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私が聖女様か女神様だって? エガちゃんそれっておいしいの? 1/3

3話で完結する1話目です。

お下劣ギャグなので要注意願います。


挿絵(By みてみん)


    

  ボ~ン ボ~ン ボ~ン         

 草木も眠る丑三つ刻。湿気を含んだ生暖かい風が、少し開けた窓からぬるりと流れ込んで来ると、カラスの羽音が聞こえて来た。

 バザバサ クカァァ クカァァ~

 

 深夜の暗い部屋には、床に描かれた五芒星の頂点に置かれた5つの燭台が、横たわる女を中心にして、炎がゆらゆらと風に揺れている。


 スー ハー スー ハー

 女の吐く息が、怪しい深夜の秘密の儀式かと思える光景だ。生贄はその女なのだろうか。



______ ふんぎゃぁ~ ほんぎゃぁ~

 だ、旦那様! で、出ました。タマ 玉の無い女の子でしゅ!


「.....ジョセフィーヌ、それを言うなら玉のようなであろうが。それに我が子を出たとは、それではまるで幽霊ではないか!」


 し、失礼仕りますた。

「それにいい加減、その妙な訛りは治らんのか?」


 申し訳ありませぬ旦那様。私、ヨツ~ヤ家の出身でしゅから。


「ふむ、ヒュ~ドロ地方のカイダン村であったな。まぁいい。

 しかし我が子ながら確かに美しい顔だちをしておるな」


 「おおクラリス、よくやった。見ろかわいい女の子だぞ」

 『クラリス・ワークス!』


 あなた、私嬉しい。ラマーズ法と安産祈願の魔法陣が役にたったわ。

『ああ、さっきの呼吸の事か。それと魔法? しかし何故ビキニで出産を?』


 生まれて3日後に、私はサーシャと名付けられた。

中世ヨーロッパみたいな石造りの部屋に、貴族風の両親とメイドさんが数人居る部屋。

 『暗いけど屋敷の中なのね。ここは』


 私が何故、生まれたばかりなのに覚えているかと言うと、実は私は転生者なのである。


 JKの私は病院で息を引き取った。齢16歳で治療が出来ないほど進行していた癌。やつに蝕まれていたのだ。

『この頃どうも体調が悪いなぁと......原因はアレだったのかぁ、食べすぎかと思ってた』


 意識が朦朧として、自分でももう駄目だなと思っている時、時計を見て最後に奮発して神頼みをしてみた。


 無宗派の私に信じる神はなかったけれど、咄嗟に浮かんだエガちゃんみたいな顔をした神を想像して祈ったのだ。

丁度時計が午前2時50分だったから。


 『あのもしもし神様、今度生まれ変れるなら、お金のある家庭で超美人でキュートは絶対条件です。おまけにナイス・バディで。あっ忘れてた。病気とは無縁の鋼のような超健康体でお願いします。ラーメン』


 衣食住とお金、ハイ・スペックな容姿容貌は美女が生きる絶対条件なのだ。それに私16になるまで恋した事ないし、生まれ変わったらバシバシ恋に狂ってみたいのよね。入院してからは枕が私の恋人だなんて、もう嫌、こんな人生って感じ。


 『エガちゃん、私を男に転生させたら許さないから! それとボッキュン・ボンよ、ボン』

 仮にも神様をちゃんづけとは。


ヒュ~ドロドロ

「お前のその願いを叶えてやろう。但し異世界だけどな」

 『ぎょぇぇぇぇ!』


 そんな思念が頭に伝わって来たのは覚えている。


 午前2時55分、願い終えると突然私は興奮状態のまま息を引き取り、そして丑三つ刻の時計がボ~ンと鳴った時、私は、 ふんぎゃぁ~ ほんぎゃぁ~と生まれていたのだ。


 どうやらクラリス・ママンのお腹に居たベイビーに、強制転生したらしいのだ。


 『エガちゃん、そんな無茶な事して、本来のベイビーの魂とか人格を奪っていいものでしょうか?』


 心の中で問答していたら、エガちゃんからすぐ念話が届いた。

「問題はない。問答無用」だと。


 転生お上りさんの私に、アフターサービスは有り難いんだけど。


 『そこは心配ご無用ではないのかな? 問答無用って、それ問題なくない? 御免ね、これ私のせいじゃないから、恨むならエガちゃんにしてよね』


 視界もバッチリ、会話もしっかり聞こえ、私が居る場所は異世界の男爵家であると判明した。言葉も日本語じゃないのに理解出来ている。


 Why?


