絶対にポーカーフェイスになれる方法
『なろうラジオ大賞4』の参加作品です。
困った時は妻に相談するのが一番である。
「うわーん! 助けて妻えもーん!」
「どうしたんだいダメ夫くん。また仕事でミスでもしてきたのかい?」
帰宅と同時に妻にしがみつく俺。
妻はどら焼きを齧りながら手馴れた対応であしらいつつも俺の頭を撫でてくる。
ふわぁ、妻の優しさがあったかいなりぃ……。
「聞いてよ、妻えもん。君に内緒でラスベガスでギャンブルしてきたんだけど大負けしちゃったんだ」
「クズだねぇ、いくらぐらい負けてきたの?」
「ざっと6億円ぐらいかなぁ」
「クズだねぇ」
サラリーマンの生涯年収の約三倍の負債を抱えて帰ってきた俺を呆れた眼で見る妻えもん。
「ダメ夫くん、借金を返す当てはあるのかい?」
「三日ぐらい昼飯を抜けばワンチャンいけると思う」
「いけるわけねーだろ。アンタは昼飯に2億も遣ってんのか」
「じゃあポーカーフェイスになれる方法を教えてよ、妻えもん」
「どういうわけかな? 色々と説明を端折り過ぎてない?」
「ポーカーフェイスを覚えれば次こそ勝てる気がするんだ」
「ギャンブルで借金返済する気満々だね。絶対に無理でしょ」
「ワンチャンいけるって」
「ノーチャンだよ、ワンちゃん」
そう言って、どら焼きを食べ終えた妻は「しょうがないなぁ」と椅子から立ち上がる。
「ポーカーフェイスになれる方法ねぇ。要は、表情が変わらないようにすればいいんでしょ? 今すぐポーカーフェイスになれる方法と、80年ぐらいかけてポーカーフェイスになれる方法の二つがあるけど、ダメ夫くんはどっちがいい?」
「今すぐの方で」
即答した。
なんだよ80年って。寿命で死んじゃうじゃん。
「あいよ。今すぐポーカーフェイスになれる方法ね。ちょっと待ってて。秘密兵器を取ってくるから」
そして、妻は冷蔵庫を漁り始めた。
冷蔵庫に秘密兵器があるんすか。
「お待たせ、はいどうぞ」
「これは……醤油?」
妻から手渡されたのは2ℓ近くある醤油ボトルだった。
「うん、醤油だね。これを一気に飲み干せば、ダメ夫くんも絶対にポーカーフェイスになれるよ」
「それ死んじゃうヤツ!? 醤油の一気飲みとか絶対に死んじゃうよ!?」
「そうだね。死ねば表情も簡単に変えられないし、私もアンタの遺産でウハウハさ」
「ガーン」
妻の冷たい一言に俺は絶句し、思わず真顔になった。
そんな俺の表情を見て、妻はケラケラと笑う。
「良い真顔になったね。その顔ならきっと勝てるよ」
このあと妻がギャンブルでメチャクチャ勝ちました。