おみやげ
「ただいま。」
「ヨシカズさん、お帰りなさい。」
アリシアがそう言って玄関まで迎えに来てくれた。
やっぱりこうして誰かが居る家に帰ってくるのって良いな。
「ただいま。」と言って何も返事が返ってこない寂しさと言ったらもうね。
「ほれ、お土産だ。」
俺は白い箱をアリシアに渡した。
「何ですか? これ。」
「食べ物だよ、夕食を食べた後に一緒に食べよう。」
「うわぁ~、楽しみです♪」
「中身は開けてからの楽しみだ。」
「は~い。」
部屋に戻り着替えた後は夕食を作ることにする。
今日の晩御飯は餃子だ。手作りではなく、市販の冷凍餃子だ。
流石に平日に手作りの餃子は面倒くさい。
いや、作れない訳じゃないが、時間が掛かり過ぎるから却下だ。
炊飯ジャーの中身を確認する。多めに焚いていたので夜に食べる分は有りそうだ。
ならスープを作ることにする。
「ヨシカズさん、私は何をすれば良いですか?」
「そうだなぁ、今日は野菜を切ってもらおうか。」
「わかりました~」
作るスープは野菜とソーセージ、しいたけをコンソメと塩コショウで味付けした物を作る予定だ。
まずはニンジンをピーラーで皮を剥き、アリシアへと渡す。
「えっと、どうすれば良いですか?」
「適当に一口大に切ってくれれば良いよ。」
「わ、分かりました。」
「俺はタマネギの皮を剥いてるな。」
俺はタマネギを手に取り、皮を剥こうと…
ダン!!
大きな音にビックリした。
その音に視線を向けるとアリシアが出した音だった。
ニンジンを切るのに何でそんな音が出るんだ?
すると、アリシアは包丁を両手で持って高く振り上げ…
「待て待て待て、何をするつもりだ!?」
「何って野菜を切るんですよ。」
「いや、包丁をそんなに振り上げたら危ないし、切るのも切れないだろ?
…もしかして包丁の使い方を知らない?」
俺がそう言うと、アリシアはコクンと頷いた。
「じゃあ教えるよ、野菜をまな板の上に置いたら、手を添えるんだ。手の形は猫の手だぞ。」
「猫の手?」
「あー、えっとこんな感じだ。」
指の第1、第2関節を曲げて形を作って見せた。
「でだ、こうして野菜を抑えて、包丁で切るんだ。
高さは必要ない。押し出すか引く感じに切れば切れるから。」
俺は3回ほど切って見せた。
「慌てなくて良いから、ゆっくり切ってみな。」
「わ、わかりました。」
少しぎこちない動きだったが、俺が言ったことを守ってゆっくりと野菜を切って行く。
「いいぞ、その調子だ。」
これなら大丈夫そうだな。
俺はタマネギの皮むきをすることにした。
「痛っ!」
その時アリシアの声が聞えた。
「どうした!」
「い、いえ、何でも無いです!」
左手を後ろに隠したので、腕を掴んで引っ張った。
「あっ、だ、駄目です!!」
だけどアリシアの力では俺の力に敵わなかったため、アッサリと俺の前に手を出された。
アリシアの手に薄っすらと傷が有って、少し血が滲んでいた。
「ふぅ、大した傷じゃ無くて良かった。ちょっと待ってろ。」
俺は救急箱から絆創膏を取り出して、アリシアの手当てをする。
「これで良し。」
「ありがとうございます。」
「アリシア、ケガをしたときは遠慮なんかするんじゃないぞ?」
「あ、はい。」
その後はタマネギ、キャベツ、ソーセージ、しいたけと切って貰った。
最期の方にはそれなりに切れるようになったみたいだ。
ホント上達が早いよ。
鍋に水とコンソメを入れ、切った材料を投入し火にかける。
沸騰した所で灰汁を取り、少し煮込む。
十分に火が通った所で塩コショウで味付けをして完成だ。
次に餃子を焼くのだが、これは俺が焼くことにした。
大したコツも無く、作り方の通りに焼くだけだしな。
「よし、完成だ。」




