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私が聖女様か女神様だって? エガちゃんそれっておいしいの? 2/3


______本当はHPとMPの消費は、エガちゃんの言うとおり、それほどでもなかったんだけど、私の疲労困憊している演技が効いたのか、午前中だけ治癒をして、午後からはお遊びと昼寝の時間を獲得したのでした。

 

  あんな小さな聖女様に無理はさせられねぇだ!  私は領民の声にただ感謝しましたよ。


どう言う訳かそれ以降、私が呼んでもエガちゃんの声は聞こえなくなった。


 

 そんなこんなで私は念願目標の8歳に到達しました。

「ふう、ここまで長く辛い3年間だった......まぁ領民の皆さまに感謝されるのは、別に悪い気持ちはしないけど」


 『私の願いは、こんな筈じゃないんだけどねぇ』


 もう美少女と言うより、小さな聖女様、女神様と領民から崇められて、私は本来の自分の目的を失ってしまったのです。


 「治療に来るのはほぼお年寄り様と、赤子から幼児なのです。イケメン、ツケメンどこ行ったぁぁ?!」


 私が気に入らない事がある。


 屋敷の門にはパパン特注の私の像が、領民に愛想笑いをしているんだけど。それに領民さんたちが饅頭や線香を備えたり、ちゃんちゃんこを着せたりと、日本の童話"傘地蔵"みたいな扱いを受けているのには正直参りました。

 『せめて綺麗な花とかじゃないの?  シチュエーション的に』


 いつの間にか屋敷の庭には、サーシャ様人形やクッキー、サーシャ様個数限定聖水、様々なグッズを売る露天商がテントを張り、結構儲かっているようだった。


 さぁさぁ有難い聖女サーシャ様の聖水だよ。ここで買わなきゃもう手に入らないってぇ代物だ。お代は特別に銀貨1枚に負けとくぜ。


 『聖水は何の水よ。ゲッ、まさかこの男爵家の排水じゃ!』

「そんな物絶対に買ってはいけない。売ってもいけないよ」


 しかし、所場代と売り上げの一部をパパンが懐へって、それ私のお陰でしょうに。


 『私のガッツリ恋をは、どこへ行ってしまったの?』

 見上げた空にカラスが飛んでいる。

 クカァァ~


 午後からの時間は、パパンとママンの花嫁英才教育が始まり、その為の家庭教師を数人、私に断りもなく科目ごとに雇ったのだ。

勿論、これは男爵家が聖女様効果で注目を浴びて、より爵位の高い地位を得る為だ。と思う。


 そして王家主催の社交パーティ(集団見合い)に私を無理やり連れ出し、ハムサンドやツケメンな子爵、伯爵クラスのボンクラとくっ付けさせるのだ。

 こんな事はラノベの悪役令嬢もので頻繁に登場する話で、私も良く知っているのだよ。明智君。


 『貴族社会の礼儀作法はめんどいが、社交ダンスは更に嫌いと言うか、もともと入院生活が祟って運動音痴な私だ。こればかりはエガちゃんに頼んでもどうにもならないだろう。いや頼んでみますか』


 「お~い、エガちゃん居るぅ~?」


 呼んでも返事が帰って来ない。期待した私が馬鹿だった。

エガちゃんでも出来ない事はあるのだろう。あいつ神じゃないの? ああん。


 「あの野郎、やっぱり使えねぇ~!」


 って言うか、5歳の時からいつもエガちゃんに見られているような気がするのよね~。あいつ本当はいつも私の傍に居るんじゃ?


