ドーナツ
少女はドーナツに惹かれました。
少女フィユは休日なので少し遠くの駅に来ました。
新しくできたばかりのショッピングモールやゲームセンターやおもちゃ屋さんなどがあります。
フィユは電車を降りて改札を出てショッピングモールに向かおうとして、途中の広告に目を奪われました。チョコレートドーナツに紫の粉や青の粉がかかっていていて、大きな文字で期間限定と書かれています。フィユはさっそくドーナツ屋さんに入り、中の行列を見て諦めました。ドーナツは大好物ですが、こんなに並んでいてはショッピングができません。ドーナツ屋さんを出てショッピングモールに向かいます。
ショッピングモールはできたてほやほやなので新しいお店がたくさんあります。カレー屋さんにスープ屋さんにピザ屋さん、フィユはどこでごはんを食べようかなあときょろきょろします。そして、人混みの中に見知った人を見つけました。
「黒兎!まって!」
人混みを潜り抜けフィユが駆け寄ります。
「どうしたの?」
黒兎は首を傾げて聞き返します。
「一緒にごはんたべましょう!」
嬉しそうにフィユが誘いました。
「うん、いいよ」
黒兎は断りませんでした。
二人で仲良く朝ごはんを食べました。フィユは黒兎と食べれたのでご機嫌です。今日この駅を選んだ自分の強運を褒めてます。この後も一緒に遊びましょうと誘い黒兎もいいよと言いました。
黒兎はフィユをおもちゃ屋さんに連れて行きました。おもちゃ屋さんではおもちゃが人気ランキング順に並べられていて、1位と2位は売り切れでした。黒兎は棚からひょいと3位のおもちゃを取り出してフィユに見せました。
「3位のこのゲームにする?」
「だめよ、私たち、それ持ってるもの」
「ほんとだ」
「同じものは要らない」
「そうだね、こっちは?楽しいよ!」
「楽しいけど、持ってるでしょ」
「ほんとだ」
フィユは自分で探すことにしました。
黒兎が薦めてくれたゲームはたしかにフィユが大好きなものですが、数年前に発売されていてもう何回も遊びつくしたものです。フィユは新発売コーナーを漁って、今年に発売したばかりの新しいおもちゃを買っておもちゃ屋さんを出ました。そして隣にあるゲームセンターで日が暮れるまで遊びました。
「暗くなったから帰ろうか」
黒兎が満足気に言いました。
「嫌!まだ大丈夫だもの」
フィユが強気に反論します。
しかし黒兎がうーんと悩む素振りを見せたので、フィユは慌てて言葉を足しました。
「で、でも、また今度会えるなら今日はばいばいでも諦めるわ。いつなら会えるの?」
「ごめんね、わからない」
「そう」
「ごめんね、今日はもう少し遊ぼう」
フィユは拗ねたかったけど、黒兎と遊べるのは嬉しいので我慢することにしました。文句を言って黒兎に逃げられたら悲しいからです。
二人はショッピングモールの一番屋上に行きました。一番屋上にはエレベーターがあります。黒兎は追加料金を払ってフィユとエレベーターに乗りました。エレベーターはガラスで出来ていて外がクリアに見えます。ものすごい勢いで上に上がるエレベーターにフィユは大喜びをしました。エレベーターのどこを見ても綺麗な夜空にキラキラ光る星でいっぱいです。
「すごくきれい」
「これは映像だからね」
感動するフィユに黒兎が説明をしました。このエレベーターは全面に綺麗な映像が映し出され、上に上がるまでを楽しませてくれるのです。
エレベーターが止まり、扉が開くとそこは空港でした。空港には何でも全てが揃ってます。フィユは黒兎と空港で美味しいディナーを食べたり、可愛いお洋服をたくさん買ったりサーカスや映画を見たりして満喫しました。
「ずっとここにいる?」
大きなお菓子の家を食べながら黒兎が聞きました。
「ずっとは無理ね、ママが心配するから」
お菓子をもぐもぐしながらフィユは答えました。
黒兎のことは大事ですがママこともフィユは大事です。ママを悲しませたり心配させたりしたくありません。黒兎はそうだねと言いました。
お菓子の家も空港も消えてフィユはエレベーターの中にいました。隣にいる黒兎は楽しい映像だったねと言って居なくなってしまいました。この屋上のエレベーターはアトラクションで映像を脳に見せて、それを現実だと錯覚させ楽しませるためのものです。
フィユは黒兎が居なくなってしまったので、ドーナツ屋さんでドーナツを買って帰りの電車に乗りました。ずっと映像の中で黒兎と居る事を選べば良かったのかどうかフィユにはわかりませんでした。
「ドーナツ」おわり




