買い物
アパートを出て2人で並んで道を歩いている。
「うわっ、うわっ、アレ何ですか? 凄いです!!」
アリシアはあちこちにある色んな珍しい物に興味が有るらしく、キョロキョロと見回している。
おっと、前から車が来たな。危ないからアリシアを道路の脇にでも移動させるか。
「おい、アリシア『ヨシカズさん! 魔物です!! 危な~~い!!』か。」
ドン!
俺はアリシアに突き飛ばされた。
「ぐぇ!」
俺は壁へと激突して、鼻を思いっきりぶつけてしまった。
車はそんな俺達の脇を何事も無く通り過ぎて行く。
「何するんだよ!!」
「危ない所でした。隠れるところが無かったけれど、無事にやり過ごすことが出来て良かったです。」
アリシアが本気で俺を心配している顔を見たら、俺は怒るに怒れなくなってしまった。
「あのな、あれは自動車と言って、馬の無い馬車みたいな乗り物だ。魔物じゃ無いから大丈夫だぞ。」
「え? そ、そうなんですか? てっきり魔物かと思っちゃいました。」
「言い忘れていたが、この世界には魔物は居ない。だからその辺も安心して良い。」
「魔物が居ない!? そんなことって有り得るんですか!?」
「俺からすると魔物が居る世界の方が在り得ないんだがな、そう言う物だと納得してくれ。」
「は、はい。」
返事もしたし、大丈夫かな?
「あ、また来ました。今度は色違いです。」
アリシアはビクビクしながら自動車が通り過ぎるのを見ていた。
何事も無く通り過ぎたのを見て、どうやら納得したみたいだ。
「まぁ、中には無茶な運転する奴もいるからな、気を付けるに越したことはない。
向こうの世界でも暴走馬車とかってのも有るんだろ?」
「うん。そうだね。」
それからも色んなことが有ったが、何だかんだでお店に到着することが出来た。
まず俺達が最初に向かったのが、近所に有る「しままち」だ。
ここなら女性用の下着から服から一通り揃うからな。さっそく入ることにする。
ガー!
自動扉が開くと、アリシアは飛び上がって驚いた。
「えっ? えっ? 何で扉が? ここはダンジョンでトラップ!?」
「いや、違うぞ。これは自動ドアってやつだ。何の問題も無いからさっさと入るぞ。」
とりあえずツッコんでおいた。
「そ、そうなんですね。」
中に入る俺に続き、アリシアもおずおずと店内へと入ってきた。
「うわぁ~!」
店内にあふれる様に置いてある色取り取りの服や、その数に驚いているみたいだ。
さて、俺じゃ女性物の服とか下着とかは全く分からないし、一緒に選ぶなんてのは地雷にしかならない。
なので、店員に丸投げしようと思う。
「すいませ~ん。」
とりあえず目に付いた女性の店員に声を掛けることにした。
「はい。何か御用でしょうか?」
「この子の服、普段着が2着と部屋着が1着、後は下着とかの必要な物を数枚選んで欲しいですが、お願いしても構わないでしょうか?」
「かしこまりました。ご予算はいかほどでしょうか?」
「そうだなぁ…普通だと、どのくらいするものなの?」
「そうですね、安いものでと言うのでしたら、上下セットで一式4千円前後で揃えることも出来ますが、それなりの物で揃えるのでしたら1万前後は見て頂きたいですね。」
「まぁ、そのくらいなら良いか。
それじゃ、本人の希望を聞きながらでお願いしますね。」
「では、案内します。」
「ほら、アリシアは、あの人が一緒に服を選んでくれるから色々聞いて決めてくれ。」
「わ、わかりました!」
アリシアは店員について歩いていく…と思ったら振り返り聞いてきた。
「あれ? ヨシカズさんは行かないんですか?」
服だけならまだしも、女性用の下着を一緒に選ぶなんて何て拷問だよ。
「いや、アリシアがどんな服を選ぶのかを楽しみにして待ってるよ。」
「わ、わかりました~」
俺がそんなことを言ったので、アリシアは嬉しそうにしながら服選びに向かって行った。
「さて、しばし待つとするか。」
俺はスマホを取り出し時間を潰すのだった。