『ぎく!』



考えてみれば、住む所=男爵家の庭園付き風呂付で大きな屋敷。気になる判定は=OK 合格だ。


男爵=金はそこそこ持っていて生活に困らない=OK


衣服=お嬢様なのでシンプルでは無いが、ゴージャスなドレスはたくさんある=まぁOK

 本当はTシャツとかスエット、デニムの短パンがいいんだけどね。


食べ物= コース料理が多いけど、食材は良い物を使っている。しかし味付けに醤油とかソースとか、マヨネーズにケチャップが無いんだよね~。ハンバーグにチキン、コーラにソフトクリーム。これが無いのは心底辛い=△だねこれは。基本塩味だし。


 娯楽=スマホにインターネット、流行のゲーム機スイッチョ、テレビにコミック、ビデオ、CDプレーヤー、コンビニもない! あるのは綺麗な空気と雄大な緑と大地って、そりゃ夏限定の避暑地ならOKさね、元JKの私にはこれはキツイわ。=X


 それにね、お友達なんだけど。同年代の子までが私を崇めるのよ、真面に話が出来ないんだよね。御学友みたいな優等生ちゃんしか居ない。

これもキツイわ。=X


 結論から言うと、衣食住は足りてます。でも聖女様、女神様と崇められても、私少しも楽しくないんです。


 こんな筈じゃなかったの。生まれ変わった私の人生はバラ色の人生を歩む筈だったのに。


 前世で病気にさへならなければ、好きな物を食べて、お気に入りの服を着て、仲のいいクラスメートとお喋りを楽しめたのに。イケメン、ツケメンライブにも出かけてたよな、きっと。行けなかったけど......。


 別に私の容姿は普通だった。エガちゃんに頼んで多くを手に入れた筈の今の私。

 なのに少しも楽しいとか幸せだは思えない。

憂鬱なのはパパンとママンが勝手に未来のハズを決めようとしている所だ。


 貴族の年頃の男性が皆美男子だなんて、わたしゃ、そこ迄信じちゃいないのよ。アレはコミックの中の話。登場する男どもが揃ってブサメンだったら、誰もそんなコミック読まないし買わないじゃん。



 不満が一杯だけど、やがてと殺場に連れて行かれる牛の如く、私は王家主催の社交パーティ(集団見合い)に。


 服は豪華で宝石類をごちゃごちゃ付けた御仁ばかりだ。

 身につけた服と宝石が泣いているのでは? それに皆ヅラじゃないの!


「いやぁ、このご令嬢が噂の聖女様ですか」

「これはこれはお美しい」


 『うっせーわ!  目つきがエロ丸出しで、禿げた頭が超キモいんですけどぉ。貴族ってロリ好きが多いから、私の身の危険アラームは最大RED表示』

 ピコーン ピコーンって私ってワザトラマン?


 私見たさの貴族たちは、想像する迄もなくやはりブサメンばかりだが、彼らの妻は揃って皆美人だった。


 貴族社会の地位を武器に、半ば脅しによって妻にさせられた女性もいるのだろう。


 「ふふふ、言う事を聞かねばお前の親や兄弟がどうなるか、その大きな胸に聞いてみるんだな」なんてさ。

 見回すと確かに妻たちの胸はデカイ!!


 8歳の私はまだツルペタだけど、ツルペタでもこの世界と言わずコアなマニアが存在するらしい。


『貴族なんて権力と武力と金で何でも出来ると思ってんのよね。それでいて自分より爵位が高い貴族にはペッコペコ。あ~嫌だ』


 そのご子息はと言うと、母方が美人なせいでハムサンドでツケメンな青年も居る事は居る。

一通りブサメンとツケメン青年に挨拶を済ませた私は、隅に佇む一人の男性に目が留まった。


挿絵(By みてみん) 吟遊詩人


 『彼は? 挨拶はしていないけど、あの身なりからすると貴族じゃない?違うわ、楽器持ってるから吟遊詩人かも。パーティに呼ばれて余興で来ているんだわ』


 憂いを漂わせた横顔に、8歳の私はトクンとしたのです。


 ブサメン貴族に用はないとばかりに、私はその青年に接近して私から挨拶をしたのだ。普通は男性側からだろうけど、そんなのお構いなしで。


 「こ、こんにちは。どうしたのです? こんなところで」


 ん? サーシャ様が部屋の隅で、一人何か話しているように見えるのだが。


 おや誰も居ない空いた椅子に向かって? 気分晴らしに独り言でも言っているんじゃないのか? 社交界なんて俺でも窮屈だからな。


 サーシャの行先は誰もが注目している。そりゃ美少女で聖女様とか女神様と言われているのだ。誰もが将来、愚息の嫁にと企んでいるのだから。

 息子の妻が聖女様か女神様なら、注目される上に金を稼いでくれるという計算だ。


 「あなたの名前は?」

......。

 「エドガー......ケ」

 「それだけですか?」


 「モーンド ムヨ」


 エドガーと名乗った青年は、それだけで逃げるように立ち去った。

「くぅ~、人が心配して声をかけたらコレだよ。名前と言いモーンドとか、態度がエガちゃんと良く似てたわアイツ」


 私はパパンとママンの所に戻ると、早速彼の事を聞いてみた。


「パパン、エドガーって誰?」

 !!