 私の願い通り貴族の男爵家ならそこそこ裕福だし、なにしろ食に困らない。綺麗なべべもあるし、何しろ私にはJKまで学んだ現代知識と、ラノベで読んだ異世界の知識がある。きっとこれから何かの役に立つ事でしょう。

 私ってこんなに楽天家だったとは。でもしばらくはママンの母乳でした。


 ちゅぱ ちゅぱって、自分のオッパイもそのうち、こうやって吸われるのかと思うと、ちょっと理性が飛んでいきそう。きゃん。


 やがて少しばかり成長してハイハイが出来る頃になると、自分の姿を鏡で見る事が出来た。


 エガちゃんが、ちゃんと私を超美人に転生してくれたのか、確かめたかったからよ。


 鏡に映る自分。それはそれは衝撃的だった。

ソフトウェーヴなブロンドの髪、オッドアイの大きな瞳と長い睫毛。

 パチクリ 

  パチクリ


『きゃ きゃわいい! エガちゃんGJ ! これは私の狙い通り8歳位で世間を騒がす、うんにゃ領地か。すんばらしい美少女と騒がれる事120%間違いなし。ふっ、これは決まったわね』


 この頃の私は、赤子のように泣き喚いたりはしなくて、ただいつもフンフンとご機嫌なのだ。BTSだよ。

 

 旦那様、サーシャ様だすが、何か妙に大人びているような気がするだす。

「そんな馬鹿な、まだ1歳にもならぬサーシャが。なぁクラリス」


 私は馬鹿なJKじゃない。両親の前では、普通に赤ん坊を演じていたのだ。

ただね、ジョセフィーヌにおむつを替えられるの、アレ嫌なの。早く成長して下着もオシャレにしたいの。


 って、ラノベに出て来るヒロインって、どんなパンツ履いているのかは知らないけど。ズロースって奴かな?


 『江戸時代の日本じゃ女性は赤い腰巻だったよね。それはつまり下はスッポン・ポンのアッパッパ~。流石に貴族社会でパンツ無しって事はないでしょうけど』


 後、心配してたのはお風呂。幸いこの地方は火山地帯にあり、温泉が豊富に湧いていて、我が男爵家にも温泉が引かれていたのは嬉しかったよ。

 ラッキー。


 生まれて来る時、温泉の生暖かい蒸気が窓から入って来たり、湯あみするカラスが鳴いてうるさかったけどね。


 温泉となればシャボンや香水も完備していて、風呂好きの私は大感激したものよ。なんせ美女が不潔じゃ洒落にならないし。


 はぁ、問題はトイレだけど、これは予想通りでした。パパンとママンがポットンしてた。

しかも紙は貴重品だしね、後で判明したんだけど、処理はクリーン魔法があるらしい。

私が読んだラノベには、トイレの記述は殆ど皆無だったからね、私も知識は無いのよ。




______8歳と言う目標年齢に達する前に、5歳でも私の容姿容貌が領民の間で評判になり、貢ぎ物と称して領民が私の顔を見に来る事が多くなったのし。


 ただパパンとママンもそれがとても嬉しいのか、領民を快く受け入れて私を紹介していたのだ。


 そんなある日。

 中年夫婦が同じように私を見に訪れた時。


『あれ? 旦那さんのこの雰囲気、ひょっとしたら私と同じ病気じゃ』

サーシャ・アイ! (言ってみたかっただけ)


 暫く私の大きくて美しいオッドアイの瞳が、旦那さんをじっと見つめ、初めて思った事を言ってみた。


「うぇ~と旦那しゃまは、お体が悪いのではないでチュか?」

 えっ!?

驚いたのは旦那様の妻だった。


「実は、ここ半年前から主人は具合が悪くて、寝たきりになる前に一度噂のサーシャ様のお姿をと主人が望んだものですから」


 『ああやっぱり。でも私には病気を治す力はないの。どうにもしてあげられなくて御免ね』

せめてとの想いで、5歳の少女が旦那しゃまの手を取った。


 「病気が治りまチュように」

 幼児言葉は演技です。


  すると

 パァァァァ

 私サーシャの手から黄金の光が旦那しゃまの手を伝わり、彼自身の体が光り輝きだした。

「サーシャ様! これは! 光に包まれて暖かい」


 光が納まると旦那しゃまはケロリとした表情で妻を見つめていた。

 あなた、今までとは別人のように元気そうよ。

 そうか、俺も体に力が漲っている! これはサーシャ様のお力!


