ナナ14
ナナ14
七月に入ったころ、二人でいつものように仕込みをしていた。
「梅雨が明けたら、夏休みをもらっていいかな?」
涼子はナナに尋ねた。
「いいけど、どこか行くの?」
ナナは包丁をリズミカルに鳴らして野菜を切っていた。
いつも涼子はナナの包丁さばきに感心する。
「実家の北海道に行きたいんだ」
「そうか、涼子は北海道だったね。美瑛で農家をやってるんだよね」
「うん、いろいろ作っているんだ。そうそうラベンダーがすごく綺麗なところだよ」
「行ったことないな、北海道……」
ナナは呟いた。
涼子はナナと美奈子に北海道の壮大な風景を見せたかった。
「もし良かったら、ナナと美奈子さん、一緒に行かない?」
「え、いいの?」
「実家はバカみたいに広いから、泊まる部屋は大丈夫だよ。来てよ。お願い」
涼子は拝むように言った。
ちょうど美奈子は一階に降りてきたところで、二人の会話が耳に入った。
「いいね、みんなで行こう。私も北海道は行ったことないんだ」
美奈子が弾んだ声で入ってきた。
「よし、決まり。三人で行こう」
ナナが付け加えた。
「やったー。決まりね」
涼子は小躍りしながらナナの手を握った。
「涼子のお父さんにも会いたいな」
ナナは微笑んだ。
「私も!」
美奈子も同時に言って、三人で大笑いした。