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今更ですが、閲覧やブクマなどありがとうございます。のんびり書いていく予定ですので、気が向いた時にのぞいてもらえると幸いです。
「なるほど、相分かった。だが勝手に行動するのは感心しない」
「はい…すみません…」
ヴァルトリに守ってもらいながら状況の説明をしたら、案の定注意された。
ガルディシアに魔族しか住めないのは、魔法を発現するために必要な魔素という物質が、この国の空気中には多く含まれているかららしい。
魔素はどこにでもあるらしく、それ自体には問題はないけど、一定量を超えて体内に摂取すると中毒症状を引き起こすそうだ。
発症する量は個体差はあれど、大体が種族毎に分けられるらしい。
そして、その基準値が一番低いのが人間なんだそうだ。
ヴァルトリは一応人間の私達を心配してくれていたらしいが、予想に反して私と航晴はぴんぴんしている。
これに関しては詳しくはわからないため、今のところ私達二人が異世界人だから、で片付けるしかないようだ。
それは私の夢に関しても言えることで、ヴァルトリでも聞いたことがない現象らしい。
「アレも考えなしではあるが、能力は規格外だ。撫子が特殊な能力を有していても何ら奇怪なことではない」
確かに規格外だわ。
考えなしの彼は、前方で楽しそうに剣を振るっている。
正面から突進してきた巨体を片手で難なく受け止めると、豪快に剣で斬りつける。
馬が金切り声を上げている間に、航晴の右手から飛んだ光線は兵士を貫き、馬共々動かなくなった。
本当に私と同じ時代から来たのか疑わしい程に戦闘慣れしている。
その左前方では、ツィピが自身の背丈以上はある棍棒のような武器を振り回している。
あの体のどこにそんな力があるのか、自身を軸として回転しながら敵を薙ぎ倒し、よろけることなく高く飛び上がった。
大きく振りかぶった棍棒を地面に叩きつけると、放たれた衝撃波が次々と兵士達を襲う。
平伏した兵士達の真ん中に舞い降りた天使は、「ヴァル様〜〜!」と嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら、こちらに向かって手を振った。
か、かわいすぎる…。
手を振り返しているヴァルトリが、完全に『授業参観を見に来た父親』の顔をしている。
そんな微笑ましいやりとりの最中、ツィピの足下に転がっていた一体の兵士ががばっと起き上がり、斧を振り上げる。
「あぶないっ!」
しかし、切っ先がツィピに触れることはなく、小さな体は右から飛んできた鎖に引っ張られ、同じ方向に飛んで行った。
優しく、均整のとれたエティの胸板で受け止められる。
航晴に剥ぎ取られた上着はニーミャがそのまま着用しているため、彫刻のように鍛えられた肉体が惜し気もなく披露されている。
ツィピを抱えたまま、鎖の先端についた鎌を素早く振り下ろすと、黒い斬撃が斧を持った兵士を切り裂き、再び兵士は地に臥した。
続けて、かかってくる敵を鎖でまとめて引き寄せ、鎌を上に突き上げる。
すると、どこからともなく現れた四本の黒い竜巻が、敵を呑み込み切り刻んでいく。
竜巻が消える頃には、静かに佇むエティとその周りをぐるぐる回るツィピだけが残されていた。
すかさず飛んできた鋭い視線から逃げるように、勢い良く顔を背ける。
戦闘中もちらちらと視線を寄越していたが、その目は「ヴァルトリから離れろ」と雄弁に語っていた。
試しに一歩下がると、それに気付いたヴァルトリに引き戻される。
いわく、結界を張ってるから不用意に離れるな、とのこと。
完全に失敗した。
さらに狂気めいた視線がビシバシと突き刺さる。
………あとで謝ろう。
嫉妬の炎を燃やすエティの後方には、本物の炎の壁が聳え立っていた。
緑色に激しく燃え盛る炎の奥からは、時折稲妻のような光が見える。
奥の様子は伺えないが、ニーミャの野太い笑い声がすることから、さぞかし楽しそうに戦っているだろうことが想像できる。
航晴が最後の一体にとどめを刺したのと同時に、可憐な笑みを湛えたニーミャも炎の奥から姿を見せた。
あんなにいた敵が一人も残らず地に沈んでいる。
本当にたったの四人で倒してしまったようだ。
信じられない光景に、思わず顔が引き攣る。
「あれか」
ヴァルトリの視線を追うと、いつの間にかアーチ型の扉があった。
ステンドグラス風の半透明な扉は、窓のようにも見え、描かれている植物や花が緩やかに動いており、まさにファンタジーといった感じだ。
「おお!隠しダンジョンか!英明なニーミャにさえ気付かせないとはなかなかやるな」
「師匠は引きこもってるからでしょ。俺達も姫様がああなってから全然来てなかったしね」
「さくっと行ってこよーぜ。腹減った」
さっきまで交戦していた四人は、まだまだ戦い足りないらしい。
すぐにも、ダンジョンに入る気満々だ。
「ツィピ、気を付けて行っておいで」
「はーーい!」
「エティも。気を付けて行ってきなさい。くれぐれもツィピから目を離さないように」
「うん。わかった」
ヴァルトリは引き続き私の警護を担当してくれるようだ。
お手数おかけします。
扉の前に四人が集まる。
私達が見守る中、ニーミャが扉に手をかけた。
が、何の反応もない。
「おんや〜〜〜?」
「んだよ。開かねぇの?」
「うむ。なんとも面倒な事に、五人でないと入れない仕様のようだな」
みんなの視線が私に集中する。
「………え?」