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森へ

少女はシャーペンを買いに来ました。


少女フィユはクラスメイトの転校が決まったので、文房具を買いにデパートに来ていました。

シャーペンをあげるのは決めましたが、可愛いものが多くてどれがいいか少し悩みます。注射器の形のものとキラキラの液体が入っているものを手に取り考えたあと、キラキラの方を持ってレジの列に並びました。

レジに並んでいると、どこからか黒兎に呼ばれたような気がしました。そしてフィユが1回瞬きすると目の前はデパートのレジの列ではなく、たくさんの田んぼが広がっていました。

フィユはまず、自分の右手を見てシャーペンを持ってないことを確認し安心しました。

お会計をせずにシャーペンを持ったまま田んぼに居ては犯罪だからです。


「おはよう」


フィユの隣で黒兎が言いました。


「今買い物中だったの、困るわ」


フィユが答えます。


「今日からここで暮らそう」


黒兎が腕をぱたぱた振りながら言いました。


「家が無いから無理よ」


フィユは辺り一面を見回しましたが、田んぼと湖と森しか見えません。ここでは暮らせないと思い、黒兎の誘いを断りました。


黒兎は残念そうに「わかった」と言って森へ行ってしまいました。そして森から少しずつ木の板を持ってフィユのところに戻ってきます。何回も何回も。木の板はそれぞれ凹凸があり、フィユはそれを見て工作ができそうだと思いました。

木の板がだいぶ増えてから黒兎はフィユに「組み立てるよ」と言いました。

組み立てると、横に長い家が湖の真ん中に完成です。フィユは「ニワトリ小屋みたい」と黒兎に嬉しそうに言いました。

黒兎は「完成だよ」と腕をぱたぱた振りながら言いました。黒兎の腕は木をたくさん切ったので擦り傷でいっぱいです。


「怪我をしてるわ」


「ほんとだ、草を食べよう」


黒兎は草をむしってむしゃむしゃ頬張ります。


「食べても治らないのよ、薬を塗るの」


フィユは草を石で潰してそれを黒兎の腕にぺたぺた貼り付けます。昔、どこかで誰かにもこうやって草をすり潰して塗り込んだような気がしたからです。

そして、貼り付け終わってから、その時誰かに雑草を傷口に塗り込んだら悪化したことを思い出して急いでぺりぺりはがしました。


「取るの?」


「ごめんなさい、雑草じゃダメなの」


「わかった、森へ行こう」


「貴方の森へは行ったことないわ」


「一緒に行くよ」


黒兎はフィユを森へ連れて行きました。

湖や田んぼは朝日を浴びたような眩しさだったのに森は夜のように真っ暗です。

フィユは黒兎の後ろに付いて森を進みます。


たくさんの小さなハチが巣から出てきてフィユたちにぶつかってきました。針がないから刺されることはなかったけれど、小さくて口を開けたら口の中に入ってきそうでフィユは口を固く閉じました。ハチたちが現れなくなってから、顔に付いた小さなハチたちを手で落として、黒兎に文句を言います。


「ハチは危ないわ」


「他にハチを置くスペースがないから、森のステージ1とステージ2はハチまみれなんだ」


ステージ1はたぶん先ほど過ぎた場所です。2があるということはまたハチの大群に会わなくちゃいけないのかとフィユは嫌になりました。


ステージ2のハチの大群を乗り越えて、ステージ3に着きました。

ステージ3には薬草やハチミツや綺麗な花がたくさんあります。コンピュータもありました。黒兎はフィユに「そのコンピュータで目の色が変えれるよ」と言い、フィユは目の色を変えて遊びました。

薬草で黒兎の腕の治療も完了です。


帰ろうとすると森は大きな灰色のビルになりました。

ビルは危険なので黒兎はフィユを抱えて急いでビルから出ようとします。

ビルの中は迷路のように複雑で扉もたくさんあります。

階段から現れた青い着物に身を包んだ男が刀を抜いてフィユと黒兎を追いかけます。


「あの人を焼き殺すわ」


黒兎に抱えられながらフィユが言いました。


「火は危ないから水にしなきゃだめだよ」


フィユを抱えたまま黒兎が言いました。


フィユはわかったと言い、黒兎に水の部屋に向かうように指示しました。

黒兎がフィユを抱えたまま階段を駆け上がって水の部屋のドアを開けると、中から水がたくさん流れてきて、そのままフィユも流されました。


小さな木の船の上でフィユは意識を取り戻しました。黒兎は居ません。

辺り一面は海が広がって居て、その上にたくさんの船があり、それぞれに人が乗って居て生活しています。

フィユの船に和菓子屋さんの船が近づいてきました。和菓子屋のおばさんがフィユに話しかけます。


「商品はこちらです」


「おまんじゅうですね」


「1つサービスします」


「ありがとうございます」


フィユはまんじゅうが嫌いですが、おばさんが目の前で手作りしてくれた上に笑顔でサービスしてくれたので断り辛くお金を払いました。

頑張って少しづつ嫌いなまんじゅうを食べながら、船を漕いで駅へ向かいました。



「森へ」おわり

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