今日
少女はケーキを食べました。
少女フィユは今日がテストの日です。
教室で、先生がテスト用紙を1枚1枚生徒たちに手渡しします。フィユは渡されたテスト用紙を見て、どれならできるか悩みます。テスト用紙には上の方に大きめの文字で「この中から選んで作れ」と書かれていて、その下に色んな絵が描かれていました。真ん中に描かれているおせち料理一式やフランス料理コース一式なんて、フィユは全く作り方がわからないものです。クラスメイトたちはみんな作るものを決めたようで行動を始め出し、それが焦燥感を煽ります。
半分くらいの時間が過ぎて、テストの担当である女性の先生はフィユに近づいて金色の小さな紙をこっそり渡してきました。フィユはこの先生が苦手ですが、先生側はフィユを依怙贔屓しているので何かしらヒントになるはずだと考えます。テスト用紙に描かれているものの中で、金色の物は金で作られた小さな箱です。でも金は限られた分しか学校にないのでこれを選ぶ生徒はいません。
そこまで考えてからフィユは気が付きました。これは先生が用意した「私専用のクリアできる問題」なのだと。他の人にクリアできない課題をわざわざ描いてあるということは自分にクリアさせるためで、クリアできる方法があるはずです。渡された金色の紙は金です。学校にある金とこの金を足せば、ちょうどきっかり材料分が揃います。フィユは船に乗って学校にある金を集めてから、教室に戻り急いで金の小箱を作り始めました。
金の板が完成して、あとは小箱の形に組み立てるだけです。そこで終了のチャイムが大きく鳴り響きました。金の小箱の完成には間に合いません。フィユは落ち込みました。先生はがっかりしてました。
でも、後悔してもテストをやり直すことは無理だし、フィユはまっすぐ家に帰ることにしました。今日は寄り道をしない日だと決めて美味しそうなケーキ屋さんも可愛い花屋さんもお洒落なデパートも視界に入れないようにすたすた歩きます。目に入ったら絶対に入りたくなってしまうからです。
そして、可愛らしい声で名前を呼ばれて足を止めました。フィユのことを呼びながら駆け寄ってきたのは姉のエティで、その整った顔は嬉しいという表現を惜しみなく伝えてくるようなご機嫌な笑顔です。
「今日はテストだったでしょ?どうだったの?」
「不合格、だったわ」
「そうなの。私の時はね、ネズミを多く捕まえた者から合格だったのよ。だから私一番だったの。そうね、それより、私プールに行きたいの。行きましょう。」
「水は好きだから構わないけど…」
貴女は私が合格しても同じ台詞を言うんでしょという言葉は飲み込んで、フィユはしぶしぶ承諾しました。エティのことは少し苦手ですがプールは大好きです。エティはそんなフィユを気にした風もなく、「じゃあ決まりね」とフィユの手を取ってプールに向かいました。
プールは空が夜に設定されているのか、まだ夕方なのに真夜中の星空が上できらきらしています。水中ではネオンの光がピンクや水色を放っていて、ナイトプールみたいだとフィユは感動しました。深海魚がたくさんいる市民プールも好きだし未知の海洋生物がたくさんいる楽園の近くの海も好きですが、何もいない水の中というのも新鮮で安全で楽しいです。水をばしゃばしゃして遊ぶフィユにエティは浮輪に浮かびながらお城ことを話します。
「右大臣がね、酷いのよ。私に好かれてると勘違いしてくるの。この間、話があるって言うから聞こうとしたら私との関係は秘密にできますかって言われたからびっくりしたわ。ありえないじゃない。なんで女王の私があんなぼろぼろのお爺さんとお付き合いしなくちゃいけないのかしら。80歳くらい離れてるのよ。」
「首をはねないの?」
「もう首をはねたわ、私の国にいらないもの」
エティは昨日処刑した99人の男の話を続けます。
フィユは自分が殺されないならいいかと思い、水で遊びながら適当に相槌を打ちます。
「それでね、今日の処刑する国民を探しましょう」
「何もしてない人を殺すの?」
「何もしてないからといってそれが安全というわけじゃないの。今まで何もしてないからってこれから私に何かするかもしれないでしょ。私死にたくないの。」
だからこれを使うの、と言いエティはプールサイドに置いたポーチからスマホを取り出しました。そのまま慣れた手つきで操作をします。そしてフィユに撮影してとスマホを手渡しました。フィユはスマホでエティのことを映し出しました。
「いまプールあそびにきてまーす!彼氏いなくてさみしいな…」
フィユはスマホ越しに演技しはじめたエティ撮りながら、何してるのこの人と恥ずかしくなりました。撮る方が照れます。
スマホにはその動画を見ている人たちからコメントがたくさんきました。「めちゃかわいいね」「ほんとに彼氏いないの?」「最高」などなど。エティはそれを見て処刑するべき男がたくさん見つかったとご機嫌で続きをはじめます。
「誰か、私と一緒に遊んでくれるお兄さんいませ」
「いけません!」
エティが言い終わる前に水中から側近が飛び出してきました。動画には「男いたのかよ」「彼氏持ちじゃん」「最低」などなどコメントが流れました。フィユは動画撮影を止めました。
「女王陛下がそのようなことをしてはなりません」
側近がエティに怒ります。
「うるさいわ。大事な処刑活動よ」
エティも側近に怒ります。
側近はエティに女王陛下としての威厳や嗜みを持つようにと、エティは側近にお前の首をはねてもいいのよと、一歩も譲りません。フィユは夕御飯の時間なのでお腹がすいたので帰りたくなりました。
「お腹が空いたから帰る」
言い争ってるエティに一応聞こえるように言って帰る支度をしはじめます。
「私もお腹空いたわ。ケーキが食べたい気分ね」
だから一緒に食べに行きましょとエティが後に続きます。側近はエティにお待ちくださいケーキならお城にありますと言いましたがエティは気にせず、側近を置いて、フィユをケーキ屋さんに連れて行きました。
ケーキ屋さんで、フィユはフラペチーノのムースケーキを、エティはいちごのショートケーキを頼みした。店長がケーキを運んできて「側近様のお誕生日おめでとうございます」とフィユたちに言いました。今日は側近の誕生日です。フィユとエティはプールに置いてきた側近のための誕生日の歌を歌ってからケーキを食べました。
「今日」おわり




