!』と兵士。
『落ち着け、俺はお前さんを助けようとしてるんだ。そもそも考えてもみろ、『弓の名手トラキス人』相手に『剣で斬れる距離』まで『気づかれずに近づくこと』に成功しているのに、なぜあえてここで『会話』する必要があるんだ? 殺すつもりならもうとっくに殺している。ここにはそなたと私しかいないんだからな』とオデュッセウス。
確かにこの時の『オデュッセウス』は『孤立無援で森の中を彷徨うトラキスの弓兵に気づかれずに近接戦闘できるほど近づけているのに殺さずに会話を試みている』状態だったっす。これは同時に『自分がケンタウロス兵の化けた姿でもない』ことを証明していたので『トラキス兵』はすぐに弓矢を降ろして、
『………確かにあなたの言う通りだ。その『冷静さ』と『肝の太さ』は『オデュッセウス王』に違いありませんね。ですがあなたは『我が主君』を殺すために『応援』を募っていたのではないのですか?』
『あれは『ピロクテテス』が『なんやかんや』と理由をつけて『スキュレー隊』と戦おうとしなかったから仕方なくだ。どうせそなたら『兵卒』たちが『他の国が戦ってるんですから俺たちは戦争にいかなくてもいいですよね?』とかそんな『ふざけたこと』を要求してたんだろ? 『ピロクテテス』は『バカ』なうえに『変にお人よし』だからその願いを聞いていたに違いない………違うか?』とオデュッセウス。
『機略縦横の英雄』は『小ばか』にしているのを隠してなかったっす。すると『トラキス兵』はさっきとは違った雰囲気で『弓矢』を構え直して、
『………『戦争なんてしたくない、死にたくない』と思うのは『人間』なら『普通』のことですよ『イタケ王』よ。『人間諸国』にはそれこそ『綺羅星のごとき英雄豪傑たち』がいるんですし、今回は『人類最強のヘクトール』が頑張ってくれるらしいじゃないですか。『トロイア王国』は『周辺にいくつもの属国を持つ裕福で強大な国』です。我々のような『いくつもの小国に分裂したままのテッサリアの貧しい田舎者』たちが『命』を張って『戦況』が変わるとでも? 俺達が『出征』してもしなくても変わりませんよ』
するとオデュッセウスは『侮蔑&辛辣の極み』の顔で、
『かつて『四英雄ペルセウス』は『大魔王軍』の度重なる『攻撃』に嫌気がさした『アルゴス人』たちから裏切られたことがあったそうだ。『もう大魔王軍と戦い続けるのに疲れました。テュポーンが『自分から降伏した者達は丁重に扱う』と約束してくれているからもうやめましょう』とな………』
一旦そこで彼は言葉を切ってから、まただつづけたっす。
『………だが『ペルセウス』を『国外追放』した『アルゴス人』たちがその後『大魔王』から『どんな仕打ち』を受けたか知らないわけではなかろう? それでも『ペルセウス』は彼らを『丁重に弔って』から『ミュケーナイ』を創建したんだ。そしてその『伝説』が伝わっていたはずなのに『アガメムノン帝』は『私一人の命で帝国の臣民を助けてくれると約束してくれた』と進んで自分の首を差し出した。そのせいで一体どれだけの『アカイア人』が『死ぬよりも辛い目(奴隷化)』を強いられたと? お前は『シーシュポス』の『境遇』を見て『彼は本当に賢かった』なんて口が裂けても言えないはずだ、『恥』というものを持っているのならば………』
今度は『トラキス兵』が『逆切れ』して、
『我々は別に『大魔王軍の嘘に騙されて』戦っていなかったわけではありませんし、別に『絶対に戦わない』つもりだったわけでもありません! ただ『最終決戦』の時まで『力』を蓄えていただけで………』
『いい加減にしろ貴様! べらべらと減らず口を叩くな! 身勝手でふざけた理屈をこねおって、そんなに俺の『王笏(王権を象徴する杖)』で殴られたいか!?』とオデュッセウス。
この時この『知将』は本当に『王笏』を持っていたそうっす。ちなみに実はこの『王笏』は本当は『アガメムノン帝』のものだったそうで、『帝国滅亡』の時に『アガメムノン帝』を逃がすことが(本人が拒否したので)できなかった彼が仕方なく持ち出したものだったらしっす。
そしてその『杖』を見て『トラキス兵』は『降参』して、
『………今はそんな『説教』を聞きたいわけじゃないんですよ『オデュッセウス王』よ。確かに俺たちのように『大魔王軍との戦いの負担を背負いたくないから『のらりくらり』と戦争を避けている者達』は『世界中』にいるでしょう、ですがその者達『全員』に対する『怒り』を俺一人にぶつけないでください(不遜)』