 ははぁ~! サーシャ様ぁぁ! あなたは聖女様か女神様の化身だったのですね!

『あっコレ、転生もので良くあるパターンだわ』


 アゥアゥ


 あっけに取られているのは私の方だ。口をパクパクしていると、それが神々しい聖女様のお言葉と勘違いされてしまった。


 「もう大丈夫ですよ」 と仰られているぞ、お前。

 も、勿体ないお言葉で御座いますぅぅ。

  ははぁ~! サーシャ様ぁぁ!


 どういう耳してんだって言いたい。幻聴ですか?

5歳の美少女が、大感謝祭されてしまったのでした。


 やがてその夫婦が何度も感謝の頭を垂れ、腕を組んで帰って行く姿を、私はただ茫然と指を銜えて見送っているのだった。


 あなた。

 何だいお前。

 久しぶりに......ポッ

 おお! 息子もやる気になっておるぞ。



 ......。


 「ちょっとエガちゃん居る? なんなのコレは?」

するとまた聞き覚えのあるエガちゃんの声が、私の頭の中に即効で伝わって来た。


 「嫌だなぁ、なにこれは異世界転生で有名なギフトだよぉ。サーシャの場合はボッキュン美少女志望なんだからさ、一番いいのはヒール魔法だと思った訳さね」


「訳さねって。えっ、じゃ私、聖女様みたく癒しの魔法が使えるの?」

「問答無用」


「またソレかぁ。まぁ人の役に立つなら、聖女様とか女神様と呼ばれるのもいいかもだけど」


 「問答無用。あっ バイトの時間だ」


「詳しい事をなんにも言わずに、あのエガちゃんまた帰りやがった。美少女で聖女様か女神様か~、どうなんだろ、それって美味しいのかなぁ」


 って事件が発端で、我が男爵家には連日病人が押しかけて来るようになってしまった。しかし禿げた頭に毛は生えなかった。

 はぁぁ。


 男爵パパンとママンも我が子が聖女様なら、領民の為に治癒をしてあげなさいと、嬉しそうに私をコキ使うのだ。私はあんたたちの子供で馬車馬じゃないのに。


 『これって虐待ギリギリだよホントに。ここにはKOBANは無いからねぇ』

私が思うにそれには政治的駆け引きもあって、ゆくゆくは子爵狙いなのだろう。


 朝も早よから屋敷の庭には病人が並び、順番を待つ姿は正に大病院の待合室だ。

噂を聞きつけて、わざわざ他領地からも病人が来るので、パパンとママンは断る訳にもいかないのだ。


 私が一日で一番喋る単語はと言うと。

「ヒール! と よかったでチュね、お大事に」

 これを100回位言うのよ。勿論、聖女様はお金は取らない。


 傍らでジョセフィーヌがカルテなんか書いてるし、私って何科のドクター?

「ジョセフィーヌ、ジュース頂戴。とっても甘いもの」


 ゴクン

『う~ん美味い! もう一杯って、青汁でなくて良かった』

こんな事何日もやってたら、この歳で糖尿病になるわ。私。


 はぁぁ~。


「私はまだ5歳よ、これから成長して恋をバシバシしようと言う前に、今度は過労死するわ」

......すん


 「そう言えば、私って病気をしない鋼の体だったっけ。でも体力は5歳児なんだけど」


「一言もの申す!」

「またエガちゃんだ。私呼んでないし」


 顔は見えないが、私が想像したタイツ姿の神エガちゃんだろう。


「言い忘れたがサーシャ、君の体のHPとMPは結構ある。ケッコウな。あっバイトの時間だ!」


 アホかぁぁ! 結構って言われてもさ、どんだけなのよ! また詳しい事言わずにバイトに行きやがった。使えねぇな~!  エガ氏~!」


 「どんだけぇ~」

パパンとママン 5歳児なら普通毎日遊んで寝て過ごすのが仕事なんだよ。ガチでハードな仕事やらせてどうすんねん!


 5歳のサーシャ、私は怒りまくっておりました。





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