ナナ20
ナナ20
「まさか、美奈子か?‥」
涼子の父、光雄は驚愕し後退りした。
「え、嘘でしょ。光雄さんなの?‥」
美奈子も後退りしている。
涼子とナナは、その様子を見ても何がなんだか分からなかった。
「涼子が世話になっていたのは、美奈子の所だったのか‥」
「涼子の父親ってあなたのことだったのね」
二人とも身動きが取れず、目がまん丸になって、しばらくお互いを見つめあっていた。
「まず、座って話そう」
光雄が皆をテーブルに促した。
光雄と涼子が隣に座り、美奈子とナナが隣に座った。
でも、誰も話さない。
数分が経過し、ナナが口火を切った。
「二人は知り合いだったとは何となく分かるけど、どうゆうこと?私たち、よく分からないんだけど」
「そうか、美奈子も昔のことは話していないんだね。俺も涼子には話していない」
それから光雄はゆっくりと話し始めた。
「俺と美奈子は夫婦だった。でも、あることがあって、美奈子は家を出て行ったんだ。
それから涼子は俺が一人で育てた。
涼子は本名は『ウメ』っていうんだ。でも物心がついた頃本人がどうしても嫌だというので、戸籍上はウメだけど、涼子と呼ぶことに二人で決めたんだ。
そして、美奈子が出て行って一年後くらいに、美瑛で農家をやっている叔父が亡くなって、跡取りがいないので俺が継ぐことになったんだ」
美奈子は涙目になって聞いている。
「美奈子が出て行って一か月くらい経った頃、シェリーという人が訪ねてきた。
美奈子に子供が出来た。私と美奈子で育てると言ってきた。
俺は美奈子に戻って来るようシェリーさんに頼んだ。でもシェリーさんは美奈子は私の娘同様だ。生まれてくる子は私の孫だ。
もう美奈子はイキイキと新しい生活をしている。今後、一切構うなと息巻いた。
美奈子は、もう俺たちとは関わりたくないのかと思った」
光雄は視線を逸らし、窓の外を見た。
「違うよ。あなたとウメのことは忘れたことはないよ。ただ、あの時‥、あの時あなたのお母さんを‥」
美奈子は言葉に詰まった。
「あれはおふくろの寿命だったんだ。美奈子のせいではないよ」
光雄は窓の外から視線を戻し、美奈子を見た。
「俺は美奈子と涼子のことは忘れたことはないよ」
光雄は涙が流れるのを拭こうともしなかった。
涼子とナナは事情が何となくつかめてきた。
「え、そうすると、涼子と私は姉妹なの⁈」
ナナが涼子を顔から足の先まで見た。
「そうゆうこと⁈‥そうすると美奈子さんは私のお母さん⁈」
今度は涼子が美奈子の顔から足の先まで見た。
「涼子は‥私の娘⁈‥」
次は美奈子が涼子の顔から足の先まで見た。
「この子は、俺の娘か⁈‥」
そして、光雄がナナの顔から足の先まで見た。
四人とも涙が流れてきて、顔を見合わせた。
しばらく涙が止まらなかったが、最後には皆、笑顔になった。