美少女
「あの…終わりました。」
「んがっ!」
アリシアの声で目が覚めた。思わず変な声を出してしまった。
どうやら俺は、考え事をしている内に、ソファーで眠ってしまっていたらしい。
それじゃ、今後の話でもするかとアリシアを見た俺は…
「なっ…」
そこに居たのは栗色の髪でふわふわのボブカット、同じく栗色の瞳。白くツルツルな感じの綺麗な肌で、少し幼い顔立ちをしているが、物凄い美少女が立っていた。
「誰だお前は!」
「えぇ!? アリシアですよ! さっき言いましたよね?」
思わずツッコミを入れてしまったが、言われてみれば何となく面影が有る様な…
とは言っても、さっきまでは全身真っ黒だったし、髪もベッタリとしていて黒ずんだ茶色だったし、見た目からして全然違っていた。
それに先ほどとは違って良い匂いがする…俺と同じ石鹸やシャンプーを使っているハズなんだけど、何でこんなにも違う匂いがするんだ!?
「あ、あの、その、えっと、いや…」
「どうしたんですか? さっきと全然態度が違うじゃ無いですか。」
こんな美少女と対面して平気に会話を出来るほどのリア充じゃないんだよ! 察してくれよ!
俺がどうしたら良いのか分からず、焦っていると。
ぐうぅ~!!
アリシアのお腹の音が鳴った。
「あ、あの、これはですね。その…あ、アレですよ。」
アリシアは貌を真っ赤にしてアタフタしながら言い訳をしている。
それを見て俺は冷静なることが出来た。
「腹減ったのか?」
そう言えば森に食料を探しに行ってゴブリンに襲われたんだっけな。
「…はい。」
アリシアは、言い訳しても仕方ないと観念したらしく、正直に言ってきた。
「何か食う物でも作ってくるから待っていろ。」
俺はキッチンへ向かい、冷蔵庫を開けて思案する。
「買い物行ってないから大した材料が無いんだよな…
今有るのはピーマンとニンジン、後はもやしと豚バラか…作るのも簡単だし、肉野菜炒めで良いか。」
トントントントン…
野菜を適当な大きさに切って、フライパンを火にかけ油を入れる。
温まったフライパンに肉を投入する。
ジュワアアァァ~~~!!
肉の色が変わった所で野菜も投入。
程よく火が通った後は、焼き肉のたれでの簡単味付けをして完成だ。
お皿に移し、後はご飯をよそって持って行く。
コトン。
テーブルに置くと、アリシアは目を真ん丸にして驚いていた。
「え? 見たことのない野菜…それにお肉? それに物凄く良い匂いがする…」
「箸は使えるか?」
「箸?」
「こんなのだ。」
俺は箸を持って見せてやると、アリシアは首を振った。
「ならフォークだな。」
フォークを取り出し、アリシアの前に置いてあげた。
だけど、アリシアは食べようとはせずに、ジッと肉野菜炒めをガン見していた。微妙によだれが出ている…
「どうした、食べないのか?」
俺がそう言うと、アリシアはビックリした。
「え? これ私が食べて良いの?」
「そのつもりで作ったんだが、要らないのか?」
「た、食べます!!」
アリシアはそう言うと、フォークを持って食べ始めた。
「うぅ~! おいひい、おいひいよぉ~!!」
そんなことを言いながら口いっぱいに入れて涙を流しながら食べ始めた。
安い材料に焼き肉のたれを使っただけの単純料理だぞ? そこまでの物じゃないだろうに…
でも、うれしそうに美味しく食べているアリシアを見ていたら、そんな気持ちは吹っ飛んでしまった。まあいいか…