ナナ2
ナナ2
バーテンダーは涼子を一階に連れて行った。
昨日は酔っていて気が付かなかったが内装も鮮やかな青を主体にしたオシャレな感じのバーであった。
不安気な涼子にバーテンダーはとりあえずの仕事を教えた。
「一時間位で帰ってくるからよろしくねー。そうそう私はナナ、昨日教えたけど覚えてないでしょ」
ナナというバーテンダーは鞄とスマホを手にして店を出て行ってしまった。
涼子はどうせ会社も辞めて何もすることない、仕方ない、この状況の流れに身を任せようと思った。
そんなことを考えていたら、ドアが開いた。
涼子はドキドキした。初老の男性だった。
「あれ、君、誰?」
「留守番を頼まれた者です。ナナさんはまもなく戻りますよ」と応えた。
「あ、そう、じゃあハーパー、ダブルで」
ハーパーダブル?
はて、なんだろう、それ。
「ああ、自分で作るからいいよ」
その客はカウンターの中に入ってきて、数あるボトルの中から一つ取り出して作り始めた。
手際がいいな、よくこの店に来ている常連なのだろう。
「こうやって作るんだよ」と教えながら作っているが、全く頭に入ってこない。
早くナナ帰ってこないかな。
客と二人だと気まずいな。
そんなことを思っていたら、急にドアが開いた。ナナが戻ってきた。
「三枝さん、もう来たんだ、今日は早いね」ビックリしたようにナナは言った。
「今日は仕事が早く終わったんだ」
三枝はハーパーを飲みながら言った。
「この子は涼子。今日からうちで働くことになったんだ」
ナナは三枝にそう言った。
「え、私、そんなつもりじゃないです」
「でも涼子、あなた、今日からどうするの。
会社辞めたんでしょ。
最近うちで働いてた子が辞めたんで、ちょうど良かった」
「うん、いいんじゃない、涼子ちゃん美人だし、ナナも美人だから二枚看板でお客さんもたくさん入るよ」
三枝が二人を見て満足気だ。
「たくさんお客さんが入るといいんだけど。
コロナ禍で全く入らなくなったわ。
涼子、そうゆうことで頼むね。
給料はそんなに払えないけど、二階の部屋使っていいし、風呂も入っていいよ。
ゴハンは適当に作って食べていいから」
涼子は戸惑った。
自分で客商売が出来るのか。
ナナは昨日会ったばかりなのに信用して大丈夫なのか。