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ナナ17
ナナ17
「もうすぐ、うちに着くよ」
涼子が嬉しそうだ。
父と会うのもコロナ禍で控えていた。
三年振りに会う。
実家の敷地に入った。
「ここからうちなんだ」
涼子はそう言ったが、家が見えてこない。
道の左右の畑にはとうもろこしが生っている。
しばらく車で走り、そのとうもろこし畑が終わったところに、二階建ての大きな家が見えた。
東京では、こんなに大きな家は見たことがない。
「うわ、デカい家だ。涼子はここで育ったの?」
ナナが家を見上げた。
玄関の前に車を止めた。
家から真っ黒に日焼けした四十才位の男性が出てきて、涼子に手を振った。
三人は車を降り、男性に挨拶をした。
「涼子、久しぶりだな。元気にしとったか」
その男性は懐かしそうに目を細めた。
「ケンさん、久しぶり。こちらは東京でお世話になつてる美奈子さんとナナだよ」
「ワシはここで昔から働いている者です。ケンと言います。よろしく」
美奈子とナナはお辞儀をした。
「ケンさん、お父さんは?」
「町の寄り合いに行ってて、帰って来るのは夜になるよ」