『貴様の名前はもしかして『テルシテス』とかじゃないだろうなぁ………?(殴りそうになって止めた)………まあしかし、俺も俺の『作戦』があるからとりあえずはお前と『手を組む』必要がある(不満)。まず聞きたいが、『ネッソス』から逃げる時に『メドン殿』から何か命じられていたようだったが何を命じられていた?』とオデュッセウス。
『それは『何としてもキュクロプス族に助けを求めろ』と………って、ちょっと! あんた『ネッソスに奇襲された場所』に居たんですか!? こっそり見てたのになんで助けてくれなかったんですか!?』
そう、じつは先ほどの『ネッソス隊にトラキス軍が奇襲を受けた場面』に『オデュッセウス王』は『立ち会って』いたんすよ、といっても離れた物陰からじっと『観察』していただけだったらしいっすが。
すると『オデュッセウス』は悪びれもせずに、
『おいおい、お前も知っての通り私は『大魔王軍の激しい追撃』で『ともに戦った部下全員』を殺されてるんだ。そして『イタケ』に残してきた家臣たちは私が『ラードーン』から呪われたと知るなり『もうオデュッセウスは戻ってこないから俺が次のイタケ王になる!』と『反乱』を起こしやがってな………(思い出すだけでビキビキ)………ふふ、しかし連中は『私の自慢のテレマコス』が『始末』してくれたからまあそれはいいんだ(急に上機嫌)。しかし私はそれから『一人』で行動することにしている。かつての『部下』たちの『替わり』になる者たちなど世界中探しても見つかるはずがないからな………(今度は遠い目)………』
そこまで語ってから彼は『おほん』と咳払いして、
『………その話はわきに置いとくとして、そのような理由で俺があそこで『救援』に入るのは難しかった。そしてそれよりも私はあの『ネッソス』が使った『新戦法』を『分析』することの方が忙しくてな。その『分析結果』を『人間諸国』に役立てるためだと思えば諸君らの『敗北』にも『意味』はあった………いや、この世界に『無意味な敗北』など存在しないんだよ、違うと思うかい?』とオデュッセウス。
『つまりは我々を『実験動物』扱いしたということでよろしいですかねぇ………!?(殺意全開)結局『戦いを避けてる』んだから我々のこと非難できないでしょ!!(ド正論)『ピロクテテス王』があなたを憎む理由がよくわかりました! やっぱりあんたは私たちの敵………ぐあ!』
この『トラキス兵』は最終的に『オデュッセウス』の『王笏』に『鳩尾』を『突かれて』その場に膝をついたっす。『知将』は面倒くさそうに、
『………私とそなたらでは全然違う話だ。『頭の良い人間』にとって一番の『難題』は『救いようのない馬鹿者をどうやって納得させるか』だ。と言っても『動物』を『説得』するのに必要なのはその『習性』を理解することだがな………『無駄話』が長くなってしまった。ちょっと私についてこい。私は今『トラキス兵』達を集めて回ろうと思っているんだ。そなたらが『キュクロプス族』に『何の考えも無し』に『説得』しに向かおうとしないようにな………後は『ネッソス』以外の『他の者たちの動き』もそなたらは知らないだろう?』とオデュッセウス。
『………はい? 『キュクロプス族に何の考えも無しに』って、彼らは『大魔王軍』を嫌ってるんですから自分の国に侵入してきた『ネッソス』を追い出そうとするのでは??』とトラキス兵。
『『ネッソスはキュクロプス族にまだ気づかれていない』と思っているのか? 確かにそうかもしれんが、もしかしたら『キュクロプス族が大魔王に味方してる』線もあるよな?』とオデュッセウス。
『はぁ!? 何を言ってんですかあなたは! 『気位の高いカベイロイ族』が『テュポーン』の『奴隷』になどなるわけないじゃないですか! これまで『1000年』も執拗に『抵抗』し続けていたのに今更『降伏』するなんてありえませんし、そんな『噂話』もきいたことないですし………』とマリス兵。
『『秘密条約』が結ばれている可能性だってあるだろ? 例えば『『カベイロイ族』が『スキュレー』と独自に『アテナイ争奪戦が終わるまでは『カベイロイ族』は人間たちに協力しない。その代わり『スキュレー』も『キュクロプス族』に害を加えない』という条約を結んでいたら? あるいは『スキュレーのアテナイ征服に協力したら『金銀山』から得られる『一年間の収益』の『半分』を『カベイロイ族』に渡す』とかいう『秘密協定』があったら? そういった『盟約』が『ない』って保証があるか?』
