第0話 プロローグ
新作書いてみました。他の2作品は少し疲れてしまったので…
他の作品共々、感想をください
他の作品含めやる気がある時に書いているので、かなりの不定期更新となっております
「にゃ~ん」
「よしよし、良い子良い子」
様々な植物で飾られた庭園で、1人の少女が金色の目の白い猫を撫でていた。
長く美しい金髪、ラピスラズリのような深い青色の瞳、絹のような肌、白魚のような手の少女。その少女のいる場所は、城だった。彼女の名は『シルフィ・リ・メイリエス』。ここ、メイリス王国の第一王女にして、唯一の王の子である。そしてメイリス王国は男系という訳では無いので、彼女は王太女である。
そして、メイリス王国はこの世界【アルメア】で最も発展した国。その国の王太女ともなれば、凄まじい警備の中にいなければならないはずなのだ。だが彼女の周りに人は見えない。何故か。それは………
「あんなに護衛がいたら息が詰まっちゃう。私は『エイス』だけで良いのに………」
そう、彼女は護衛の目を掻い潜り、普段過ごしている王城の中から抜け出して、庭園までやって来たのだ。16歳の少女に、一日中城の中で騎士に囲まれて過ごすなど無理な話だったのである。
そして庭園で大好きな猫を見つけ、そのまま撫で始めたというのが今の状況である。当然城内は天地がひっくり返ったかのような騒ぎで、武官も文官もメイドも執事も、さらには大臣まで駆り出しての大捜索が行われている訳だが、外という発想は誰も思いついていなかった。いや、誰も、というのは間違いだった。
カシャッカシャッカシャッカシャッ…………
と、鎧のパーツ同士がぶつかり合うような音がシルフィの元に届いた。
「嘘、誰か気づいたの?隠れないと……」
「にゃん?」
彼女は不思議そうに見上げてくる猫に、
「ごめんね、また今度ね」
とだけ言って、あろうことか茂みの中に隠れた。一国の姫が、である。するとそこに、銀髪に銀の瞳の少年がやって来た。
金色の装飾が施された軽量ながら強固なミスリルアダマン合金の鎧に、赤いマントを着けた近衛騎士の装備である。
「姫様!…………あれ?おかしいな、確かに気配を感じたのに」
彼は『エイス・アルヴァ』。シルフィと同じ16歳にして、騎士となった10歳からたったの2年で近衛騎士まで駆け上がり、たまたま訓練中にシルフィに気に入られて姫付きの護衛に選ばれた天才騎士にして、この物語の主人公である。(えっ姫が主人公じゃ無いの?って思った人、キーワードを良く見ようね)
「……ん?猫??」
エイスは猫がいることに気がついた。シルフィに選ばれてから4年の年月のほとんどの時間を共に過ごして来た彼は、シルフィが猫が大好きであると言うことも知っている。なんなら彼も好きである。
「ならやっぱりこの辺りに……シルフィ様?」
彼は姫に名前で呼ぶように命じられていた。だが周りに他の騎士や兵士、家臣がいる時にそう呼ぶのは不可能なため、シルフィが妥協し二人だけの時は名前で呼ぶようにしていた。
「ッ!…………………」
「姫様!?……………そんなところで何をしてるんですか……?」
「あうぅ………」
名前を呼ばれ、周りを見ようと少し動いただけでエイスに気づかれてしまい、微妙そうな顔をしながらシルフィは茂みから出てきた。そしてどう反応すれば良いのかわからないエイスに突っ込まれ、顔を赤く染めた。
「まったく……あんまり逃げ出さないでくださいよ、陛下が僕たちを怒鳴り付けた後号泣してましたよ?先輩方も死にそうな顔してましたし………」
「ごめんなさい…やっぱりお城の生活好きじゃ無いの……」
「好きじゃないって………まぁ、とにかく戻りましょう?そろそろ陛下が御乱心してしまいそうですので………」
そういって、エイスはシルフィを連れて城内へ戻って行った。残された猫は、その赤い目を煌めかせながら庭園の外に出ていった。