 愉快に貴族たちと話をしていたパパンとママンの顔が一瞬にして青ざめた。

 サーシャ、少し話が弾んでパパンは酔ってしまったようだ。さ一緒に少し部屋で休もうか。

 おいクラリス、お前も来るんだ。


 は、はい。

 サーシャとクラリスを休憩室に案内し、誰も居ない事を確認するとパパンが話し出した。


 いいかいサーシャ、お前には昔姉がいたんだよ。

「へぇ そうなんだ。それでお姉さまはどうしたの?」


 お前に似てそれは美人だったんだぞ。名前はケイティだ。


 ケイティはお前と同じ8歳の時に亡くなった。パパンとママンはケイティが亡くなってから、悲しみの余り一生懸命子作りに励んだんだよ。


 『いきなりなんなのさ』


 サーシャ、ママンも40歳なのに魔法と48手まで修行して励んだのよ。そしてやっと授かったのがサーシャなの。


 ジト目

『そんな話いらなくね?。それに48手を誰と修行してんのさ。ゲッ、まさか不倫!』


 『二人で熱く激しい情熱の......そりゃ8歳の私に話しても刺激はないと思っているんだろうけど、中身は全て知り尽くしたJKなんだけど』


 「それでパパン、エドガーって言ったらどうして驚いていたの?」


 うむ、どうしても知りたいか?

「あい、しりたいです」


 ケイティは生まれてからずっっと病弱でな。いつもベッドで寝ていたのだよ。

 『ふんふん。それもラノベでありがちなパターンだわ』


 ある日窓から見える青年が吟遊詩人だと聞いて、パパンがケイティの為に傍でお話と歌を聞かせてやろうと屋敷に呼んだんだよ。

 コクコク


 『ふんふん、それでそれで』


 一週間に一度、ケイティとその青年エドガーは会っていたんだ。


 『エドガーって。ほう、この先は聞かずとも何となくアレになる展開ですわ。ドキが胸胸するような結末は無いんだろうね、ケイティもう死んでるし』


 半年後ケイティの病気が重くなると、エドガーはぷっつりと来なくなってしまった。

 ケイティは譫言で彼の名前を呼んでいたよ。それなのに奴は来なかった!


 その三日後、ケイティはとうとう息を引き取ったよ。

 「パパン、エドガーはどうして?」

 その時は分からなかった。病弱なケイティに嫌気がさして、別の女と遊んでいるんだろうと思った。金は十分な額を渡してあったからね。


 「パパン、ママン、エドガーって悪い奴だったの?」

......。


 後で分かった事だ。

 エドガーは病気を治癒出来る治癒師を探していたんだと。

無駄な事を。治癒師なら私たちだって既に探していたんだ。大金を払って探させていたのだよ。


 彼もまた渡した金を全て使い果たして探していたらしい。

食う事も忘れてな。発見された時は痩せこけて死んでいたそうだよ。


 パパン、ママン......。


 エドガーに悪い事をした。そこまでケイティの為に。

そこで、彼の誠意に報いる為に、私たち夫婦だけの秘密だが、ケイティとエドガーを結婚させてやったのだ。無論二人共亡くなった後でだよ。


 「そうなの、亡くなってから二人は結ばれたのですね」

 『はぁ、案外厳しい話とオチだったのね』


 そうだよサーシャ、だからパパンとママンの秘密だったエドガーの名前をお前から聞いた時、本当に驚いたんだ。


話はそこまでらしい。

私たちは社交パーティが終わると、沈痛な想いで屋敷に戻ったのだった。





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