問われた『マリス兵』は露骨に動揺して、
『う………た、確かにないです………はい………でも証拠が………』
『証拠は確かにないが、『疑わしいもの』ならある。この『偽ピュラデス』が持っていた『キュクロプス族の剣』がそれだ』とオデュッセウス。
彼が『偽ピュラデス』から回収した『キュクロプス族の鋼の短剣』が『太陽の光』を浴びて『キラリ』と光っていたっす。
………っと、ここで『演劇』の観客だった『クレオン先輩』が手をあげて叫んだっす。
「はいはい待ってくれ! そんな『秘密同盟』みたいな話ってありえることなのか!? その、なんつーか………昔そういう話が本当にあったのかよ!?」
すると『ネッソス役』から『オデュッセウス役』に『チェンジ』していた『フィロメデュサ』が答えたっす。
「いや、普通にありますよ? 例えば『テーバイの名将エパメイノンダス』は自国に反抗的だった『プラタイア』を『滅ぼす』ために、まずその『プラタイア人』を守っていた『アテナイ人』と『秘密裡(プラタイア人にばれないように)』に交渉して『一緒にスパルタ人を討つために同盟を結びたい』と言って油断を誘い、『アテナイ人』が『テーバイ人が攻めてこないのならスパルタとの戦いに兵士を回そう』と『プラタイア』に駐屯させていた『守備隊』を撤退させると、すぐさま『プラタイア』を攻撃して『街を地図から消す』なんてことをしてるんですよ。彼は同じような方法で『スパルタ人』も出し抜いて『壊滅的な打撃』を与えていますからね。彼の『知略』が『大魔王軍』を苦しめたことも事実ですが、彼はあくまで『テーバイ』を守りたかっただけで『人類』を守りたかったわけではなかったというのがすべての『不幸』の始まり………(溜息)………まあですので、『オデュッセウス』がその心配をするのは当然なんですよね」とフィロメデュサ。
この話にクレオン先輩は『衝撃』を受けてたらしくて、
「『秘密同盟』………そんなものが『当たり前』にむすばれるものだったら、そんなのもう『どこの国』の連中だって信用できねーじゃねーか………じゃあマジで『キュクロプス族』は『大魔王軍』と『秘密同盟』を結んじまってるのか!?」
「そうなんです、そこが『人間諸国』が分裂してる理由でもあるんです………まあその『詳細』は『この後』を見ていけばより『思い知らされる』ことになるでしょうが………それでも少し『ネタバレ』しますと、結局この時『オデュッセウス』に出会った『マリス兵』は『キュクロプス族』のもとにはいかずに『トロイア人』のもとに『援軍要請』することになるんですよ。この『機略縦横の知将』の『導き』によって………そしてここからは、すでに『出陣』しているはずの『ネオプトレモス』や、『スキュレー本隊』に『鉱山奴隷の反乱軍』たちの動きも絡んでくるわけでして、さぁ『戦記』は『本番』ですよ! 楽しみにしてくださいね~!」とフィロメデュサ。
本当に長くなってしまって進みが遅いっすね………(汗)………というわけで続きは次回っす~!(バイバーイ)
アタランテ「私は『トラキス』と聞くと『ソポクレス』の悲劇『トラキスの女たち』を真っ先に思い出すわ。『史実』だと『四英雄ヘラクレス』は『パイアとヒュドラの陰謀』で『毒殺』されてるけど、この『演劇』だと『『夫ヘラクレス』が『妾イオレ』に夢中になってるのを悲しんでいた『正妻デイアネイラ』が『ネッソス』に『俺の血は媚薬だよ』と騙されて夫に毒をもってしまう』という『妻のけなげな愛が夫を破滅させる』って『エモい』話になってるのよね。『田舎のディオニッシア祭』で『鑑賞』したとき『やっぱりこの人天才だわ!』って感動したの今でも覚えてるわ~(うっとり)」
ペンテシレイア「その『あらすじ』を聞く限りだと結構『(精神的に)グロい』話だとは思うっすが『エモ』はかんじなくないっすか??(理解できない)」
コドロス「『イオレ』は実在の人物で『スパルタ王妃ヘレネ』に匹敵するくらいの『絶世の美女』だったらしくてな。『ヘラクレス』は『妻デイアネイラ姫』がいるのに『イオレ姫』に一目ぼれして『イオレの父(一国の王)』に『娘さんをください!』と頼み込み、『いやお前既婚者じゃん』と拒否されると『逆切れ』して『イオレの祖国』を『滅亡』させて無理やり自分の『側室』にしたって『伝説』が残ってるぞ(マジ)」
スキュレー「どこが『英雄』??(困惑)」




