今後の話
「ふぅ~、お腹いっぱいです♪」
全部食べ終えたアリシアは満足そうな顔をしている。
「よし、これからの話をするぞ。」
俺がそう言うと、アリシアはビクリと体を震わせた。
「どうした。」
「先ほどは空腹の余り頭が回らず考えが足らなかったため、失礼なことをしてしまいました。」
「は? えっと、ま、まぁ、気にしてないぞ。」
「それにあのような沢山の魔道具をお持ちであり、かつ貴重な肉を私のために気軽に出して頂けるとは、貴方様はお貴族様だったんですね。」
そう言ってアリシアは地面に頭を付けて平伏している。
「は?」
俺は突然のアリシアの態度に戸惑っていると、
「失礼を働いた私は殺されてしまうのでしょうか? それとも何処かに売られてしまうのでしょうか?
先ほどの料理は貴族様の最後のお情けだったんですね。」
「はい?」
何か話が変な方向に行ってるような気がする…
「貧相な私で宜しければ何でもしますから、売られるのは仕方ないとしても、どうか殺すのだけは勘弁して下さい! お願いします!!」
アリシアが必死に頭を下げて頼み込んできた。
「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ! まず俺は貴族では無い!
それに、アリシアを殺すこともしないし、もちろん売ったりもしないから安心してくれ!」
俺がそう言うと、アリシアは顔を上げた。
「本当?」
アリシアが涙目でそう言ってきたので、
「本当だって! だからね? もっと普通にしてくれ。」
「よ、良かった~」
どうやら納得してくれたらしく、アリシアは落ち着いたみたいだった。
「理解してくれたところで、さっきの話の続きをしたいんだけど、構わないか?」
「う、うん。」
「俺が思うには、どうやらアリシアは、アリシアが居た世界とは別の世界…俺が住んでいるこの地球へと召喚してしまったみたいなんだ。」
「えっと、別の世界? そ、そうなんですか?」
今一つピンと来ない感じの顔をしているな。
「周りを見てもらうと分かると思うが、見たことが無い物ばかりだろ? それに外を見ればもっとハッキリすると思うんだ。」
俺がカーテンを開けると、アリシアは目を輝かせた。
「わ、わぁ~! キラキラしていてとっても綺麗~!!」
俺が住んでいるのは東京の外れの方だが、それでもネオンの光やらが色鮮やかに飾られていた。
俺にとっては見慣れた風景だが、アリシアにとっては物珍しい宝石箱みたいな感じだったみたいだ。
「これで分かっただろ?」
「う、うん。」
「それで、すまんが俺はアリシアを元の世界に送り返す手段が分からないんだ。
だから暫くアリシアは、此処に住んで生活して貰うつもりだ。もちろん面倒も見るつもりだ。
帰る手段が見つかれば良し、見つからなくてもある程度の生活の基盤が出来るようになるまでは責任を持って対応するつもりだ。」
「そ、そんな悪いです。私はもともと家無しですから放り出されたとしても文句は言えませんし、それにいざとなっても何とかなりますよ!」
「あのな、向こうの世界でなら何とかなるのかもしれないが、アリシアみたいな何も知らない可愛い子が東京の街中に放り出されてみろ、あっという間に騙されて風俗みたいな所に売られるのがオチだぞ。」
「か、可愛い…」
アリシアが頬を染めている。いや、反応するのはそこじゃ無いだろうが。
「可愛いのは認めるが、言いたいのはそこじゃない。」
「えっと、風俗…でしたっけ? それって何ですか?」
「風俗は、女性が体を売ってお金を稼ぐ場所だ。」
「ああ、夜のお店のことですね。だったら大丈夫ですよ~
貧相でのっぺりとした顔の私なんかに興味を持つ人なんか居ませんから。」
「あのな~、向こうでのアリシアの美貌がどうなのかは知らんが、この国でのアリシアはまぎれも無く美少女だ。沢山の人が興味持つぞ?」
「そうなんですか?」
「そうだ。だいたい俺の顔だってのっぺりとしているだろうが。」
「…言われてみればそうですね。でも私は、そんなあなたの顔は親しみやすくて好きですよ♪」
真っすぐにそんなことを言われるとは…不意打ちとは言え顔が熱くなってくる!
そんな俺の様子を見て、アリシアは嬉しそうな顔をした。
「そう言うことなら、しばらくお世話になります。」
「お、おう。」
こうしてアリシアとの奇妙な共同生活することが決まったのだった。
これからは色々と教えて行かないとな。