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ナナ  作者: T2BK
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ナナ4

ナナ4


ナナの母親、美奈子は結婚生活に満足していた。

アイツがこの家に来るまでは。


美奈子の夫は穏やかな性格でいつも美奈子を労ってくれた。

チェーンスーパーの雇われ店長をしていた。


美奈子は建設会社のOLをしていたが、子供ができたのを期に仕事を辞めて専業主婦となった。


夫は仕事を続けて欲しかったが、美奈子は子供が小学校を卒業するまでは、自分の近くに常にいて欲しかった。


二十歳で結婚し、五年経ってやっと出来た子供だ。

美奈子は子供が出来たことが分かった時は、本当に小躍りした。

もう出来ないと思っていたのだった。


夫に伝えた時、万歳をして凄く喜んでくれた。


これから三人だけの幸せな生活が始まる。

美奈子は神様に感謝した。


 

それは娘が一歳の時だった。

今日の夕飯は夫が大好物なコロッケにしよう。

「美奈子の作るコロッケだったら毎日でもいい」

夫はいつもそう言って笑った。


美奈子は娘をおんぶして買物に行き、家に戻った。

玄関に女性の見慣れない靴があった。


義母の靴だった。

夫と義母が向き合ってテーブルに座っている。


「美奈子、帰ってきたか。ちょっと座ってくれ」

美奈子は、微妙な空気に戸惑いながら、娘をおぶったまま腰をかけた。


美奈子は義母のことを嫌っていた。

自分勝手で下品だ。

夫は優しい性格から母親のことは悪くは言わない。

しかし、美奈子は会うのも嫌だった。


娘の名前も強引に名付けられた。

『ウメ』だ。

当然、美奈子は猛反対した。

そんな大正時代のような名前ではなく、現代風のカワイイ名前を付けたかった。


しかし、夫も強く反対出来ず、いつの間にか、役所にその名前で提出されてしまった。

 

義母が住んでいるのは福島県なので、東京までは気安く来れない距離だ。

何で急に来たのだろう。 

嫌な予感がする。

 

「美奈子、母さんが父さんと離婚した。住む所がなくなったんだ」

夫が俯きながら呟いた。


いい加減、義父に愛想が尽かされたのだろう。

それで、まさか。


「しばらく、うちで母さんを生活させたいんだ。

次に住む所が見つかるまで」

悪い予感が的中した。


「美奈子さん、申し訳ないね。

すぐ出て行くから」

義母がしおらしい声で言った。


そんな演技はお見通しだ。

しかし、夫にこの状況で断ることは、美奈子には困難だった。

 


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