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13. 機嫌

ふわふわな毛に包まれる感覚にパチリと目を覚ました。

視界に広がる白に近い金の毛並み。

黒い縞模様は全くないが、ホワイトタイガーと呼ばれるベンガルトラだと理解する。

動物は専門外だが、転生前に行った動物園で見た案内に書いてあったこともあり覚えていたようだ。

ただ、気になるのはこの喉を鳴らす音。

大型のネコ科動物は喉を鳴らせないと記載されていたような…?

3mを有に超える体躯にトラとは思えない長毛も私の知っているものではなく、そんなことを考えていると瞼が開き茶色の瞳が見えた。


「起きたか。」


「陛下…ですよね?」


「他に何に見える。」


「獣化された姿を見るのは初めてなので…。」


「そうだろうな。ロレインが初だ。」


「初、ですか?」


「脆弱な人種を喰うのに獣化など必要ない。」


「食すことが前提なんですね…。」


「和平条約を結ぶまで人種は単なる獲物だったからな。今でも変わらぬか。ロレイン以外は美味そうな肉に見える。」


ペロリと舌なめずりをした彼は人種を思い出しているようだ。

理性で食すか食さないかを決めているだけで、根本は変わっていないということだろう。

学園ではあまり危険な存在だと思ったことはなかったのに、彼らに出会ってから印象がガラリと変わってしまった。

これからどうなるのだろうと小さなため息を溢していると眠そうに欠伸をこぼしながら甘えるようにこちらへと顔を埋めてくる。


「…我の側にずっといるのだぞ。いいな。」


「ずっと、ですか?」


「そうだ。他の番は皆、親元へ返した。問題ないだろう。」


「番を一方的に辞めさせられるのはとても可哀想な事ですよね?恨まれたりしませんか…?」


「我の番になれることは名誉になるが、互いに好意があるわけではないからな。ロレイン以外は何もいらぬ。」


「これが獣の花嫁の効力。本当にすごいのですね。」


「…それだけじゃない。我はあの時のロレインに惚れたのだ。一度好意を持てば人種のように移り気はせぬ。グレアムとアンフィムも例え何があろうとお前を嫌うことはない。」


「私が別の人を好いていても…ですか?」


「現にそうだろう。シルヴァに好意を持っていると言っていたな。アレのどこが良い。」


「全部です。」


「…っ。」


自ら質問してきたはずなのに深く傷付いたという表情をありありと見せると胸に顔を埋め、黙り込んでしまった。

彼との番が無ければ断罪され、命を落としていただろう。

それを思い出してつい本音で話してしまったことに後悔しながら無言を貫くリオにどうしたものかと思案しているとノック音と共にバルトロが部屋へと入ってくる。


「陛下?執務のお時間ですが…。」


「…。」


「もしかして陛下のご機嫌を損ねたのですか!?」


「えっと…。」


「今すぐに陛下の機嫌を直して下さい!被害を被るのは我々なのですからね!」


彼の必死な姿にそんなに厄介なのかと首を傾げた。

とりあえず、サラサラの毛並みに沿って撫でてみるがやはり反応はなく本当に機嫌を損ねてしまったようだ。


「リオ陛下…?」


「…何だ。我には興味ないのだろう。」


「そんな事ありませんよ。興味のない方なら膝枕なんて致しません。」


「…なら接吻しろ。」


「え!?」


「それなら機嫌を直してやる。」


「…目瞑ってもらえますか。」


「良いだろう。」


いつの間にか人型へと戻ったリオはニンマリと笑みを浮かべ、そっと目を閉じていく。

少し緊張するものの、機嫌を直してもらうためだと意を決して触れるだけのキスをするつもりで近付いたのだが、いきなりパチリと瞼を開かれた。

腰を抱き寄せられ、楽しげな表情でキスを仕掛けられる。


「…っ。」


「いい表情だ。」


「もう、恥ずかしいので離して下さい!」


「一度じゃ足りないな。」


ペロリと唇を舐めると再び近付いてくる彼の顔にギュッと目を閉じれば、先程より深いキスに力が抜けていく感覚。

ベッドに沈む身体にドレスを紐解かれ、首筋をペロリと舐められる。


「このまま抱いてしまえばシルヴァは諦めざるおえないか。」


「っ!?抱くって…本気ですか…?」


「我の子を成すまで毎晩だ。」


「…私の意志は…?」


「嫌いではないのだろう。番であれば子を成すのは当然のこと。我だけではないぞ。グレアムとアンフィムの子を成すのも努めだ。」


「む、無理です!」


「獣人種は混ざらぬから問題ない。少し身体に負担は掛かるが、ロレインと我の子であれば愛らしいだろう。成してくれるな。」


有無を言わさぬその言葉に乱れたドレスを引き寄せ、後退りをするが体格差が大きすぎるため、意味はなく。

このままだと本当に襲われると視線を彷徨わせると、怖いくらいの怒気を纏ったグレアムとアンフィムが鋭い爪を纏っている。


「陛下、何をしているのですか…。」


「アンフィムか。」


「ロレインに手を出すつもりなら本気でお相手しますよ。」


「番であればこの感情は当然だろう。まさか、お前達はロレインにその感情がないのか。」


「あるに決まっているでしょう!ですが、嫌がることを無理矢理するのは私の趣味ではありません。」


「ロレインが俺を受け入れてくれる、その時まで待つつもりです。」


「ほう?シルヴァに取られる可能性があってもか。」


「「っ!」」


「ロレインはシルヴァの全てが好きだと言うのだ。ならば仕方ないだろう。」


「…そうなのか?」


「そ、それは…。」


「仕方がありませんね。本来であればロレインの気持ちを優先させたいのですが、シルヴァに取られるというのは癪ですから。」


アンフィムはそう言うとベッドに上がるとリオと同じよう頬に手を触れ満面の笑みを浮かべた。

一番に行動を移しそうなグレアムだけが、その場で留まっており、視線を向けると腕を引かれそのまま助け出される。


「…大丈夫か?」


「う、うん。グレアム、ありがとう。」


「…シルヴァに会いたいか?」


「それは…。」


「陛下、会わせる事は可能ですか。」


「…バルトロ、シルヴァを呼べ。」


「かしこまりました。」


明らかに再び不機嫌になったリオだが、シルヴァを呼び寄せること自体には反対せずこれから起きるであろう事態に大きなため息を溢すのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 獣人達が離してくれないところ。 [気になる点] 王室付き騎士のシルヴァ・クレイトル、彼がどんな人物なのかずーっと気になってました!
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